岩崎学術出版社@公式note

こんにちは。東京は御茶ノ水にあります、精神分析・精神医学・臨床心理学・発達障害・虐待防…

岩崎学術出版社@公式note

こんにちは。東京は御茶ノ水にあります、精神分析・精神医学・臨床心理学・発達障害・虐待防止など「こころ」を扱う専門書出版・岩崎学術出版社と申します。何卒、よろしくお願いいたします。 http://www.iwasaki-ap.co.jp/

最近の記事

【寄稿】他の人の働いている様子が覗き見できる本|小林 陵

 単著を出版するというのは、もう何冊も出されている先生方にとっては慣れたことかもしれませんが、そうではない私のような身に取ってみれば、日常生活が大騒ぎです。両親が神棚に飾ろうとか言ったり、嫁いでいる姉からは五冊買ったよと連絡が来たり(姉はそうでもしないと誰も買わないと思ったのかも)。新聞に書評を載せていただいたときには、待ちきれない親父が早朝からコンビニに新聞を買いに行って、こんな時間じゃ朝刊なんて来てませんよと断られたり。小林家が大騒動なのです。私は私で同業者だけでなく、心

    • 【好評御礼特別公開/「第一章」チラ見】『医療現場で働くやとわれ心理士のお仕事入門』|小林 陵

      第一章 心理検査を取ったり、心理療法もしたり病院の朝は早い  総合病院には病棟もあるので、病院自体は二四時間ずっと誰かが働いています。でも、真夜中に心理検査をやったり、早朝にデイケアをやったりはしないので、多くの場合、心理士の仕事は日中になります。もっとも病院によって夜勤のお手伝いをしている心理士さんもいらっしゃるのですが。私の病院は八時に正面玄関の自動ドアが開かれます。どういうわけか八時前になると、その正面玄関の入口付近に行列ができるんです。最初に見たときにはまるでパチン

      • 【座談会】「良い職場とは」~『職場でのカウンセリング』執筆者座談会

        財津康司(以下、財津) 本日はお忙しい中、お集まりいただきありがとうございます。本の題名にある「職場でのカウンセリング」は、職場改善に寄与するものであって欲しいと思っています。そこで「この本に書かれていることは、実際の職場改善にどのように寄与できるのか」という観点から、執筆者に現状の職場の問題点や改善策等についてお聞きしたいと思います。その内容をヒントに、心理職の先生方が社員とのカウンセリングを工夫していただけたらと思います。  そこでまず、弁護士の五十嵐先生に質問させてくだ

        • 【寄稿】『職場でのカウンセリング~心理職のための手引き』の著者の1人である弁護士が職場のメンタルヘルスについて考えてみた話|五十嵐沙織

           本書の編者である財津先生のnoteでも言及されていましたが、私も、本書を、社員のメンタルヘルス対策を担うスタートアップの経営者等に是非とも読んでいただきたいと思っています。 メンタルヘルス対策の重要性とは  私は、これまで、複数のスタートアップにて、企業内弁護士や監査役として、会社のメンタルヘルスへの対応を見てきました。  その経験上、メンタルヘルスの問題は人事や労務等の各部署に任せられ、コーポレート部門を統括する長や管掌役員等においては、メンタルヘルス問題への意識や取

        【寄稿】他の人の働いている様子が覗き見できる本|小林 陵

          【寄稿】『職場でのカウンセリング〜心理職のための手引き』出版に寄せて|財津康司

           出版前に幾人かの知り合いに献本したところ「心理職とはなんですか?」と質問された。心理の資格には臨床心理士や公認心理師以外にも産業カウンセラーや認定心理士など様々な資格が存在する。また、心理業務に携わっているものの心理の資格をもっていない職種もある(保健師、看護師など)。つまり、本書における心理職とは、資格の有無を問わず、心理業務をある程度専門的に担っている方々を意味しているのである。  それでは実際の職場において心理業務を担っている方々とは具体的に誰を指すのか。まず上司(管

