佐藤 倫太郎 / Rintaro Sato

佐藤 倫太郎 / Rintaro Sato

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第六回笹井宏之賞応募作「GEZAN」

第六回笹井宏之賞応募作品「GEZAN」 8月の猛暑の中、短歌を作ると意気込んで入った喫茶店で、ただタバコの煙を吐き出すだけの日々。それでも「この夏に作らなきゃいけない短歌がある」という謎の創作意欲と若干の脅迫観念によってなんとか完成までは漕ぎ着けることができました。 まぁ、あの夏の”しけもく”みたいなものですが、ぜひ読んでいってください。 「GEZAN」 追憶の底から続く山道に春の植生、初夏の植生 米を研ぐ操作を終えて出ていった背をさする音だけを残して 死ねぇーって叫

    • 短歌連作「タオルケットは穏やかな」

      心が折れかけたとき何度も助けてもらったカネコアヤノさんのアルバム「タオルケットは穏やかな」から着想を得ました。 一番下にPDFを着けておくので、noteで読みにくい人はそちらからご覧ください。 わたしたちへ「変わりたい変われない変わりたい代わりがいない」 片隅であの子が叫ぶとき、今のわたしは詠い叫びを纏う やさしいギター「不安の形は日々変わりゆくように」 不規則に弾いたコードの泡だけで埋もれる部屋に住んで住んでた 季節の果物「あなたと季節の果物をわけあう愛から」

      • 気ままに一首評_005

        手羽先を拳銃としてわたくしはあなたの不幸を奪う強盗 「氷柱」工藤玲音 なんてヘンテコでコミカルで幸せな強盗なんだろう。鬼気迫る感じが、、、ない。全然ない。 手羽先を向けられた人は、何もできず両手を上げたまま、呆然としている間に不幸を奪われてしまう。そして幸せだけが残る。 拳銃の代わりが手羽先なのが良かった。 手羽先の“手”や“羽”が軽やかさを醸し出していて、死を連想させる拳銃と良い対比になっているし、手羽先の“先”は手羽先を突き立てられた先にいる他者の存在がうっすら仄めか

        • 気ままに一首評_004

          アイス買おうと言ってコンビニに行ったけど4人中2人は買ってない 「隣り駅のヤマダ電機」永井祐 アイスを買うためにコンビニに行ったはずなのに、出てくる頃にはコンビニに行った理由なんてとうに忘れている。 アイスだって買い忘れている。 いや、初めからアイスなんかいらなかったのかもしれない。 この4人は友達かもしれないし、家族かもしれない。ただ言えるのはこの4人は、気を許し合える関係性があるということ。 変に気を遣う関係だったら、いらないアイスを買ってしまうだろう。 4人中2人

        第六回笹井宏之賞応募作「GEZAN」

          気ままに一首評_003

          晩春の怒りは百合の蕾のよう、弾けて世界なんて割ったれ 「この林を抜けると花の名を一つ覚えている」千種創一 晩春にある怒りは百合の蕾のようで、 弾けて世界なんか割れてしまえ。 深読みせずに、そのままの意味をとっても良いだろう。 上の句は、晩春や百合からくる湿度のようなものを感じるが、下の句では、怒りと共にその湿度ある世界を弾き飛ばした先に、初夏のカラッとした気持ち良い風を想像できる。 ”晩春”の”ば(b)” ”蕾”の”つ(t)” ”弾けて”の”て(t)” ”なんて”の”て

          気ままに一首評_002

          窓越しに窓が見えてる わりと繊細な人なのかもしれないね 佐クマサトシ「標準時」 部屋の窓に注目するのではなく、その先にある窓に注目してしまう。 そんな私は割と繊細な人なのかもしれないね。 と主体が主体への気づきを綴った歌として詠んだ。 単純に外の窓に注目しているのではなく、”窓越し”の窓に注目しているのがポイントだろう。 主体は、内側の窓を認識した上で外の窓を見ている。 本当は内側の窓なんか意識しなくても良いはずなのに、無意識の中で ぼんやりとその存在を認識してしまって、

          気ままに一首評_001

          終わらない だから誰かが口笛を嫌でも吹かなきゃならないんだよ 中澤系「uta0001.txt」 終わらないは世界のことだろうか。 世界を終わらせないために今も誰かが嫌々口笛を吹いているのだろうか。 今も誰かが働いている、病気と闘っている、戦争しているなどは、どこかで聞いたことがあるし、言われたときは確かにそうだなと思うが、数十秒後には忘れてしまっていることもある。 口笛も子供の頃に吹いた記憶はあるが、いつしか吹かなくなって、口笛を吹く行為自体忘れてしまっている。 終わら

