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『半返しだ!』リアル半沢直樹・サラリーマンサバイバル記 第五話

半沢直樹シリーズには上戸彩さん演ずる『半沢花』という人物が登場しています。ドロドロした男達の中で、純粋に輝く一輪の花。良い嫁さんですよね~。

さて、僕のこのシリーズも本日は女性が登場いたします。僕の当時の彼女です。

前回までのあらすじ----------------------

自分の出世のために嫌いな上司(有村部長)と手を結んだ梅田次長だが、忖度として有村部長が嫌っている砂男をつぶそうとする。そこへ「私もお仲間に入れてくださいよ」と砂男をおとしいれる材料を持って行った若狭課長。
『元部下がライバル会社へ転職するのを知っていたのに、砂男は黙っていた』それが情報漏洩の罪に当たると左遷をされそうになるのだが・・・

【登場人物】
有村部長・・・梅田次長のライバルだった有村。だが、一歩先に部長の座を手に入れ、次に狙うのは取締役。その前に梅田を手懐けておく必要がある。

梅田次長・・・立場上では有村の下になってしまったが、有村の部長昇進を納得はしていない。有村に対し、未だにライバル心を燃やしている。

若狭課長・・・課のトップ。ここで優秀な成績を残し出世の足掛かりとするつもりだろうが、上の二人に比べれば小者感は否めない。

砂男主任・・・現場のプレイングマネージャー。子供の頃の愛読書は『ブラック・ジャック』。正直さと正義感だけが武器。だが、その分「うまくやる」ことが苦手で上司との衝突もしばしばある。

彼女(本日のスペシャルゲスト)・・・当時の砂男の彼女



第五話『半返しだ!』---------------------


砂男「僕が黙って北陸に行けば、それでいいってことですか」

左遷を覚悟した僕が言ったその言葉に直属の上司である若狭課長は涼しげな顔でこう答えた。

若狭課長「そうだな。悪いがそうしてくれるか?」

お前が死んでくれれば全てが丸く収まるんだから黙って死んでくれ、そう言わんばかりだった。

四面楚歌。

会社に僕の味方になってくれる人は誰一人いない。

作り話も真実に作り替えられる。それが組織の力だ。

そう感じた僕は、もう抵抗する気すら起きなくなっていた。



数日後、この問題で聴聞会が開催されることが決定した。

出席者は、有村部長、梅田次長、若狭課長、そして僕の四人。

ここで聴きとられたことが記録され、正式に処分が決定されることになるのだろう。



聴聞会の前日、僕は彼女に一応現状を話しておくことにした。

砂男「あのな、俺、北陸に飛ばされるかもしれない」

彼女「え?なんで?」

砂男「元部下がライバル会社に転職してね。そんなことはよくあることなんだけど、それを俺が知ってて黙ってたって言われて。情報漏洩に加担した罪をでっちあげられたんだ」

彼女「実際に情報漏洩はしてるの?」

砂男「してない」

彼女「あなたは、彼が転職したのを知ってて、故意に黙ってたの?」

砂男「いや、若狭課長には報告していた」

彼女「じゃあ、なんであなたがそんな事になるの?何にも悪い事なんてしてないじゃない」

砂男「それが組織なんだよ。三人の悪人が笑うために一人の善人を殺す。よくある話だ」

彼女「それで北陸に行くの?」

砂男「それが組織の総意だ。会社に味方なんて誰もいない。俺が引けばそれで済む。もうどうでもいいよ」

彼女「そんなのおかしいよ」

砂男「君には会社がわからないんだよ。自分だけが大切なヤツらが、出世のために大嫌いなヤツの靴でも平気でなめる。そうかと思えば、自分が安心するために群れたがる。さらに集団で仮想敵を作り結束を強くする。それが組織なんだよ」

彼女「そんなのでいいの?」

砂男「いいも悪いもない。俺には組織を変える力もない」

彼女「それで?左遷を言い渡されたら、黙って北陸に行くの?何も言わずに?」

砂男「俺はもう集団から弾き飛ばされている。何を言ったところで、状況は何も変わらない。黙って北陸に行くか… まあ、もう会社を辞めちまってもいいけどな… 」

彼女「何言ってるのよ。私はそんなの納得できない!何にも悪い事してないあなたがそんな目にあって。しかもそれを受け入れようとしてるなんて。そんなの男らしくもなんともないよ!」

砂男「いや、そうだけど… 」

彼女「辞める覚悟までできてるんでしょ?だったら、最後にそのバカ部長に言ってやりなさいよ!あのアホ課長には報告していた、あのクズ課長は全部知ってた!って!」



ここの所、会社の中だけのことだけを考えて、会社の中だけが自分の世界だと思い込んでいた。

でも、そうじゃなかった。

僕の世界は、ここにもある。

僕の味方が、ここにはいた。


そうだ。

このままじゃダメだ。

最後になるかもしれない。

だが、ちゃんと事実を事実として言おう。



翌日。

聴聞会の数時間前。

砂男「若狭課長。今日の聴聞会で、僕はあなたに報告していたことを、有村部長、梅田次長に話します。僕はハッキリと覚えています。その時のことを全部彼らに話します。いいですね?」

宣戦布告だ。

若狭課長「そうか。わかった」

僕の確固たる意志は伝わったはずだ。



泣き寝入りなんて、俺のガラじゃない。

言ったところで何も変わらないかもしれない。

だがせめて、

半返しだ!




つづく

次回予告『聴聞会』

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実話です。
毎週日曜になると『ああ、リアル半沢シリーズ書かなきゃな』とちょっと気が重くなってる自分を感じていましたw  でも、今日はちょっと明るい話でよかったですよね?

まだ続きます! お楽しみに!

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