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リアル半沢直樹・サラリーマンサバイバル記

半沢直樹、見ていらっしゃいますか? 僕も見てますが毎回胸が締め付けられる想いをしています。

僕にも上司に嫌われ、無理やり情報漏洩の罪を着せられ、北陸にある子会社の工場に飛ばされそうになった経験があるからです。

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登場人物は僕を含めて4人。ちなみに僕は堺雅人さんのようにかっこよくはありませんのであしからず。

有村部長・・・梅田次長のライバルだった有村。だが、一歩先に部長の座を手に入れ、次に狙うのは取締役。その前に梅田を手懐けておく必要がある。

梅田次長・・・立場上では有村の下になってしまったが、有村の部長昇進を納得はしていない。有村に対し、未だにライバル心を燃やしている。

若狭課長・・・課のトップ。ここで優秀な成績を残し出世の足掛かりとするつもりだろうが、上の二人に比べれば小者感は否めない。

砂男主任・・・現場のプレイングマネージャー。子供の頃の愛読書は『ブラック・ジャック』。正直さと正義感だけが武器。だが、その分「うまくやる」ことが苦手で、上司との衝突もしばしばある。


僕はこの三人の上司に、三人がかりで潰されそうになりました。


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梅田次長「なあ、砂男。有村のやり方どう思う?おかしいだろ?」

砂男「僕はよくわからないのですが」

梅田次長「アイツ、頭おかしいぞ。部下の女の子を愛人にしてるって知ってるか?好き嫌いで人事を決めやがるから、たまったもんじゃない。でもな、安心しろ。お前らは俺の部下だ。しっかり守ってやるからな」

砂男「そうですか」

僕の直属の上司は若狭課長だが、梅田次長から頭越しで次長室に呼び出されることも少なくはない。身勝手なタイミングで呼び出すことで、梅田次長は若狭課長と僕に主従関係を実感させているのだ。


支店に戻るとさっそく若狭課長が擦り寄ってきた。

若狭課長「梅田次長の話、どうだった?何か言われたか?」

砂男「いえ、特に。具体的な話はなかったです」

若狭課長「有村部長のこと、なんか言ってなかったか?」

やはり若狭課長は小者だ。どっちについたらいいのか迷っているのだろう。直属の上司ながら情けない。

砂男「いえ、有村部長の話はなかったです」

言えるわけがない。


仕事が終わる少し前、今度は有村部長から電話が入った。

有村部長「砂男、久しぶりだな。今、あの店で飲んでるんだ。仕事が終わったら顔出せよ」

実は有村部長とは彼が課長時代に一緒に働いたことがある。その頃から「俺が上に行ったらお前を引き上げてやるから」と出世をエサに部下を使っていた。

行きつけの店に着くと、有村部長の横には噂の女性が座っていた。部下に手を出したことを隠すつもりもないらしい。

有村部長「どうだ、最近は。梅田の下じゃ仕事がやりにくいってみんな言ってるそうじゃないか」

砂男「いえ、そんなことは」

有村部長「正直に言えよ。俺とお前の仲じゃないか。どのポストが欲しい?考えてもいいんだぞ」

告げ口と出世の話を併せて話す。「今ここでアンチ梅田を表明しろ。俺の派閥に入れてやる」そういう意味だ。

だが、派閥に入りたいわけじゃない。仕事は仕事として、会社のスローガンにもあるように「実力主義」でやりたいと思っている。

砂男「いえ、今の仕事に、やりにくい所はございません」

有村部長「そうか。なるほどな。わかった」

有村部長はその顔にハッキリと不満を表した。

その後、何度か意味のない言葉は交わしたが、しばらくすると「お前、もう帰っていいぞ」と言われ、僕は店を後にすることになった。

派閥入りのための面接だったのであろう。そして僕はそれを断った。有村部長はそう受け取っているだろう。


これでいい。

派閥なんて。

いじめの構造そのものだ。

いい大人たちが集まって、仲間を作るために、仲間外れを作る。

くだらない。小学生から進歩していない。


どちらかの派閥に入れと言われるなら、俺はどちらの派閥にも入らない。

上司に気に入られるのが俺の仕事じゃない。お客様に顔を向け、ちゃんと仕事をしていれば、いつか必ず報われるはずだ。

そう思っていた。


それが青臭い理想論だということに、その数週間後に気付かされるのだが。


+++

数週間後、いつもの店に有村部長に呼び出された。目的は想像できなかったが断ることもできなかった。

有村部長「遅かったな、砂男」

店に着き、驚いた。

その横にいたのは

梅田次長「おう、砂男。お疲れ様」

どういうことだ? 

あれほどお互いを憎んでいた二人が。

この二人はいったいここで何を…

梅田次長「砂男、まあ飲め。あと、ほら、有村部長にお注ぎしろ。すいません有村部長、教育がいきとどいてなくて」

有村部長「いやいや、梅田次長。砂男のこと、よろしく頼むな」

梅田次長「はい。あ、そういえば、このネクタイ。有村部長がつけてるの見てかっこいいなと思って。わたし、同じの買っちゃいました」

有村部長「そうか、そうか。似合ってるじゃないか。ハッハッハ」

梅田次長「ありがとうございます!」


これはいったい…

俺はいったい何を見せられているのだ。

梅田次長、有村部長の軍門に下ったのか?!




つづく


次回予告『敵の敵は味方!』

お楽しみに!


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実話です。ネクタイは本当に衝撃だったなー。いやー、ビックリした。大企業の大人達って、仕事もしないでこんな事ばかりやってるんですよ。

人間性と社会的立場(年収)は、反比例とまでは言いませんが比例しないのは事実です。


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