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久しい懐(ふところ)
電車内に夕日が射し込んだ。海沿いを走るローカル線に乗っているのは、私の他に親子らしき女性の二人で、臙脂色の長椅子はとても空いている。床の木目がより縦長に見えて、自ら乗車したのに、運ばれてしまうように感じる。
背中の車窓へ首を回した。ガラス窓の中央は菱形に色を抜かれて、四隅は白く擦られている。顔を寄せて菱形を覗くと、車内と同じ茜色に染まった木々が後ろへ流れていった。体が揺れる。古い車両なのだ。
電車内に夕日が射し込んだ。海沿いを走るローカル線に乗っているのは、私の他に親子らしき女性の二人で、臙脂色の長椅子はとても空いている。床の木目がより縦長に見えて、自ら乗車したのに、運ばれてしまうように感じる。
背中の車窓へ首を回した。ガラス窓の中央は菱形に色を抜かれて、四隅は白く擦られている。顔を寄せて菱形を覗くと、車内と同じ茜色に染まった木々が後ろへ流れていった。体が揺れる。古い車両なのだ。