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電波戦隊スイハンジャー

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神も仏も小人も天使も異星人も暴れるヒーロー戦隊もの
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2023年5月の記事一覧

電波戦隊スイハンジャー#169 パンドラ3

電波戦隊スイハンジャー#169 パンドラ3

第9章 魔性、イエロー琢磨のツインソウルパンドラ3

「はい、ガブちゃん」

と葉子が黄緑色の紙包みを開いてポリ製のパックに詰められているカラメル色のふくよかな「お土産」を大天使ガブリエルに手渡すと荒っぽく輪ゴムを取り、パックの蓋を開けて匂いを嗅いで…

「Ça y est ! (サ・イ・エ!やったー!)イカ焼きでしぃ!」

とミュラー邸のダイニングキッチンで小躍りし、何もない空間から秋咲きのバラ

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電波戦隊スイハンジャー#170 パンドラ4

電波戦隊スイハンジャー#170 パンドラ4

第9章 魔性、イエロー琢磨のツインソウルパンドラ4

リュ・ワンフェイ宇宙飛行士43才、天体物理学者。

中国系アメリカ人の彼はれっきとしたNASAの民間宇宙飛行士であり、今年8月末に一年半の国際宇宙ステーションでのミッションを終えて無事地上に帰還した。

が…
「ワンフェイ、残念ながら君に次の地球外でのミッションは無いよ」

と上司に呼び出されてにこやかに戦力外通告された。いわゆるリストラである

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電波戦隊スイハンジャー#171 役白専女

電波戦隊スイハンジャー#171 役白専女

第9章 魔性、イエロー琢磨のツインソウル役白専女1

中学教師、七城正嗣は学校の帰りに温泉ドームの浴槽にあごまで浸かり、凝った筋肉が湯の中でほぐれていくのを感じて、

うん日常捨てたな。

と自覚するまで大浴場、サウナ、水風呂、ジェットバス、露天風呂を二巡する。それが週に1~2回の彼のストレス解消のひとときである。

気分よく鼻歌歌いながら軽自動車を運転して、自宅である泰安寺の駐車場に3台の原付を

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電波戦隊スイハンジャー#172 役白専女2

電波戦隊スイハンジャー#172 役白専女2

第9章 魔性、イエロー琢磨のツインソウル役白専女2

苦しみの根源は自分が自分であり続けることで、唯一の後悔といえば、
生まれて来てしまったことだ。

青く輝く水の中に自分は横たわっていて、時折目覚めては水面に輝く光のかたまりをただ見つめていた。

自我も無く、生きるために必要な情報を「学習」するために様々な夢を見させられている内に

…生まれることがとても恐ろしくなったのだ。

やがて、自分は栄

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電波戦隊スイハンジャー#173 役白専女3

電波戦隊スイハンジャー#173 役白専女3

第9章 魔性、イエロー琢磨のツインソウル役白専女3

本当の魔性の正体とは、
電波の箱から綺麗ごとを述べて笑顔を振りまいて人々を心酔させ、お金を剥がしとる華やいだ存在なのかもしれない。

と思いながら紺野蓮太郎は京都北区の上賀茂にある大田神社の拝殿の鈴を鳴らし、柏手を打つ。

蓮兄ちゃまは東京でのチャリティイベントから帰ってからなんか様子がおかしい。

と従妹の四宮蓬莱も隣で一緒に拝みながらちら、

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電波戦隊スイハンジャー#174 役白専女4

電波戦隊スイハンジャー#174 役白専女4

第9章 魔性、イエロー琢磨のツインソウル役白専女4

目の前で差し出されるのは
指環をはめた手、ふくよかな手、痩せて筋張った手、そして、

全てを掴もうとするかのような大きな手。

世界的指揮者クラウス・フォン・ミュラーは50年近いの音楽人生の中で一体何万人もの人々と握手してきただろう?
と振り返る。

名も知れぬ聴衆8割、世に知られた何者かである有名人。芸能人、富豪、王族、政治家等が2割。

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電波戦隊スイハンジャー#175 役白専女5

電波戦隊スイハンジャー#175 役白専女5

第9章 魔性、イエロー琢磨のツインソウル役白専女5

物心ついた頃から、いつも兄ちゃんには敵わなかった。

かけっこも勉強もそして悪戯をして逃げる時にも。
僕だけがワンテンポ遅れて母さんに捕まり、

「こおらあんたたち!もう二度と入れ替わって親を騙せないようにしてやるけんねっ!」とバリカンで髪を刈られたものだ。

そして17才の夏休み。
高千穂の実家の裏山で母さん立ち合いの元、初めて兄ちゃんと本気

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電波戦隊スイハンジャー#176 役白専女6

電波戦隊スイハンジャー#176 役白専女6

第9章 魔性、イエロー琢磨のツインソウル役白専女6

ここは一体どういうところなんだい?

