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バーフバリからRRR、そしてネクストステージへ

ドゥーユーノウ デシ・ナーチ?」(ウィンク☆)

古代神話の時代、バーフバリ王が統一したインドという国は、近代において残虐極悪非道なイングリッシュとかいう下衆な輩に占領支配されていた。そこに再び現れる救世主。しかも2人。そしてマハーバーラタ叙事詩に新たな伝説が刻まれる…。「ラーマヤナではインドラの矢とも伝えられているがね」(どこのインドの話なんだか)

懐かしき微笑ましきイノセンス

見ましたよRRR。3時間。まあバーフバリは前後編で6時間でしたし余裕です。そして今作も期待を裏切らないどころか上回る超絶ボリウッドぶりでした。なんなんですかね、インド映画のこのパワー。ライズ(立ち上がれ)ロア(吠えろ)リヴォルト(反乱だ)ですよ。クドい、暑苦しい、一挙手一投足が必要以上にドラマチック、整合性とかは二の次のトンデモ展開満載。そしてデシ・歌ダンス、こんなんアガるに決まってんじゃん。もう味付け濃過ぎてウェッてなります。だがそれがいい。もうほんと大好きカントリー音楽の時と同じく、理性すっ飛ばして脳内の動物的部分をガンガン揺さぶられます。変なドラッグ的効果あります。

ダブル主人公のビームとラーマ、一応モデルがいるみたいですね。史実ではこの2人、生きてた時代も場所も若干違ってて出会っていませんが、どちらもイギリス統治に対して反乱を起こし、その際に命を落としたレジェンズです。が、RRRではこの聖人2人が出会い、マブダチブラザーになり、もうイチャつきまくります。このむっさいモジャモジャ筋肉親父2人が、笑い歌い踊り手を取り肩を抱き肩車し。2人がアツアツ過ぎて、ボリウッドにしては珍しくヒロインが付け入る隙もありません。これはインド式LGBTポリコレか何かなのか。リアクション芸みたいな異常なまでのオーバーアクションで、老若男女誰でも理解できる大芝居。観客をバカにしてんのかって程すっきり単純勧善懲悪。大きな捻りもなくご都合的王道的に進むヒンドゥー神話のようなストーリー。最高過ぎます。こんなん絶対誰でも主人公に惚れるわ

インド映画見てると、なんだか微笑ましいというか、日本の黒澤映画時代とかを思ってしまいます。三船敏郎大活躍っつーか。僕の祖父も暴れん坊将軍大好きでした。熱血青春「太陽に吠えろ!」(キメ顔アップ)なんつってね。アメリカ映画ならダーティハリーとかランボー?香港映画ならブルースリーとかジャッキー、韓国映画ならシュリとかの頃?中国映画なら抗日ドラマとかの頃かな。人生がシンプルで、悩みも少なくイノセントだった時代のわかりやすい過剰演出エモエモマッチョヒーロー。そんな誰もが通った道を、インドも駆け上がってる感。しかも最新の映像技術で。ヒット映画は世相を反映するので、今のインド国民はそのステージにいるって事なんだと思います。

社会システム&ステージ

それにしても、古今東西なんで人類はこんなにもヒーローが好きなのか。

それは僕らが原始生活してた頃の記憶。ボスに率いられた100人くらいの群れで何万年も生きてきました。まさにバーフバリ的世界。それがここ数千年で突如生活様式を変え始め、直近300年に至っては、工業化、近代化、電子化、情報化と凄まじい勢いで変化し爆発的大繁殖を始めました。ところが僕らの体の基本デザインは今現在に至ってもほぼ変化していません。ソフトウェアだけが異次元進化、でもハードウェア的にはほぼ原始生活時代のままという事です。あらゆる現代病は、この凄まじい環境変化とハードウェアの適応障害から生じると言われています。

100人村だった頃の記憶から、人間にはハードウェア的に「強くて有能なボス」を求める本能があって、神様とか完全無欠のスーパーマンがやってきて全部解決してくれる事を夢見がちです。だからバーフバリや水戸黄門が本能的に気持ちいい訳です。しかし100人村ならまだしも、国家規模でそんなものはあり得ない事は歴史が証明していて、だからこそシステムで穴を克服しようと四苦八苦しているのです。

こないだのユートピアのエントリーでも書きましたが、社会の規模や生熟度合いによって権力分散が起き、社会システムも専制君主主義→封建主義→資本主義→民主主義→社会主義という風にステージシフトしていきます。まあシムシティの都市レベルアップみたいなもんですね。権力分散はシステム運営の効率化や、プーチンみたいな暴走独裁者のリスクを回避する知恵でもあります。ちなみに自称社会主義の独裁国家が「指導者」とか「リーダー」とか言ってるのは実質的にはまだ君主制や封建制ステージにいるという事です。まあ日本の自民党政権も資本民主ごっこしてる封建制みたいなもんですけど。現在の僕らのステージは「資本主義の限界」が見え始め、本質的な民主主義へのシフトに挑戦中の段階ですが、未だ人類は未熟過ぎて民主主義を成し遂げていません。資本ステージでは数字が正義の合理功利主義ですが、民主ステージにおいては国民主権なので政府は「公僕」という事になります。社会主義ステージに至れば、社会システムそのものが国民幸福をマネージメントするようになります。ベーシックインカム未来SF。

