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人生の宝物

『快楽原則』
 人は快楽を求め、苦痛を避ける。
 by フロイト


僕は高卒です。

小さい頃から勉強が好きじゃありませんでした。ここでいう”勉強”とは学校の”勉強”のことです。

そのクセ物事を真面目に考えるところもあり、高校時代には「大学は勉強しに行くところなんだろ?だったら行きたくない」なんて言ったこともあります。

その頃の僕はいろいろ勘違いしていました。今ならわかります。

一つ、勉強は ” つまらないけどしなくちゃいけないもの ” じゃなくて、そもそも面白いもの。

二つ、多くの大学生にとって大学は勉強しに行くところじゃなくて、遊びに行くところ。

二つ目の悲しくも笑える現実はちょっと置いておいて、一つ目はとても重要なことだと思っています。


勉強が好きになれなかった僕は18歳から働き始めました。勉強が必要ない『手に職系のお仕事』です。しかしそこで感じたのは「勉強の必要性」でした。

職場では覚えることがたくさんあります。覚えることがなくなることはありません。一つ覚えて、失敗して、また一つ覚えて、自分のモノにしいていく。これを学習と呼ぶと思うのですが、これはまさに僕が嫌いだった勉強です。僕は気付きました。

「勉強って学生だけのものじゃない。大人になっても、職場でも、勉強は一生続けなきゃいけないものなんだ」と。

そこで考えてみたんです。なぜ自分が勉強に対して苦手意識を持っているのかを。答えは明白でした。

子供のころの僕にとって勉強はわからない そして 失敗するものでした。

例えば。数学の問題がわからない。
 ↓
わからないから興味を持てない。
 ↓
興味を持てないことを、わからないままやり続けようとするから苦痛になる。
 ↓
やがてテストがやってくる。
 ↓
恥ずかしい思いをしたくないので、苦痛を感じながらも勉強しようとする。
 ↓
わからないまま勉強をしていたので当然テストの点数は低い。
 ↓
勉強=苦痛と失敗の体験。


これじゃ勉強が好きになるわけがありません。快楽原則通り、僕は苦痛を避けようとしていただけです。


このまま大人として社会に飛び出したのだから、さあ大変です。

「ちょっと待て。大人になっても、仕事を始めても、ずっと勉強なのかよ…」

驚愕でした。

勉強からは逃げることはできない、一生… これが続く…

「そうなのかよ! ってか、僕の周りの大人たち! なんで教えてくれなかったんだよ!」

恨んだところで時間を戻すことはできず。

今自分のできることをするしかありません。

お金をもらってやる仕事です。ちゃんと大人として、勉強をしていくことにしました。

するとわかってきたのが。

あれ? 勉強って、わかると面白いな。

ゲームを攻略していくのと同じ、クイズ番組を見ているのと同じ、勉強に対してそういう面白さを感じるようになってきました。

「くぅ~、子供の時に気付きたかったー! 僕の周りの大人たち! なんで教えてくれなかったんだよ!」


この時僕が「勉強面白いな」と感じられたのは大人の勉強だったからかもしれません。大人の勉強は今必要なことを学んでいき、すぐに結果が出るから「楽しい」と思えるのかもしれません。子供は違います。

子供が言われるのはいつも
「あなたの将来のため、今は勉強しなくちゃいけないの」

子供が求められるのはいつも”将来”。
将来のために今嫌なモノを押し付けられる。

そもそも、子供であっても大人であっても「5年後の自分のため」に「今は苦痛を我慢しろ」と言われてやる気になる人います? じゃあ、あなたは今将来のために何をしてるの?と聞かれて答えられる大人います? 

