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Zoomに慣れよう Vol.2 / グループワークで地味に困ること


こんにちは。園です。

このマガジンでは、「中高生がオンラインでグループワークをするには?」という課題にむけたプログラム案を解説します。スライドも公開いたしますのでぜひご活用ください。

このマガジンの内容
0. 全体についての説明
1. Zoomに慣れよう Vol.1 チャット機能でクイズゲーム
2. Zoomに慣れよう Vol.2 ブレイクアウトルームでじゃんけん&しりとり
3. Zoomに慣れよう Vol.3 ホワイトボードでドローイング、連想作文
4. Zoomで雑談 ギャラリービューで雑談 
5. Zoomで対話 スポットライトビデオでトーキングスティック
6. Zoomでグループワーク 

今回は2.の「Zoomに慣れよう Vol.2 ブレイクアウトルームでじゃんけん&しりとり」のスライドの解説をしていきます。

プログラムのスライドと解説

前回のプログラムではZoom上でのクイズゲームを通してチャット機能の活用ができるようになる、という内容でした。Zoom上での生徒/参加者からの反応が活発になると、講師も授業やワークショップが進行しやすくなることについても触れました。

今回のプログラムでは、Zoom上で「じゃんけん」や「しりとり」という遊びを通して「ブレイクアウトルームの活用」を学んでもらうことが目的です。また、それと同時にブレイクアウトセッション内でのコミュニケーションの「やりづらさ」とその原因について、参加者たちにも気づいてもらうということをもう一つの目的としています。

この「やりづらさ」への気づきや適応も、Zoom上でのグループワークに向けての大切なステップになると考えています。

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 *「ブレイクアウトルーム」とはオンライン授業の参加者を自動または手動でグループ分けできる機能です。ブレイクアウトルームの詳しい説明はこちらを確認ください。

今回のスライドはこちらになります。


このプログラムの構成についてお話させていただきます。
流れは下記のようになっています。

前回 / vol.1 の振り返り

ブレイクアウトルームの説明

ブレイクアウトルームでグループに分かれて「じゃんけん」をする

ブレイクアウトルームから戻ってきて、「じゃんけん」を振り返る

ブレイクアウトルームで再度、同じグループに分かれて「しりとり」をする

ブレイクアウトルームから戻ってきて、「しりとり」を振り返る

全体の振り返りをチャットでシェアする

ブレイクアウトルームについて知り、グループに分かれての「じゃんけん」や「しりとり」のような素朴な遊びの活動を通してブレイクアウトルームに慣れていきます。「じゃんけん」と「しりとり」は同じグループで行うことが好ましいので、ブレイクアウトルームのグルーピングは同じメンバーになるよう設定するとスムーズに進行できます。

そして、Zoom上での「じゃんけん」、「しりとり」を振り返ってもらうことで、Zoomでのグループワークの「やりづらさ」に気づいてもらうという構成になっています。

「オンラインじゃんけん」ではズレに気づく

人間の視覚系においては網膜に刺激が与えられてから知覚が成立するまでに約100ミリ秒(0.1秒)しか遅れがなく、聴覚刺激の処理はそれよりもさらに数十ミリ秒速くなると言われています。

Zoom等のビデオ会議でのコミュニケーションでは、1秒前後のズレが発生することから、リアルでの会話のテンポよりやや遅く感じてしまったり、ズレが気になってしまったりします。僕も誰かと話すタイミングが重複してしまったり、相手の相づちの間が悪く思えてしまったりと、複数名で話すときはストレスを感じることもあります。

前述のとおり、ワークとして行う「オンラインじゃんけん」はブレイクアウトルームに慣れるだけでなく、伝送遅延について体験し、認識してもらうことも目的の1つにしています。

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「最初はグー! じゃん、けん、ぽん!」という掛け声でじゃんけんをしてもらうのもそのためです。タイミングが合わないなかで「最初はグー」のじゃんけんをしてもらうことで、よりタイミングの合わなさを体感することになります。

すこし意地悪なような気もしますが、なかなかタイミングの合わないじゃんけんは初対面の参加者/生徒同士のアイスブレイクにもなります

(タイミングが合わないことで、「じゃーーーーん、けーーーーん」と、とても「ゆっくり」なじゃんけんになるケースが多いです。自然に笑いが生まれます)

もし時間に余裕がある場合は、じゃんけんの振り返りでズレ/遅延についてシェアしたあと「Zoom上のズレ/遅延を回避してじゃんけんをする方法」をグループで考えても面白いですね。

過去に「Zoom上でのじゃんけんのリデザイン」について生徒と一緒に考えたときは、「チャットでg / t / pのいずれか1文字を同時に打ち込む」、「ビデオオフにし、先にグーチョキパーを出しておき、かけ声と同時にビデオオンにする」「じゃんけんはやめて、あみだくじにする」などの案が出ました。こういうの面白いですよね。