          【寄稿】『職場でのカウンセリング〜心理職のための手引き』出版に寄せて|財津康司

          落穂ひろい|神田橋條治

          神田橋條治先生の「心身養生」シリーズ最新作『心身養生,もっと工夫を』が好評です。これをもってシリーズはひとまず完結となりましたが,著者の連想は泉のように湧き続けます。note読者に特別に紹介してまいります。  「心身養生のコツ」シリーズは、「もっと工夫を」で完了しました。折々に目次を眺めて下さると、ご自分の「いま」の状況に適した養生法に出会われましょう。  加齢のせいで、発想の質も量も貧しくなったので、シリーズを終了しましたが。残り火のような発想は湧出しますので、noteに

          落穂ひろい|神田橋條治

          【寄稿】三上謙一|アタッチメント=「愛着障害」?――「愛着障害」概念をめぐる混乱についての一考察

          アタッチメント=「愛着障害」?――「愛着障害」概念をめぐる混乱についての一考察「愛着障害」概念の流行  最近、日本では発達障害に続いて「愛着障害」という概念が専門家のみならず一般の人たちの間にも流行していますが、その概念的理解は混乱していることが指摘されています(平島・2017;村上・2021)。  一般に「愛着障害」 という言葉が知られるようになったきっかけは、精神科医である岡田尊司氏の著書『愛着障害――子ども時代を引きずる人々』(光文社、2011)によるものでしょう

          【寄稿】三上謙一|アタッチメント=「愛着障害」?――「愛着障害」概念をめぐる混乱についての一考察

          【「はじめに」公開/本文チラ見】『心理職は検査中に何を考えているのか?』|浜内彩乃・星野修一

          はじめに 心理職として働くにあたって、「心理検査に精通していること」が求められることは少なくありません。  心理検査に精通するために、まず実施マニュアルを参考にして、検査用紙や検査道具を使って、自分で実施してみたり、同業者同士でロールプレイを行って練習し、実施方法を定着させます。さらに、実施マニュアルやさまざまな書籍を読んで、スコアリングや解釈について理解を深め、それでも不安な場合には、研修会にも参加するでしょう。 「やれる限りのことをやった!」 と、いざ心理検査を実施

          【「はじめに」公開/本文チラ見】『心理職は検査中に何を考えているのか?』|浜内彩乃・星野修一

          【寄稿】人を診るか疾患を診るか。妥協するか迎合するか。|池田健

           最初に自己紹介。筆者は一介の臨床医である。一応専門は精神科医(心療内科医)である。  ただし諸事情により、現時点で診ている患者さんの年齢ギャップは常時、100才以上(例:最少年齢の方が7才。最高齢の方、110才など)になっている。  諸事情というのは、後述する小阪先生との出会いにより身体科の治療の必要性を痛感し、臨床内科専門医、腹部救急認定医、糖尿病療養指導医などを取得した。  結果として、主たる勤務先の病院では年中胸腹部のCT画像等を睨みながら、ヒューマリンのコントロール

          【寄稿】人を診るか疾患を診るか。妥協するか迎合するか。|池田健

          【「本書について」公開】花丘ちぐさ|『わが国におけるポリヴェーガル理論の臨床応用』

          本書について ポージェス博士によって1994年に提唱されたポリヴェーガル理論は、海外からトラウマ学の講師を招いてのトレーニングなどを通して、徐々に日本も紹介され知られるようになっていった。ポージェス博士の著書、『The Pocket Guide to the Polyvagal Theory』(Norton Publisher)の和訳が、2018年に『ポリヴェーガル理論入門――心に変革を起こす「安全」と「絆」』(春秋社・花丘ちぐさ訳)として出版され、2023年現在第10刷まで

          【「本書について」公開】花丘ちぐさ|『わが国におけるポリヴェーガル理論の臨床応用』

          【エッセイ】池田暁史|修行と「自己-愛」

          修行と「自己–愛」  鮨が好きだ。   私が子どもの頃でもなお宴会のメイン料理といったら鯉のうま煮(輪切りにした鯉を酒、醤油、砂糖で煮た郷土料理で、身は硬くてそれほど美味しいものではないが、甘辛く味のしみた卵や内臓には特有の滋味がある)が出てくるような、海から隔絶された内陸部の盆地で育った私にとって、もとより鮨は身近な食べ物ではなかった。  そんな私が江戸前の鮨の豊饒さに目を見開かされたのは、時代でいえば2000年代半ば、齢でいえば30代前半のことだった。当時、引っ越したば

