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奥歯が無いままだと・・・その2

 先週に引き続き奥歯を失ったままで起こる影響についてご紹介します。
 突然ですが「サルコペニア」という言葉を聞いたことがありますでしょうか?
 サルコペニアとは、加齢によって生じる筋肉量・筋力の低下のことです。高齢者の体力や運動機能を急激に低下させ、転倒や寝たきりのリスクとして挙げられます。このサルコペニアは筋肉の主成分であるたんぱく質の摂取不足が原因となることがあります。
 筋肉を維持するために摂取したたんぱく質を効率よく使うには野菜に含まれるビタミンやミネラルが欠かせません。ビタミンEは筋肉増強効果、ビタミンB6は筋肉の分解と合成、マグネシウムはたんぱく質の代謝を促進する役割をそれぞれ担っているので野菜不足は筋肉の維持に不利になってしまうのです。
 先週ご紹介したように、奥歯が無いとしっかり噛まないと食べられない肉や野菜が食べにくくなってしまいます。年齢を重ねるにつれてお口の健康具合が全身の健康具合に大きく影響してくることを知っておいてください。
硬い物などが食べにくくなって、痩せた、足が細くなったと喜ばれる方もいらっしゃるかもしれませんが、それはサルコペニアに陥った症状かもしれません。ご自宅でもできる次のサルコペニア度チェックでご自身の状態を確認してみてください。

チェック1:椅子に座った状態から手を使わずに片足で立ち上がることができますか?
チェック2:片足立ちで靴下をはけますか?
チェック3:片足立ちで60秒間立っていられますか?

  また、ふくらはぎの一番太い部分の周囲を右手と左手の親指と人差し指を回してみてください。指がくっついたままだと既にサルコペニアの可能性があります。
 サルコペニアの中でも怖いのはサルコペニア肥満。よく噛めないからと軟らかい食事を選び、糖質偏重の高カロリー低栄養食が続くと肥満して血糖値と体脂肪率が上昇し、糖尿病や動脈硬化の発症および重症化リスクが高まります。たんぱく質やビタミンを不足させないためにもしっかりと噛める歯を取り戻すようにしてください。いずみ中山歯科では、ブリッジ、入れ歯、インプラントなど失った歯を取り戻すための様々な治療を行っています。奥歯を失ったままという方は直ぐにでもスタッフまでお声掛けください。
 いずれかの治療を受け奥歯が入ると自歯と100%同じとは言えないものの、また色々なものが食べられるようになります。バランスよく食べられるようになることでサルコペニア状態から脱却することも可能になります。ただ、ここで注意する点があります。
 奥歯が入ると噛めないというストレスが無くなり食べる喜びがわいてきます。しかし、せっかく奥歯が入っても大して噛まずに飲み込める軟らかい食事は食べやすい食事であることに変わりありません。奥歯が無い間に身に付いたあまり噛まずに飲み込むという食習慣からなかなか抜けられないということがあります。さらに奥歯が入り食が進むようになると過食になりやすく、その結果肥満になりやすくなってしまいます。
 奥歯が無い間に身に付いた食習慣や食の好みは意識をしないとなかなか改善が難しいものです。肉や野菜などをバランスよく食べて、健康的に体重を維持管理するようにして肥満を招かないように意識していく必要があります。改善しないままでいるとメタボリックシンドロームが進行し、脳梗塞や心筋梗塞などの原因となる動脈硬化や糖尿病などの発症リスクが高まったり重症化しやすくなったりしてしまいかねません。
 治療が終わってよく噛めるようになったら、それまでの食習慣を見直すように歯科医院などで食生活習慣の指導を受けて、健康的な食生活習慣を取り戻すようにしていきましょう。
 また、肥満やメタボリックシンドロームになってしまったらダイエットと思って体重を減らそうと思われるかもしれません。ただ、体重と一言で言っても体重には「体脂肪量」と「除脂肪量」の2種類あります。ちなみに除脂肪量とは脂肪以外の筋肉、骨、内臓、水分など体を構成するもので、ダイエットで減らすべきは体脂肪量です。
 ダイエットで行いやすいのは食事制限ですが、食事制限でまず最初に減るのは脂肪ではなく筋肉と水分です。栄養バランスを考えずに低栄養のまま食事制限をすると筋肉や骨が減ってしまい、体力が落ちたり骨折しやすくなったりするほか、食事制限を止めると逆にリバウンドに繋がってしまうこともあります。
 体が自然にカロリーを消費する「基礎代謝量」は筋肉量に比例しています。ダイエットで筋肉が減り脂肪が燃焼しにくくなるとダイエット前より太りやすくなってリバウンドしやすい体になってしまうということです。それは、筋肉が減って燃焼され切らなかったカロリーが脂肪となって減った筋肉の代わりに体に蓄えられていくからです。リバウンドはこのように落ちた筋肉の代わりに脂肪に置き換わるため、体重が同じでも体脂肪率は増えてしまう悪循環に陥ってしまうということです。
 食事制限をするにも、制限するのは過剰なカロリーだけで、後は筋肉や骨を維持すようにたんぱく質とビタミン、ミネラルをバランスよくしっかり摂るようにしましょう。
 さらに、バランスの良い食事の他に適度な運動も大切になります。筋肉が増えて基礎代謝が上がれば自然とカロリーが燃焼され摂取と燃焼の好循環が生まれます。健康な体にはバランスの良い食事と運動が必須になります。
歯を失ってよく噛めないという方は歯科治療で噛む機能を改善してバランスの良い食事と適度な運動を心掛けて全身の健康管理に繋げるように取り組んでいくようにしましょう。

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