キブンに香る/エッセー
たまにある、幸せになれる香り、たまにある。軽々しい「いいにおい」とはちょっと違う、鼻がいつもより深く感じ取って、体が喜ぶ香り。お腹が空いているときの「いいにおい」とも違って、科学的なものでもない。アロマや香水もいいけれど、もっと自然の香りだ。
例えば、よもぎ。例えば、桃。例えば、グレープフルーツ!私はピンク色のグレープフルーツが大好きだ。 時には、はっさく。時には、白いジャスミンの花。ライラック。それにヒヤシンスも。あとは、刈ったばかりの草から出る汁のにおい。ちょっと違うけど、プールの塩素のにおいは、体というより記憶がよろこぶ。ちょっと生臭い、海の潮風のにおい。場所によって違う外のにおい。風のつめたさも。空気が澄んでいる場所はよくわかる。そんなにおいをたまに、鼻の奥で想像しながら眠りにつく。
昨日はよもぎのにおいと、桃のにおいを想像してみた。今夜はイギリスの夏のにおい、あの日の/あの時間の、にしてみよう、なんて。思い出したいものだ。においを想像していると、どこかの数値があがる研究結果が容易に出そうである。
前に作家の梨木香歩さんの『僕は、そして僕たちはどう生きるか』を読んでから、よもぎの香りを食べたくなって、何度か草大福を買ったけれど、香りが弱くてがっかりした。今でもこれぞ、と思うものは買うけれどいまだにしっくりはこない。
北海道、手に入りやすいデパートの大福屋さんやお菓子屋さんの草大福は試した。だからもし、おすすめがあったら教えてほしい。これぞ草大福、草もちだ、ほうじ茶と飲むのがおすすめ、というのがあったら、どうか教えてほしい。 草大福のためにどこかへ飛んでいけるくらい、もしくは送料を気にしない余裕を、きっとつくれるはずだと信じて。
エッセー:キブンに香る
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たくさん書きます。描きます。たくさんの人の心に届きますように