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公務員から個人事業主としての活路

「本部付隊3等陸曹、石田圭史よしふみは令和5年2月28日付をもって退職を承認されましたっ」

16年間勤務をしていた陸上自衛隊で、私が最後に発した申事もうしごとです。

部隊長に対して、退職することに後悔はありません、と伝わるように自信をもって言い切りました。

転職を考え始めたのは6年前ですが、上司に転職の意思表示をしたのは退職日から半年前のことになります。

きっかけは体調不良です。

私の人間性は、明るくひょうきんで上下関係に気を配れる性格です。当時は周りからも可愛がられ、仕事もこなせる中心的存在でした。

ですが6年前、とある先輩から大勢いる前で辱めを受けました。

当人は冗談でやっていたつもりだったと思うのですが、私からしたら崖から突き落とされるような感覚に陥りました。

辱めを受けた後、身体にイヤな反応が起こったのです。

ぞわぞわと悪寒が走り、鼻血が垂れ流れ、キーンと耳鳴りの症状が出たのです。その場に立っていられなくなり、しゃがみこむ形で朦朧もうろうとしてました。

あとあと病院の先生に聞いてみたら、瞬間的に強いストレスがかかったことで身体が反応したそうです。

その一件から人前に立つことが怖くなり、生活から明るさが無くなりました。気力も日に日に失い、仕事に対して無気力となってしまったのです。

上司に相談し、休暇取得と精神科への受診を勧められました。

受診の結果は「適応障害」と診断され、この日から投薬治療の始まりです。

明るく人気があった私が、まさかこのような病気になるとは思ってもいませんでした。

薬を飲んで職場に行き、やりたくもない仕事をやる。帰宅したら薬を飲んで寝る、の繰り返し。

モチベーショングラフは上がることはなく、緩い傾斜を下るだけの直線になっていました。

目の前の景色はいつも白黒調で、頭の中はボーっとして、すべての行動が無。

周りからは気を使われるようになり、その気配りに痛哭つうこくする毎日。

必要性を求められていない存在となり、私は涙しました。


ーー病状は悪化し、入院することに。

このままの生活を繰り返していたら、いつか自害する。そんな思いがあった私は、変えなきゃいけない環境をどう変えたらいいのかわからず、苦悶する毎日を送っていました。

とある日、一冊の本に出合いました。

「オレたちバブル入行組」という本です。
当時はこの本が、半沢直樹シリーズの原作だとわかりませんでした。

経済小説は読んだことのないジャンルでしたが、この本は目の前が白黒調だった私の風景に色を与えてくれた、そんな感じの本でした。

1作目を読み終える頃には、心がポッカポッカしていたのを今でも覚えています。続きが読みたいという単純な欲求ですが、久しぶりに行動的な感情が出ました。

半沢直樹シリーズでは仕事に対する熱い考えや思いを、目から活字を通して脳内を刺激してくれました。

私は仕事に対して考え、ひとつの決断に至りました。

「自由に働きたい」と。

そこからは色々と調べる毎日です。どういった仕事があるか、収入は見込めるのか、安定するのかなどなど。

行きついた結果は個人事業主としての生き方です。

この結果にたどり着いたときには希望で満ち溢れていました。自分で仕事のペースを調整して、売り上げはこのぐらい上げてなど、考えることでキラキラとした感情が芽生えるのです。

退院後は上司に今後のことを伝え、退職する意思を示しました。

入院前との生気ある変わりように上司も納得してくれて、退職に向けて新しい生活が始まります。

地元で活動するため、引越の段取り、事務所として使うテナントの契約、資機材の購入など新鮮でワクワクする毎日。退職準備と開業準備を並行的に進めていたので、とても忙しい期間でしたが充実していました。

たくさん迷惑はかけましたが、円満に退職することができ、16年間の自衛官としての終止符を打ちます。

現在は個人事業主としてさまざまな仕事をさせてもらっています。エアコンクリーニング、クロス張替え、トラックドライバー、Webライター、創作活動など。代わり映えする仕事なので、常に新鮮な気分で取り組めています。

転職するのに勇気は必要ですが、勇気を出さないでいたら私は自害していたかもしれません。

私であれば転職のきっかけは1冊の本との出会いでしたが、そのきっかけに巡り合えたのも苦悶していた地獄の日々があり、その環境を変えたいと願ったからだと思います。

すっかり体調も回復した今は、以前のような明るさを取り戻し、仕事に対して情熱を持って取り組めています。

個人事業主は面白い仕事です。自分の考えたことが仕事となり、収入となります。休みたいときに休んで、働きたいときに働く。自分ですべて計画管理するのは大変ですが、ストレスは皆無です。

ちなみに私は40代で、子どもは3人います。こんな歳になって転職してもなんとかなっています。

悩んでいる方は転職することに屈せず、気が向くままにやった方がいいですよ。

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