「オンラインしりとり」で位置がないことに気づく

Zoomでは特定の誰かのほうを向けませんし、視線も合わせられません。リアルなグループワークでは、複数の参加者に左右や前後などの位置関係が生じます。(当たり前すぎて文章にするとなんだか滑稽ですね)

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グループワークのみならず、我々のリアルでのコミュニケーションは「位置関係」に大きく依存しています。誰かから「時計回り」で順番を決めたり、6人1組が3人2組に分かれるときも「距離が近い人」とグループになったりしますね。

さらに「誰かのほうを向く」、「視線を合わせる」というごくごく当たり前のコミュニケーションもリアルの位置関係に依存しています。たとえば我々は「特定の誰かのほうを向いて話す」だけで、話しかけている対象を明確にしています。とくに日本語においては主語や目的語が省略されがちなので、複数名で話す際は顔の向きが大きな意味を持つように思います。

自分が話すときだけでなく、聞く/聴くときも同様です。話者のほうに顔を向けることで、話を聞/聴いていることを話者に伝えています。話者は相手が自分のほうを向いてくれていることで、「自分の話を聞/聴いてくれている」と認識します。

顔の向きだけなく、話している人と視線を合わせて微かな表情を送ることで「つぎ、自分が話していい?」➝「まだ話したいことあるから、あと少し待って!」のようなやりとりもアイ・コンタクトと表情ですることがありますね。

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こうした顔の向く方向や視線を合わせることを成立させる「位置関係」がZoom上にはないことから、グループで話すときに「誰が誰に話しているのか?」が判別しにくく、コミュニケーションのやりづらさを生んでいます。

「オンラインしりとり」では、じゃんけんで勝った生徒/参加者から「しりとり」の「り」でスタートしてもらいます。リアルであれば自然に時計回りの順番になって事なきをえます。このプログラムではZoomなので、答える順番が分からず参加者/生徒たちは「あれ?」となります。ここでZoom上では位置関係に依存せずに順番を決めなければならないことに気がつきます。そこでしりとりを中断し、位置関係に依存しない順番を決めることになります。

振り返りでは、リアルとは別の方法で順番決めをすることになったことだけでなく、前述のような位置関係がないことでコミュニケーションにどんな違いが生じるのかについてのスライドも用意してあります。

Zoomに慣れよう vol.2_公開用

Zoomに慣れよう vol.2_公開用 (1)

Zoomに慣れよう vol.2_公開用 (2)

Zoomに慣れよう vol.2_公開用 (3)

また、「オンラインじゃんけん」と同様、可能であれば振り返りのなかで「位置関係がないことはコミュニケーションをどう変えるか」や「その変化にどうやって対応/適応するのか?」をテーマにして生徒/参加者が自由に考える時間をとってみてください。

Zoom上のグループワークでも、それぞれの位置情報をGoogle マップ上で共有し、北極点に一番近い人から時計回りや、日の出の時刻が早かった順と決めても面白いかもしれません。

リアルとネットの違いに適応することで得られる気づき

中高生のグループワークやワークショップでは、それなりに関係構築できているメンバーでもテンポが合わずに話が進まなかったり、シェアする順番がなかなか決まらなかったりと、ディスカッションがなかなか続かずお見合い状態が続いたりすることが多いです。

初対面に近い状態の中高生においてはなおのこと。オンラインとなればなおさらです。

前々回の記事でも書かせていただきましたが、この一連のプログラムはZoomの活用ができるようになることに加えて、関係構築が十分にされていない状態から出発してグループワークができるようになるということを念頭に置いています。

改めて整理すると、今回のプログラムには3つのレイヤーがあります。

1. Zoomのブレイクアウトルーム機能に慣れていく
2.「じゃんけん」や「しりとり」の遊びでアイスブレイクしていく
3.1と2で生じる「ズレ/遅延」や「位置関係の欠如」を認識し、対応する

『ダイアローグ・イン・ザ・ダーク』というワークショップでは、照度0の暗闇のなかで視覚障害者の方にガイドをしてもらいながら複数名の参加者が対話や協同をします。僕も過去に何度か参加しました。何も見えない暗闇のなかでの対話や協同によって、日常での自分のコミュニケーションや価値観が相対化され、新しい気づきを得ることができました。

リアルとオンラインのコミュニケーションの違いに気づき、適応する。その適応の過程がリアルでのコミュニケーションをメタに問い直すことになり、新しい気づきが得られる。(暗闇ほどではないにせよ)このプログラムがそういう機会になったらいいなと考えています。

一連のスライドについてはそのまま使っていただいても、手を加えていただいてもよいので、必要な方は活用いただけると幸いです。

次回の記事は、ドローイングゲームを通してZoomのホワイトボード機能を学習するというプログラムのスライドを解説します。

読んでいただきありがとうございました。

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