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ドミニカ移住 #2:カリブの国へ出発

このnoteは、文化人類学や地域研究を学んでいた当時大学3年生(21歳)だった私が、小さいころからの夢だった海外でのフィールドワークを行うため、野球が盛んなドミニカ共和国(以下、ドミニカ)をフィールド地に選び、移住した合計約10か月の記憶を綴ったものです。




ドミニカ共和国へ飛び立つ

5/22 15:15発―6:15着 東京―ロサンゼルス(10h30m待ち)
   16:40発―23:55着 ロサンゼルスーアトランタ(10時間待ち)
5/23   9:52発―13:15着 アトランターサント・ドミンゴ


 8時間のって、10時間まって、4時間のって、10時間まって…みたいな!東京からの所要時間が34時間とは言っても、私の自宅は大阪。もちろん新大阪に住んでいるわけでもないから、自宅からの所要時間だと考えると約40時間の旅程。大学に入ってケニアや中東地域に行ったこともあったけれど、私にとってはこれが人生最長の旅だった。


アトランタ空港で人生初のスペイン語実践

 アトランタ空港に着き、翌朝出発するサント・ドミンゴ行きの飛行機を待っているときのことは今でも覚えている。真夜中だったこともあり、空港内の照明も薄暗く、お店も既に閉まっていて、ゲート付近にあるソファや床には、私と同様早朝の飛行機を待つ人たちが寝そべって仮眠をとっていた。ここまで来ると、孤独さや治安的な不安とはまた違う、どこか落ち着かない感覚に襲われていた。いまから向かうドミニカで、独学しただけのスペイン語が通じるのかどうかもわからない。これまで経験したことのある世界(英語圏)と、この先に待つ未知の世界(スペイン語圏)の狭間に、自分が佇んでいる気がした。

そんな落ち着かない感覚を取り払おうと、ここらで一度スペイン語を使ってみようと思った私は、周囲をぐるりと見渡した。1組の夫婦がソファで話しているのを見つけると、30代前半くらいでとても優しそうに見える彼らに、なるべく不審がられないようポップな口調で話しかけてみた。はじめは英語で、どこの国の人か、スペイン語は話せるのかを尋ねたと思う。狙い通り、彼らはスペイン語圏のペルー人だった。私がスペイン語の勉強中だということを伝えると、その夫婦は初心者向けの簡単な文法で「どこ出身なんだい?」「何をしにドミニカへ行くんだい?」と質問を投げかけてくれた。これが、人生で初めてスペイン語ネイティブの人と会話した瞬間だった。彼らとFacebookを交換し終えると、それまで感じていたソワソワとした気持ちはかなり薄れ、「何とかなるはずだ」という前向きな気持ちが湧くようになっていた。

いざ、ドミニカ共和国へ

 翌朝、無事にアトランタを経ち、ドミニカの首都サント・ドミンゴへ。日本からアトランタまでの長旅のおかげで感覚が麻痺していて、4時間のフライトは一瞬だった。ここまでくると、機内にいる乗客の服装や肌の色、話している声の大きさ、そして聞こえてくる言語…そのどれもがアメリカ内を移動していた時とは異なっていた。午前中のフライトだったこともあり、機内は外からの光で常に明るく、南国へ向かう陽気な空気感に包まれていた。「ドミニカは、着陸のとき機内で拍手が起こるよ」過去にドミニカへ行ったことがある人からそう聞かされていた通り、車輪が無事地面に触れて減速に成功すると、機内から拍手と歓声が起きた。ついに、到着~!!!

入国審査を終え、空港の到着ゲートまでたどり着くと、両脇でドライバーらしき人たちが小さな行先ボードを胸に抱えて呼び込みをしている。海外の到着ゲートでよく見かける光景だが、恐らくツアーガイドや宿泊施設の人たちがゲストをピックアップしているのだろう。私は必至で辺りを見回し、Kさんから紹介してもらったトニーさんを探した。トニーさんを見つけたことでかなり安心した私は、彼に挨拶をし、空港内のATMでお金を両替えした。トニーさんは移動している間も、空港の中や周辺エリアにはスリが多いことや、この国で歩き方、さっきの呼び込みの中にはボッタくりのタクシードライバーが多いことなどを教えてくれた。

Uberでお勉強

 お金を換金し終えるとトニーさんの住む家に行くため、現地でよく使用されているUberアプリでタクシーを呼んでくれた。彼によると、普通のタクシーは言い値やボッタくりが多いから、登録制になっているUberのほうが安全なのだという。Uberなら、距離や時間に応じて自動で料金が決定されるため、現地の金銭感覚が分からない外国人旅行者でも不当な金額を要求されるリスクを避けられるのだ。

荷物を積み込みながらトニーさんとドライバーが何やら話している。スペイン語でなされる彼らの会話内容は、全く分からなかった。空港からタクシーを出すと、ドライバーと話していたトニーさんの様子が変わる。ドライバーが突然Uberの提示料金よりも多く支払えと言って(ふっかけて)きたらしい。「距離が長いから別料金をもらわないと目的地まで運ばない」という主張らしい。車は既に高速を走っている。こんな状況で断って外に放り投げられるわけにもいかない。受け入れざるを得ない状況下での不当な要求に、「詐欺やん…」そう心の中で呟いた。私はドミニカ到着直後にして、この国はUberドライバーであっても決して信用しきってはいけないことを学ばせてもらった。

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