大人にこう詰めると「私は今の自分で精いっぱいなの!」なんて答えが返ってきますが、子供だって同じです。子供だって、毎日学校に部活に友達関係に、自分のことで精いっぱいなんですよ。

なのに子供だけ「将来のために今は苦痛に耐えろ」なんて。そんなバカな話ないでしょう。

大人も子供も、ホントは楽しい事だけしていたいんです。

将来のために今はつまらないことをやれと言われても、これじゃ勉強が楽しくなるはずないですよね。


そんな僕が、子供の教育とどう向き合ったかというと。僕は息子に勉強を教えたことはありません。そもそも教えられるほどの知識はないですから。僕が伝えたのは 勉強は面白い ということだけです。

息子が勉強している横で、僕は息子の教科書を読みました。今の教科書って僕の時代とは違い、カラーでわかりやすくて本当に面白くできてます。

わからないところがあれば「これってどういうこと? わからないんだけど」と息子に聞くと教えてくれます。
そして僕は「へぇー、すげーな!そういうことなんだ。面白いね~、そうなるんだね」とちゃんとリアクションします。

勉強はわかれば面白い。
面白ければ楽しい、興味がわいてくる。
そしてそれが成功体験へとつながっていく。

なぜ勉強をしなくちゃいけないかなんて、そういう話じゃなくて。
そもそも勉強とは、面白く、楽しい
もの。

大切なのは第一歩目。

「わからない」を「わかる」にすることなのだと思います。

わかるようになれば、面白くなる、楽しくなる。

楽しくなれば、快楽原則が効いてきます。

楽しいことは自分からやりはじめる。フルオートです。楽しいことを毎日やるだけ。当然テストも良い点数で返ってきて成功体験も積み上げてくれます。

僕も一緒に勉強しました。その時々で資格試験だったり仕事関連の本を読んだしましたが、勉強は楽しいことですから。夏休みに「マック行って勉強しようか?」と誘い一緒に勉強したのは今でもいい思い出です。

勉強は大人になってもずっとするもの、そして勉強は楽しい。

大人が勉強を楽しむ姿を見せることがとても大切だと僕は思っています。


かつての僕がそうだったように、勉強はつらいもの、勉強は苦しいもの、勉強はつまらないもの、と勘違いしている大人が多いような気がします。そういう人は、仕事もつらく苦しくつまらないのかもしれません。

でも、仕事も勉強と同じで、デキれば楽しいはずです。勉強も仕事も本来は楽しくてエキサイティングなもののはずです。

なんで勉強しなくちゃいけないの?

息子にそう言われたとき

楽しいからだよ。ポケモンゲームと同じ。え?ひょっとしたら勉強面白くないと思ってるの?!」

と僕は答えました。そして

「だってさ、ポケモン全部覚えてるだろ? それも勉強なんだよ。勉強できてるじゃん。ポケモン覚えるの楽しいだろ? でも最初はゲームのルールとかわからないとつまらないもんな。それだけだよ」

と、なぜ今面白くないと感じているのかを整理してあげました。

第一歩目、わからないをわかるにする。デキないをデキるにする。

そうすれば勉強も仕事も面白い、楽しくなる。

あとは快楽原則に身を任せていればいい。


ただ、息子にとっての第一歩目を与えてくれたのは誰だったのだろうと思い返すと、それは僕ではなく、田村先生だったと思います。

田村先生は塾の先生です。

小学生の時にはテストで0点を取ってきたこともある息子でした。全く勉強には期待していなかったのですが、中学に入ると友達と一緒に塾に通い始めました。塾といってもどうせ友達と遊びに行きたいだけだろうと思っていたのですが、息子はそこで田村先生と出会います。

彼は息子の「わからない」を「わかる」にしてくれました。

「わからないことも、ちゃんとわかるようになる」それを教えてくれたのだと思います。

その後息子はスルッと志望高校に入り、早稲田に一発合格しました。(その後いろいろあって国立大学に行った話は以前のnoteをご覧ください)


結果主義、商業主義に走っているのが今の教育業だと思います。

学歴が金で買えるなら遠慮なく買うという親もいれば、合格実績を積み上げるために小手先のテクニックだけを詰め込もうとする先生もいます。

それは今の社会の構造上、ある程度仕方がないことだと思っています。この流れは加速するのかもしれません。

それでも僕は、教育の現場に田村先生のような人がいて欲しいなと、心から願っています。



勉強は楽しい。仕事は楽しい。

心からそう思えたら、それは人生の宝物なのだと、僕は思います。



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