          Crayon Angels / Judee Sill

          Crayon angel songs are slightly out of tune クレヨンエンジェルの歌は少し外れた旋律 But I'm sure I'm not to blame だけど私のせいじゃない Nothing's happened , but I think it will soon 何も起こっていないけど、もうすぐだと思うから So I sit here waitin' for God and a train ここに座って神様と白昼夢への汽車を待つ

          野生化する都市図鑑

          僕の卒業制作を公開します。 PDFをダウンロードしてご覧ください。 現在の日本の都市は「お金を生むための機械」に成り果てている。 しかし本来の都市とは「暮らしのための機械」ではないのか。 ではこの「暮らしのための機械」すなわち「暮らしのための都市」を 取り戻すにはどうしたら良いのか。 それは、思考を野生化し、都市に暮らしを広げることである。 感想・コメントをお待ちしております。 noteのコメント欄でも良いですし、TwitterのDMでもOKです。 また、この作品をさらに

          野生化する都市図鑑

          大阪ミキサー計画4

          昨日は、扇町公園の昼寝スポットがゾーン空間であるというお話をしました。ゾーン空間とは、私が考えた言葉で、周りのノイズをシャットダウンして作り出した自分だけの空間のことです。 扇町公園の昼寝スポットは、まさにそのような空間で、人が多い扇町公園の中で、周りを完全にシャットダウンして自分だけの昼寝スペースを作り出しているのです。恐らくここで寝ている人たちは、周りの音や人の行き来は全く気にしていません。逆に公園にいる人たちも、ここで昼寝している人たちのことを全く気にしていません。(と

          大阪ミキサー計画3

          こんばんは 大阪ミキサー計画3です。 一緒に散歩してくれる方は随時募集中です。 場所は大阪市北区中崎町〜中津周辺 時間や人数は指定しません。誰もOK。 興味がある人は、私のDMまで。 https://twitter.com/home?lang=ja 扇町公園 ゾーン空間 大阪市 北区の扇町公園を散歩していると、草陰で昼寝をしている人たちを発見しました。 道から少し外れた場所にポッカリと空いた空間。昼寝をするのには最適な空間です。多くの人が賑わう公園内で、ここだけ何かに囲

          大阪ミキサー2

          昨日、大阪ミキサー計画を始動しました。 一緒に散歩したいとDMをくれた人は0人でした。 知らない人といきなり散歩は少しハードルが高いですもんね。 今日からは、散歩の記録をつけていきます。 散歩で発見したものが、自分以外の誰かにとってどのように映っているのか、どのようなフィルターを通して都市を見ているのか、考察していきます。 一緒に散歩してくれる方は随時募集中です。 場所は大阪市北区中崎町〜中津周辺 時間や人数は指定しません。誰もOK。 興味がある人は、私のDMまで。 ht

          大阪ミキサー計画1(仮)

          ※勢いだけで書いた散文ですが、思考を整理するためのメモ的なものだと思って読んでくださると幸いです。 私は現在、夜間の建築学部に通っており、1月の卒業制作提出に向けて何を設計しようか迷っている。 建築に憧れ、22歳の時から約1年半、建築の勉強をしてきたわけだが、 私は建てることに興味がないかもしれないという恐怖感と戦っている。 他の人は、卒業制作に向けて、土地を選定し何を設計するか考えている。 私は未だに土地を選ぶ気にもなれないし、何かを設計する気にもならない。 話は変わ

          大阪ミキサー計画1(仮)

          nikki221010 街の綻び

          散歩していると、街に綻びがあるのに気づく. こんなに建物がびっしり立ち並んでいるのに、 誰のものか分からない土地が存在する. いや、明確に言ったら現代日本にそんな土地は存在しない. でも実際に、存在する. 街は誰かのものだと思い込んでたのかもしれない. でもよく考えたら自分のものでもあるような. 自分の街がどうありたいか、 どういう使い方をしたいか、 どういう色で、匂いで、音でありたいか. 考える権利があるし、実践する権利がある. 屋根の色は自分で決める 美しいから 僕ら

          短歌連作「Summer Nova」

          YouTube でも公開しています。ぜひご覧ください。 https://youtu.be/gpJGAuDBc_s ○ 帆を張る 推進力は生まれないぼんやりとした重力が増すだけ 怯えてた心象ノイズ移ろい 蜃気楼の街が見える 乗ってきた船はもうない 全てが偽物だったから僕は一人だから 長い影アスファルトに焼き付いて ギョッとしたので野良猫を撫でる くも雲く 蝉時雨少しNoisyで お出かけするわ白いワンピース 畦道で手招くきみの幽香の 光の粒子で脳を包んで 息を

          短歌連作「Summer Nova」

          短歌“たばこ”

          煙草の煙 儚い曲線 嘯くようにフローステップ