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空前の会計士大量合格から約10年、現在【 会計の未来~AIが変える監査 】


企業会計を取り巻く状況が大きく変わっている。監査法人が会計監査で重視した項目の監査報告書への記載が2020年3月期から企業に早期適用される。海外では四大監査法人グループの寡占が問題視され、解体論も浮上する。監査の現場では企業の不正リスクを瞬時にあぶり出す人工知能(AI)監査も使われ始めた。
英オックスフォード大と野村総合研究所などが今後10~20年後にAIで代替可能となりそうな職業に会計士を挙げたのは15年。着実に変化の波は押し寄せつつある。AIに任せるだけでなく、どう付加価値を提供するのか。会計新時代は監査法人や会計士の存在意義、守るべき価値観とは何かを問うている。

監査の現場にAI。非常に相性がいいでしょうね。

人間の経験、勘や感覚(暗黙知)によるチェックももちろん重要です。

膨大な量のチェック項目の中でAIが得意であろう「異常値の把握(監査)」。これをAIにしてもらうことで、人間が得意であろう「違和感による把握(監査)」の精度がより研ぎ澄まされるように感じます。

税務調査も、現在も異常値の検索がデジタル化していますが、国税庁が発表した「税務行政の将来像 ~ スマート化を目指して ~」には、AI化を進めていくとの記載があります。単純な異常値の検索には、ヒトよりもAIが勝るのだろうと思います(完全主観的なイメージですが)。

AIは「仕事を奪う」のではなく、我々が力を入れるべき仕事に集中させてくれるもの。AIが我々の仕事のサポート役として、ツールとして、補ってくれる。そんな位置付けで、活性化していくことはとても心強いです。

問題は以下の記事抜粋にあるように、情報を出す側が正確に情報開示するか?

課題はデータ収集だ。企業から有効なデータを得られなければ、AIは能力を十分に発揮できない。
「また空振りだ」。あずさ監査法人のデータサイエンティストは、あるメーカーの月次販売の分析結果を見てため息をついた。AIは正常に稼働したが、元のデータを正しく入力していない子会社が複数あったため、データを分析できなかったのだ。

これは、そもそも論でもあり、最も厄介な壁であろうと思います。

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さて、記事でもう1つ気になったこと。

AI監査が広がる理由はまず、会計業界の人手不足だ。受験離れで会計士試験の合格者が低迷する半面、監査時間や業務量は年々増えている。

こんな記事のあとに、以下の図表が載っていました。

むむ・・。記者の方は悪くないのですが、2008年頃、会計士受験をしていた人にとっては、「もう少し前の資料から比較してほしい」と思ったのではないでしょうか。

パッとみると、「うわ~、会計士ってこんな減っているのか~」という印象。ですが、もう少し、情報量を増やしてみます。公認会計士協会のHPから受験者数等の情報を確認し、図表を作成しました(2006年から試験制度が変わっていますので2005年までは旧制度の情報)。

どうでしょう?オレンジの部分が先ほどの記事の「合格者」です。08年から確かに減っていますが、まず注目すべきは「赤の折れ線グラフ(合格率)」です。

2007年、2008年、何があった!?というくらい、高いです。

そして、その高さの影響を受けてか、2010年や2011年あたり、受験者数が伸び、合格率が急激に下がったことで、その後は受験者数も減り・・みたいな動きです。

単純に合格者数が伸び悩んでいますね~という話ではなく、当事者にとってはかなり翻弄されたであろう物語が存在します。

私が税理士受験を始めたのが2006年、大学生の時でした。受験勉強を始めて2007年、2008年。会計士大量合格が起きます。ニュースでも取り上げられるし、本当に当時、会計士の合格発表後は、専門学校中が合格した学生でお祭り騒ぎでした(迷惑とかではなく、何やらすごいことが起きている・・という印象でした)

これは、金融庁が、今後の金融市場拡大の流れを受け、「会計士5万人構想」というものを掲げ、新試験制度の導入と合格者数の増加を実行したことに起因します。(現在の会員数は約38,000人です。)

私の大学の友人も当時、何人か合格しましたし、税理士の受験仲間も、かなり会計士受験に鞍替えしていました。空前の会計士受験ブーム。私もよく「なんで税理士なの?会計士受験のほうがいいよ!」と誘われました。まぁ、私は性格的に監査というものが全く向かないな、と思っていましたし、コンサルティングをしたい思いが強かったので、迷うことはなかったですが・・(当時監査法人=チェックする仕事、という認識でしたので)。

金融庁が、会計士不足を解消するために行った政策でしたが、結果、合格しても監査法人に就職できないという事態が生じました。監査法人だって、試験に合格しても実務経験のない新入社員を急に大量採用はできません。

(ちなみに、大量合格とはいえ、公認会計士を本気で受験した人達です。確かに合格しやすかったでしょうが、並々ならぬ努力をした人達です。)

こんな記事もあります。

背景には過去の就職難がある。「会計士5万人構想」を掲げた金融庁は新試験移行後の3年間、毎年3000人を超す合格者を出した。ところが就職できない合格者が「半分近くになった」(審査会)。金融庁は一転合格者を大幅に絞り、7年連続の減少となった。

そして今。少子化もあり、AIの発達で将来性へ疑念があるのか会計業界全体で、専門職への受験者数が激減しています。

税理士の受験者数もこんな感じです。

先日、私が講師をしている専門学校で、税理士受験をしないクラスの子たちと少し話をしました。会計士とか税理士は考えないの?と。

いろいろな返答があり、また私が税理士だからオブラートに受験しない理由を話してくれましたが、ざっと直球で書くとこんな感じ。

① わざわざ苦労して資格まで取ろうとは思わない(資格がなくても就職できる)
② 受験というリスクを負いたくない
③ AIの影響で、将来性が無い仕事という認識

私も言います。「そうだよね」と。

AIとの付き合い方に関しては、今後もどう活かすかという部分を強調し、仕事が絶対量は減るが、奪われるのではなく、「分業化」だと伝えることが大切だと思います。

あとは会計業界の資格のイメージなんですかね。コンサルティングのやりがい、税務に携わるやりがい。

また、夏に専門学校のオープンキャンパスがあるので、講演する際には、微力ながら、1人でも2人でも、私が思う魅力を高校生に伝えよう、と小さな決意をしました。

・・岡田准一さん主演で、税理士設定の映画でも大ヒットしたら、変わるかな~なんて、生徒とも話しています 笑

#COMEMO #NIKKEI

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