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頑丈な主人は、弱虫さん。

主人は、もともと身体が強いのか、病気とは無縁の人でした。
私は、身体が弱くて、主人に「伊佐子は、病気の総合商社だ!」と言われるくらい、いつも主人に介抱されてました。
一緒に出かけても、突然具合が悪くなるので、出かけさきの医務室?を全部制覇したんじゃないか?って言われるくらい。
そこから救急車に乗って入院ってパターン。
具合が悪くなって医務室?で寝てる私を、写真におさめる主人。(慣れってコワい)


そんな主人も、年に一度くらいは、風邪をひくことがありました。
熱が出ても、37度ちょい。
一緒になって、はじめて主人が37度の熱を出したときは、もう大変な騒ぎでした。
「37度もある〜!伊佐子〜死ぬ〜!」
大変だ!どうしよう。
私用に常備してある、アイスノン2個、氷枕。
アイスノンで大丈夫だと思うんだけど、氷枕を作ってタオルで巻いて、主人の頭の下に置こうとしたら、「氷枕って、ゴツゴツして痛いんだね」と、しんどそうだけど嬉しそう。


おでこに、冷たいタオルをのせてあげると、「えぇ?いいよ。そこまでしなくても大丈夫だよ」と言いながらも嬉しそう。


大根をスライスして、はちみつ入れて、大根シロップを作る。
ネギたっぷりのスープを作る。
お粥を作る。


「はい祐ちゃん。大根シロップ飲んで」と、スプーンで飲ませてあげる。
「スープ飲める?ネギスープは、風邪に効くから飲んで」と、スプーンで飲ませる。

「風邪ひいたら、こんなことしてもらえるんだ〜」

と、それはそれは嬉しそうに言った主人。

でも、死ぬ〜!と、ヒィヒィ言いながら寝てしまった主人が心配なので、近所のクリニックに電話をかけて往診にきてもらったんです。


お医者さんがきて、「天野さん、聞こえますか?」と声をかけられ、目をさました主人は、目をクリクリさせて何事?って顔をしていました。
熱をはかったら、37度弱。
お医者さんが主人に「お休みだと思って、たまには、ゆっくり寝てくださいね」言い、玄関さきで私に「大丈夫ですよ」と、笑顔で帰って行きました。

少し安心する私。


半日経ったころ、「大根シロップ、もういい。ネギスープも、もういいや」と言うんです。
「何が食べたいの?」と聞くと……

「うな重が食べたい。」

はい???
あなた、風邪ひいて熱が37度でて、死ぬ〜って言ってるんだよね?
はい??どういうこと??

と、こう思いますよね(笑)。

「じゃあ、東横のれん街に行って、うな重買ってくるよ。他に何が食べたい?」

「うな重のいいやつ買ってきてね。あとは、モロゾフのプリンと、舟和のあんこ玉買ってきてくれる?」

今にも死にそうな声で、そういう主人。
私は、心の中で、食べれるってことは大丈夫だなって思いました。

東横のれん街にリクエストされたものを買いにいき、それを完食する主人。
でも、ヒィヒィ言ってるんです。

コイツ、味しめたな(心の声)

心配しつつ、私も夜一緒に寝ちゃったんです。
夜中にふと目が覚めると、横に寝てるはずの主人がいない。


あれ?トイレに行ったのかなあ?と、身体を起こすと、寝室の前にある主人のオーディオルームで、ゲームやってる主人の姿。

「こらあーーーーっ!」

やべぇ見つかった!!と、ごまかし笑いする主人。

ゲーム用のクッションがあったんです。
どんな姿勢でもできるクッション。
もう、あの光景は忘れられないなあ(笑)


ゲーム好きで有名な主人ですが、本当にゲーマーでした。


ファイヤーエンブレムが一番好きなゲームで、攻略本も何冊も買い、仲間を一人も死なせず確実に進めるので、難しいんです。


ファミリーコンピュータ、スーパーファミコン、プレステ、ゲームキューブ、DS、Wii。
新しいゲーム機が出るたび、並んでまで買う主人。
Nintendo Switch、欲しかっただろうなあ。