役一族の長老、白専女は困惑していた。

それまで籠められていた牢から出された白専女は目隠しをされてしばらく歩かされている間、やっと新鮮な外の空気を吸えたかと思ったら、今度は別のお邸の一室に籠められてしまった。と背後で戸が閉まる音で気づき、多少なりとも落胆した。

どんなに無抵抗を貫いても叛徒の疑いは解けない

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電波戦隊スイハンジャー#177 円卓会議

電波戦隊スイハンジャー#177 円卓会議

第9章 魔性、イエロー琢磨のツインソウル円卓会議

人類は、進化へと向かう苦より退化へと向かう楽を選ぶ生き物である。

野上鉄太郎

「この銀河の質量が限界近くに来ています」

と円卓の向こうで大天使メタトロンが隣の席の上司に報告した。

「そうですか…サンダルフォン、自然消滅まであとどれくらいかかります?」

と藍色の前髪をかき上げた「上司」が自分の左隣の席の部下に計算と報告を促すと

「どう先

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電波戦隊スイハンジャー#178 家政夫のニニギ1

電波戦隊スイハンジャー#178 家政夫のニニギ1

第9章 魔性、イエロー琢磨のツインソウル家政夫のニニギ1

「つまりね、人間ってのは地球の外に出る事ばかり夢見てるけどさあ、
肝心な地球の内部の研究がてんでなっていないんだよ」

と、画面の向こうの端正な顔立ちはしているけれど、
灰色の髪をだらしなく束ねた灰色の瞳の青年は手元のビーカーに乗せたコーヒーサーバーにケトルのお湯を丁寧に回し淹れて抽出したコーヒーをビーカーに口を付けて直飲みした。

「そ

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電波戦隊スイハンジャー#179 家政夫のニニギ2、ヴィヨーム

電波戦隊スイハンジャー#179 家政夫のニニギ2、ヴィヨーム

第9章 魔性、イエロー琢磨のツインソウル家政夫のニニギ2、ヴイヨーム

真夜中一時のことであった。

地下室に人の気配がしたのでドアを細く開けて聡介が中を窺ってみると、棚の中のバイオリンひとつひとつに優しく愛撫するような手つきでクロスをかけるニニギの姿。

「ダメですよ、いくら叔母さんが不在だからって楽器の手入れを怠っていては」

とっくに聡介が覗いているのに気付いているニニギは15挺のバイオリン

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電波戦隊スイハンジャー#180 家政婦のタキ、クリスタ

電波戦隊スイハンジャー#180 家政婦のタキ、クリスタ

第9章 魔性、イエロー琢磨のツインソウル家政婦のタキ、クリスタ

あれは1982年の、西ベルリンでの事やった。

当時のベルリンは東側の政治的都合でけったいな壁が作られた小さな街やった。

わしの師であるエッセンシュタインを初めとする指揮者有志はわざと壁の前で野外コンサートを開き、

西の人にも東の人にも音楽は平等に受け渡されなければならない。

とそりゃ大音量で演奏したもんや。師匠はベートーベン

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電波戦隊スイハンジャー#181 観光戦隊スイハンジャー1

電波戦隊スイハンジャー#181 観光戦隊スイハンジャー1

第9章 魔性、イエロー琢磨のツインソウル観光戦隊スイハンジャー1

おっす、おら戦隊のレッドで「いちおう」主人公の魚沼隆文。

いちおう、の理由?この物語は章ごとで主人公がころころ変わる面倒くせぇ小説なんだべ。

今までの流れで行くと、
レッド、ブルー、グリーン、シルバー&ピンク、シルバー、ホワイト、
中1のガキ。

と来て今の章はイエローという事になっているが…

いま安宿バー「グラン・クリュ」

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電波戦隊スイハンジャー#182 観光戦隊スイハンジャー2

電波戦隊スイハンジャー#182 観光戦隊スイハンジャー2

第9章 魔性、イエロー琢磨のツインソウル観光戦隊スイハンジャー2

「ごきげんようピンクバタフライ、私は高天原族の王子ツクヨミ」

と銀色に輝く長髪を腰まで垂らしたスーツ姿の青年は傲然と名乗った。

「知ってるわよそんな事」
と戦隊のピンクこと紺野蓮太郎は9月から知り合いのこのフェミニン王子に向かってにべも無く言い放った。

あぁ~、明日はシンガポールに向けて出発だからしっかり寝なきゃだわね。とカ

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