EP033. あなた頑張ってるわね
「今日の晩御飯、何にしよっかなぁ。」
夕方のタイムセールに合わせて買い物に来るのが日課。
抱っこ紐で抱いた可愛い娘と一緒の買い物は楽しい。
もちろん娘は何もまだ話せないから会話は楽しめないけど、ノンバーバルコミュニケーションって言うのかな?言葉はなくても何か通じるものがある。
これが母と子のつながりなんだろうな。
娘がどう思ってるのか聞けないから本当のところは分からないけど、きっとそうだね。
「野菜が安いなー。ねぇ何が食べたい?」
娘に聞いてみる。
まだ離乳していないので娘はご飯を食べられない。でも母乳は私が食べたものでできている。だから私が何かを食べる時には、それが娘の口に入るって意識していて、一応娘の好みを聞いてあげることにしてる。
「今日はポトフでも作ろっか?野菜をたっぷり摂れるし、パパも好きだもんね。」
夫は何でも「おいしいおいしい」って食べてくれる。
スポーツが好きで体が大きい割には野菜が大好きだ。お肉は嫌いじゃないし食べられないわけじゃないんだけど、畜産業は温室効果ガスを多く排出するとか、驚くほどの水を使うからって、あまりお肉は食べない。でも実のところは食べられるために生かされている動物が可愛そうで食べたくないみたい。それは私もよく分かる。だからうちでは野菜中心のメニュー。
娘もポトフがいいらしい。
重いけど、根菜を中心に栄養バランスと彩りを考えてショッピングカートに入れる。
「今日はこれくらいでいいかな。」
お会計を済まそうとレジの列に並ぶ。
お母さんなら分かると思うけど「列に並んで待つ」のって小さい子を連れてると結構気を遣う。機嫌を損なってぐずりだすと大変。列を離れてあやしてから並び直すこともしばしば。
お会計まで3人ほど。今日はすんなり済ませそうだ。
「ふんっ…ふんっ…。」
始まりそう。もう少しなのに。
「あと少しだから、もう少しお利口さんでいてね。」
抱き直して、揺らして機嫌をとる。
そうこうしていると私の番になった。
なんとか持ちこたえてくれたようだ。
手早く支払いを済ませてしまおうと財布を探っていると、
「むーーーーーー…。むーーーーーー…。」
遂に始まった。
「あぁー、始まっちゃったよー。」
まもなく爆発する。爆発すれば大声で泣き出す。
このままじゃ周りに迷惑をかけてしまう。
焦る。
「どうしよう…。」
すごく焦る。
「あなた可愛いわねー。ばぁー。」
私の後ろに並んでいた年配の女性だ。
今にも泣き出しそうな娘をあやしてくれている。
「どうしたのかなぁ?何か嫌なのかなぁ?いないいないばぁ。」
優しく娘を可愛がってくれている。
救世主が現れた。
これはチャンスと、この隙に支払いを進める。
この女性のおかげでスムーズに支払いを済ませることができた。
「ありがとうございます!」
女性にお礼を言って、邪魔にならないよう速やかに作荷台に移動した。
エコバッグに野菜を詰めていると、先ほどの女性が隣に来られた。
「先ほどは本当にありがとうございます。むずかり出すといつも大変で…。とても助かりました。」
「いえいえ、そんなの気にすることありませんよ。お互い様ですからね。ほんと可愛いわねー。おいくつ?」
「まだ6ヶ月なんです。」
「そうなのねー。いい子ねー。」
とっても優しそうな笑顔で娘に話しかけてくれる。
娘も機嫌を直したようでニコニコしている。この無邪気な笑顔を見ているとなんでも許せてしまうから不思議。
「何度見てもあなた可愛いわねー。お母さんに大事に大事にしてもらってるのねー。いっぱい可愛がってもらってるのねー。」
娘が笑い声を上げている。
「お母さん、あなた頑張ってるわね。」
「そんな…。嬉しいです。ありがとうございます。」
娘と人が集まるところへ出かけると、迷惑を掛けてばかりで申し訳ない気持ち続きだった。
慣れない育児で疲れているのかな、私っていつも焦ってばっかり。
赤の他人にでもこんなに優しくしてくれる人がいる。
私は周りの目を気にしすぎていたのかも。
もう少し「母の図太さ」があっても良さそうだな。
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