COVID-19におけるアジア人差別についてのまとめ

昨今のCOVID-19において、さまざまな人間の醜い姿が露わになるようになった。その一つの大きな要素として、アジア人差別があげられる。

以前の状況記録に、アジア人差別についての内容を軽く述べたのだが、もう少し掘り下げて話を記録しておきたいと考えた。


まず、日本の方々に誤解してほしくないこと。それは「すべての外国人が差別を行っている」という偏見を無くしてほしい。程度は国によって全く違う上、地域によってもその程度は違うだろう。ステレオタイプに流されてその国のほとんどの人間がそう思っている、というような考えはなくしてほしい。むしろそういった差別をする人間は、主に知識のなく、世界の狭い人間ばかりだということを理解してほしい。日本にも、ヨーロッパ系外国人がすべてアメリカ人に見えてしまう人もいるだろう。それと同じようなものなのだ。

1. 初期段階での差別について

その上で、COVID-19初期段階で大きく差別が報道されたのは、フランス・イタリア・アメリカであった。フランス・アメリカは以前から差別が激しい国して有名ではあった。主に中国系移民に対する目線が厳しいのである。
フランス・イタリアの二国に関しては、これは中国人の団体観光客の影響もあるだろう。日本でも、爆買いをする中国人観光客にほとほと疲れ切っていた人々が居たように、フランス・イタリアにはひっきりなしにとんでもない量の中国人観光客が来るので、これによりネガティブな印象を持っている人は少なくない。

2.アメリカでの差別について

アメリカの差別については歴史も根深く、良く留学生なども差別に遭ったなどという話を聞くことが多い国である。しかし今回の差別に関しては、もはや国ぐるみの差別と化しているため手に負えない。
その大きな理由して、もちろんドナルド・トランプ氏が挙げられるであろう。彼はツイッターやインタビュー上において、COVID-19をThe Chinese Virusと表現していた。

これについて、記者会見において記者から問われた際も悪びれもなく、「だってこのウィルスは中国から来ただろ」と言い放っていた。その動画がこちら。

この背景には、中国政府が「ウィルスはアメリカの軍隊によってばらまかれた可能性がある」といった内容を言及したため、トランプ氏の逆鱗に触れたというものがあるのだが、それにしても、一国のリーダーとしてこのように発言してしまえば、その国内で差別が広がるのは目に見える話である。

更に、アメリカで状況が爆発的に悪化した今、アメリカ国内メディアも火に油を注いでいる。コメンテーターなどが、真偽不明の「ウェットマーケットからウィルスが発生した」といった内容について「本当に気持ちが悪い」などとコメントする者も見られ、中国に対する差別が深まっている。

3.イギリスでの差別について

さて、私は自分の体験も持って話が出来るため、掘り下げてイギリスの話をさせていただきたい。イギリスでは、最初の段階では差別はそこまで多く見受けられなかった。特に私個人では、何か嫌な思いをしたことはロンドンで一度もなかった。ただし、必ずしも安全というわけではない。
ロンドンは非常に国際的な都市なため、アジア人の居住率も高い。そのため、アジア人への極度な差別は少なく、なんなら純イギリス人ってどのくらいいるんだろう?っていうレベルなので差別が起こりづらいのではと考えている。

だが、少し前にOxford Street(日本でいう渋谷・新宿のような中心街)で、シンガポール人の学生が急に罵声を浴びせられ、殴られたというような報道もあった。

https://www.bbc.co.uk/news/av/uk-england-london-51723523/coronavirus-student-talks-of-oxford-street-racist-attack

他にも、多くの場合でアジア系男性がこのような暴行や罵声を浴びせられるような事件に巻き込まれるケースが何件かあったということだ。

なぜ女性ではなく男性なのかという根拠はわからないが、ファッションなど、単純な見た目でアジア人男性のほうが目立ちやすいのではと考えている。

私個人の経験の話をしよう。私の場合、先述したように差別的なことをされて嫌な思いをしたということは一度もない。ただし、まだ最初、周囲がマスクなどを着用していなかった時期は、マスクをしていることで人々からの視線を感じることは多かった。ただし、これはヨーロッパ人である私のパートナーもマスクをしていて、目線を感じることが多かったという。
また2回ほど、街中で人に私のマスクについて話しかけられたことがあった。「それ、いつもしているの?呼吸できる?」とか、「マスクは医療用のものでないと意味ないんだよ」と言ってきた人もいた。興味があって話しかけてきたという雰囲気だった。
いずれにせよ、個人的にはマスクをしていることで人々の興味を引いた程度で、アジア人として差別された経験はしていない。


4.「マスク」のとらえ方の違い

現在、アメリカが主導する形で起こっている人種差別は異なったものだが、初期段階で世界全体で起こった人種差別に関しては、「マスク」の存在は大きい。
マスクをするという文化が極めてアジア的なものであり、私たちは今やファッションとしても利用するようになっている。それだけ身近なものという証拠だ。
このマスクがアジアにて普及した由来として、社会における欧米諸国との考え方と生活感の違いは大きく影響しているのではないかと考えている。

例えば日本では、マスクをするようになった理由として、「感染予防」または「感染拡大予防」という二つの理由がある。
インフルエンザ・風邪などが流行っている場合、日本人は考えることもなくマスクをしようというように、予防=マスクという考え方が常に備わっている。
それに加え、感染拡大予防として、感染している人が「ほかの人に移さないように」と考えてマスクをするというのが日本での自然な流れだと思う。
日本人の考え方において、周囲の迷惑にならないように行動するというのは非常に大切なことだ。なので普段から、公共の場での大きな咳やくしゃみは好まれないし、風邪ならマスクをして、それを緩和するべき という考え方が当たり前にあるのだと思う。

それに対し、ヨーロッパ諸国では、病気になった場合、まず外出せず自分で治す時間を取る人が多いと思う。これはハードワーカーの多いアジア諸国では難しい。そして、ヨーロッパでは根強く資本主義的な考え方があるため、人々は自分を中心にして考えるので、あまり日本のような、他人の迷惑などを中心として行動するという姿は見られない。

このようなことから、マスクの普及はヨーロッパでは発展しなかったと考えられる。そして「他人に移さないようにする」というコンセプトは抜け落ち「感染者が感染予防しながら外出するためのもの」という概念だけが残るため、無知な人々からすると、「アジア人がコロナを持ち歩いている」というような考え方に行きつくわけだ。

これに関しては、文化の違いだから仕方ないと言えるのかもしれない。だが、私はイギリスに来た際に「マスクをするのは欧米では普通ではないから、しないほうがいい」という情報を得て、以降病気でもマスクをするのは控えた。これは、結局相手のことを考えられる側が遠慮ばかりして、損をしてしまうともいえるのではないだろうか。
ヨーロッパの人たちは自分の文化やマナーに自信を持っている人は多い。そのため自分たちの行動を顧みない人も少なくないと思う。
とは言え、多くの中国人移住民などは、中国のルールをそのままに生きている人も多いのは事実である。そして中国はアジアのステレオタイプになってしまうのも現状。そのためマイノリティの行動が世に知らされることはないだろう。

現実として、2020年となった今も、こうした人種の間にどれだけの誤解や、偏見があるかということは今回のパンデミックで露骨になった。
ウィルスの感染拡大を恐れる一方で、このようなヘイトの感情が世界中に拡大し、また世界が分裂するようなことにならないか。それが私の二つ目の不安要素でもある。






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