『左遷』リアル半沢直樹・サラリーマンサバイバル記 第四話
前回までのあらすじ----------------------
派閥入りを断った砂男のボーナスを半額にすることで力を見せつけた有村部長。有村部長への忖度として砂男をつぶそうとする梅田次長。そこへ砂男をおとしいれる材料を提供した男がいた・・・
【登場人物】
有村部長・・・梅田次長のライバルだった有村。だが、一歩先に部長の座を手に入れ、次に狙うのは取締役。その前に梅田を手懐けておく必要がある。
梅田次長・・・立場上では有村の下になってしまったが、有村の部長昇進を納得はしていない。有村に対し、未だにライバル心を燃やしている。
若狭課長・・・課のトップ。ここで優秀な成績を残し出世の足掛かりとするつもりだろうが、上の二人に比べれば小者感は否めない。
砂男主任・・・現場のプレイングマネージャー。子供の頃の愛読書は『ブラック・ジャック』。正直さと正義感だけが武器。だが、その分「うまくやる」ことが苦手で上司との衝突もしばしばある。
第四話『左遷』---------------------
砂男の元部下である田村がライバル会社に転職した。それを「砂男が知っていて黙っていた」「情報漏洩に加担した」と起きてもいない問題をデッチ上げ砂男を追い込もうとする梅田次長。
いったい、誰がそんな情報を梅田次長に吹き込んだのだ。
考えられるのは一人しかいない。
砂男「田村の転職先のことを梅田次長に話したのは、若狭課長、あなたですね?」
若狭課長「ああ、そのことか。あれはな、梅田次長も知ってたようでな。問いただされたから俺が答えただけだ」
嘘だ。梅田次長は末端社員のことなどさらさら興味はない。現に田村の顔すら知らないだろう。
有村部長、梅田次長が僕をつぶしたいと思っているのを知った若狭課長は、その仲間に入れてもらおうと、僕をつぶすネタを彼らに提供したのだ。
砂男「梅田次長は、有村部長に、この話を上げるつもりのようですが」
若狭課長「そうか。そうなると話が大きくなるかもな」
砂男「有村部長にまで話が上がれば、僕を処分せざるを得なくなると思います。誤認逮捕のようなみっともないことはできないでしょうから」
若狭課長「そうかもな」
砂男「ですが、若狭課長。僕はあなたに、田村がライバル会社に転職した事を、すぐに話しましたよね?」
若狭課長「そうだったっけ?」
砂男「はい。先月、課の打ち上げで焼き鳥屋に行きましたよね? その席で仕事の話になり『問題はないと思いますが一応耳に入れておきますね』と前置きをして。僕はあなたに、田村がライバル社に転職したことを話しています」
若狭課長「あー、あの時か」
砂男「僕はハッキリと覚えています。他の社員も知っていた可能性はありますが、少なくとも僕は、このことはあなたにだけしか話していません」
若狭課長「ん~、そうか。そんなような気もするが」
砂男「僕があなたに報告していたとすれば、隠ぺいではありません」
若狭課長「なるほど、それがお前の言い分か」
砂男「はい 」
若狭課長「でもな。居酒屋で酒飲みながらちょろっと話したことが、報告って言えるか?」
どこまで汚いんだ。
聞いていたことを認めながらも、シラを切り、部下をつぶす事を、自分が上にいく足掛かりにしようとしている。
こんな男の部下として俺は働いてきたのか。
こんな連中しかこの会社にはいないのか。
くだらない。
俺が今まで情熱を燃やしてきた会社は、こんな連中の集まりなのか。
砂男「もし、これが情報漏洩であり、僕がそれに加担していたとなると。たぶん僕は左遷になるでしょうね」
若狭課長「どうだろうな。そうかもな」
子会社の工場が北陸にある。
これまでも使えなくなった社員はそこに送られていた。サラリーマンとしての出世の道は、そこで断たれたことになる。
砂男「僕が黙って北陸に行けば、それでいいってことですか」
ここまできても、
ほんの少しだけ、
若狭課長の良心を信じたかった。
だが・・・
若狭課長「そうだな。悪いがそうしてくれるか?」
つづく
次回予告『半返しだ!』
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実話です。
朝から暗いお話で申し訳ございませんが、これがリアルです。
半沢直樹を見て「あんな上司の下で働きたい」と思う若者諸君。残念です。あんな人いません。実力を上げるのはけっこう、でもちゃんと上司には笑顔でお酌して、適度にゴマすって回りましょう。
まだ続きます! お楽しみに!
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