風邪に、味をしめた主人は、私にはゲームやってる姿見られたので、ヒィヒィ死にそうな声はやめて元気に話してましたが、会社に電話するときは、高熱でウンウンうなってヒィヒィ死にそうな声でしゃべるんです。
役者め。
食べたいものリクエストは、カツ丼、焼肉弁当、カレー。

もう、オモシロくなってしまって、私は娘に、元気なんだけど人と電話でしゃべるときは、死にそうな声を出すんだよと伝えたんです。

娘が主人に電話してきて、「風邪、大丈夫?」と、主人に聞くと、かすれ声で「うん。熱がでちゃって死にそうなんだよ〜。でも、ママが看病してくれてるから大丈夫」。

電話をかわると、娘は大爆笑!

主人は、1933年(昭和8年)生まれなので、食べなきゃ治らないという考えなんですね。

高熱が出てウンウンうなってる私にも、「焼肉食べなさい。栄養つけなさい。」と、食べなきゃ治らない説を言われても、無理なものは無理なんだよなあ。

カレーは、さっぱりした食べもの。

「今日は、さっぱりしたものが食べたいなあ」と、言う主人に、
「さっぱりしたものって、何が食べたいの?」と聞いたら、カレーと答えた主人。

ええーーーーーーーーーっ!!!
カレーは、こってりじゃないの?
でも、考えによったら、ウコンとか身体にいいものが入ってるので、さっぱりなのかなあ?

誰にでもある、よくわからない好き嫌い食べものルール。

主人は、もちろん、あんこはこしあん。
カレーは、インドカレー。でも、グリーンカレーだけは認める。
チョコレートは、パリッとしてなきゃ食べない。
生チョコなどチョコじゃない。
魚は、煮るもんじゃない。焼きか刺身。
マーガリンは、バターの代用品。そんなの食えねえ。
シュガーレスって、サッカリンだろ?砂糖の代用品なんか認めない。
肉はサーロイン。脂がない肉なんて食えるか!
サーモンは嫌い。鮭は、塩焼きかハラスのみ。
ハーシーのチョコアイスは食べるけど、パルムは食べない。
その日に作った料理の残りは、次の日絶対食べない。

戦争中、戦後、食べものに飢えていたので、代用品として作られたものは口にしなかったです。

煮物とか次の日、味が染み込んで美味しくなると言ってもダメ。
戦中、戦後、同じ食べものを食べさせられた体験。
当時、主人のお母さんに、「こんなもの食えるか!」と困らせたこと。
祐ぼう、祐ぼうと末っ子の主人のことを大事に甘やかしてくれたお母さんは、主人のために、わざわざ違う料理を作ってくれたそうです。

65歳すぎたら、毎日の食事を「最後の晩餐」だと思って食べるようにしたこと。

美味しいものを食べるんだ!という思いは、揺るがなかったです。


どうやら、主人は私と出会ったとき、家でご飯を作るような人じゃないと思ってたらしい(笑)。

最後の晩餐とまではいいませんが、主人の大好物ばかり作ってたなあ。

私たち夫婦のバカップルぶりを知っているのは、私たちの家にきて、一緒に仕事をし、一緒に遊び、一緒にご飯を食べた数人しか知りません。
外部の人でも、本当に親しい人しか知らないんです。

外の天野祐吉の顔しか知らない人が、書いた文章をよく目にします。

なんでも聞いてた私には、なんだかなあとガッカリすることが多いです。

頭の中で、その人のいいように主人のことが書かれてるように思います。

ある出来事に人間は理由をつけたがるような気がします。
理由付けしたほうが、楽だからなのかも知れません。

理由ねえ。

まっ、「オレもバカだけど、あんたもバカだねえ」と、笑い飛ばしましょうかね、祐ちゃん。







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