          【エッセイ】池田暁史|修行と「自己-愛」

          【序文公開】エドワード・R・ワトキンス|『うつ病の反すう焦点化認知行動療法』

          序 文  本書は、反すうや心配を繰り返す難治性の症例に対し、治療効果を高めたいと考える治療者・援助者のために書かれたものである。本書の内容は、研修生から認知療法のスーパーヴァイザーまで、あらゆるレベルの治療者・援助者にとって役立つものになるよう心がけた。  過去20 年に及ぶ研究・臨床実践から、反すうと反復的な否定的思考が、うつ病・不安症の発症・維持につながる重要な認知的メカニズムであることが明らかになった。にも関わらず、治療において反すうを扱う方法を記した文献は、今日に

          【序文公開】エドワード・R・ワトキンス|『うつ病の反すう焦点化認知行動療法』

          【全文公開!】大野裕|『リカバリーを目指す認知療法;重篤なメンタルヘルス状態からの再起』「まえがき」

          「まずスタッフの認知に働きかける」  2019 年秋、Beck Institute Excellence Summit の前夜、娘のJudith Beck や本書の著者のPaul Grant やEllen Inverso を交えて「リカバリーを目指す認知療法」(以下、CT-R)について個人的に話しているときにDr. Beck はそう話していた。  重篤な精神疾患のために20 年、30 年と長期に入院している人たちを世話している病棟のスタッフは、「退院なんてどうせ無理だ」と

          【全文公開!】大野裕|『リカバリーを目指す認知療法;重篤なメンタルヘルス状態からの再起』「まえがき」

          【寄稿】高瀬由嗣|メドゥーサの謎〜現象の記述における主観と客観〜

          メドゥーサの謎〜現象の記述における主観と客観〜 学生の頃の話であるが、ギリシア神話に登場するこの怪物の話がやけに気になり、私はその世にも恐ろしい面相やら、それを見て石になる場面やらを心の中で反芻したことがある。いろいろと想像をめぐらすうちに、そんな事はあるわけがないとふと思い至った。もちろん神話なのだから、現実にはありえないような事が起ころうが何の問題もない。問題はそこではなく、メドゥーサの顔を見た者がたちまち石に変わるのだとしたら、一体誰がどうやってその事実を知り得たのか、

          【寄稿】高瀬由嗣|メドゥーサの謎〜現象の記述における主観と客観〜

          【論文・エッセイ】金生由紀子|発達障害をめぐる変化を振り返る――『成人の発達障害の評価と診断』の刊行に寄せて

          発達障害をめぐる変化を振り返る――『成人の発達障害の評価と診断』の刊行に寄せて  春になるといつのまにか街中に色があふれるようになります。地下鉄の駅に、濃いオレンジ色の髪の毛とぱっちりした目が印象的なセサミストリートのキャラクターのポスターが貼ってあり、この季節にぴったりと思ったら、ジュリアでした。ご存じの方も多いと思いますが、多様性のある世界を反映して数年前にセサミストリートに加わった自閉症のキャラクターであり、ポスターは世界自閉症啓発デー(4月2日)を広報するものです。

          【論文・エッセイ】金生由紀子|発達障害をめぐる変化を振り返る――『成人の発達障害の評価と診断』の刊行に寄せて

          【論文・エッセイ】井出智博|児童養護施設心理職の“これまで”と“これから”

          児童養護施設心理職の“これまで”と“これから”  私が大学院生の頃(20年ほど前)、全国の児童養護施設に心理職(施設心理職)が配置されることになりました。当時の厚生省は心理職の配置を伝える通達の中で、児童虐待等による心的外傷のための心理治療を必要とする子どもたちに心理治療を実施することを目的として配置するとその目的を示しました。全国的にスクールカウンセラーの配置が進められた時代でしたので、臨床心理士の有資格者を始めとするベテランにはスクールカウンセラーとして勤務する方が多く

          【論文・エッセイ】井出智博|児童養護施設心理職の“これまで”と“これから”