ステージシフトはコミュニティや企業内でも起こりますが、実は人間の脳の進化にも似ていて、例えば君主ステージは脳幹的直轄生命維持、封建ステージは小脳の感情的生命活動、資本ステージは大脳の合理的生命活動みたいに見えます。民主ステージはそれらの自己統合、社会ステージに至る頃にはついに私利私欲を克服するのでしょうか。インド映画は封建ステージの情緒的ヒーロー感を色濃く残しつつ「これから資本ステージ突入だぜ!」ていう勢いが凄いです。リソースの選択と集中による爆発的成長期。瞬間火力は凄いが鎮火も早い、かつて欧米も東亜も通った道。いずれバブって格差って崩壊する道です。

日本の次ステージを考える

さて、崩壊して久しい日本ですよ。最近はどこを見ても「日本の老化と停滞衰退」の話ばっかしてますね。いい加減聞き飽きてうんざりなので、ちょっと違う切り口で考えてみました。日本が資本ステージ末期を乗り越えて次のステージに行くにはどうすればいいのか。解決方なんて実は単純明快なんですよ。セックスすればいいのです!ってもちろん「みんなでヤリまくって少子化解消」とかいう話ではなく、「外部DNAを取り込んで次世代日本を生み出すしかない」という事です。国体を維持できなくなるほど老化する前に、セックスして次の世代を生み出す必要があります。変化していく環境に応じて自らも変化適応する、それが生命活動の全てです。無性生殖では複製しかできないので、変化するために交配してDNA多様性を担保する訳です。

歴史上日本が単独で変化できた試しなんてありません。元々極東でガラパゴっててDNA濃いめなのに、自分の中だけでどうにかできる訳がない。日本ちゃんの恋愛歴を辿れば、若い頃は中国朝鮮のDNAを取り込んで変化してきました。その後西欧のDNAを取り込んで近代化し、アメリカにレイプされて経済大国になりました。日本が変化する時は、大概まず外部DNAを取り込んでいます。別に龍馬とか博文とかがRRR風にリヴォルトした訳ではないのです。そして、その都度日本はそれ以前とはまったく異なる文化形態に変化します。XY染色体の融合で新世代個体に生まれ変わる生殖システムと同じです。その際、役目を終えた古い細胞は脱皮等で脱ぎ捨てられるかもしれませんが、日本というDNAが失われる訳ではありません。次世代に受け継がれ、ミックスの新世代日本になるだけです。元々が引き篭もり陰キャ気味の日本は、気を抜くとすぐ自閉鎖国ムードになります。そろそろアメリカと円満離婚して、ステキな新彼を見つけてセックスする時です。

じゃあ今後日本は誰とセックスすべきなのか。テクノロジーの激変と格差化で競争社会も頭打ちになって、サステナビリティ〜とか言われ出した昨今、元彼達も総じてパッとせず、得られるものもあまりなさそう。そんな中、新彼候補でよく言われがちなのが北欧とかでしょうか。やたらがっついてるアメリカくんは資本ステージの彼氏としては最高でしたが、本来日本ちゃんはパリピタイプではないのです。一方、北欧はちょっと落ち着いていて、ミニマルなバランス感覚がありそうです。なんか天然不思議ちゃん感もあるので、オタクな日本との相性も悪くはないかも。エストニアとかウクライナ、グルジア辺りまで含めたデジタル社会福祉新興国モデルが、新世代日本を覚醒させるDNAを持ってるような気がしなくもない。戦後復興支援とかで擦り寄りつつ、あの辺にいずれ起こる上昇気流に上手く便乗すべし。まあとにかく、日本国内を見てても時間の無駄な事だけは確かです。ガイジンとセックスして種をもらえ。

世界のステージの流動と未来

10年以上ロンドンに住んでると、世界経済の変化によってロンドンに来る移民も変化します。バブった成金か職探しの出稼ぎが流入してくるのです。これまでイタリア、スペイン、ギリシャ、ポーランド、ベトナムとかの大流入を見ました。でもブレグジットで難しくなりましたね。成金組は日本から韓国になり、それも下火で今はもっぱら中露です。まあ露はもうすぐいなくなると思うけど。これまでイギリスで中国人と言えば大抵香港人でしたが、今やそれもなくなってしまいました。現在は中流以上に昇格した本土中国人が押し寄せています。彼らの話を聞いてると、経済成長のイケイケ感と共に、能力主義自己責任論を唱える人が多い印象。うわーなんかデジャブすごいわー。バブるとみんな同じ発想になるのな。ていうか共産主義国でそれはOKなのか。まあどうせそんなの長続きしないし、すぐ「親ガチャ」とか言い出すよと思ったら、そういやもう既に「寝そべり族」とかいるんでしたっけ。日本の戦後70年の栄枯衰退を、3倍速くらいで巻き上げてますね。イギリスには元々インド人も多いですけど、数年後には中国人口を抜いて中流化した新世代の本土インド人が押し寄せて来たりするのかな。

先進国と言われる国々は、総じて老化や資本主義の限界に悩まされています。猛スピードで追い上げてきた新興国ですら早くもこの先進国病に突入しつつあります。あんなに楽しそうに踊ってるインド人も、じきに現代病で鬱とかになりだすんですかね。「きっとうまくいく」では受験競争鬱自殺とかありましたよね。バーフバリのいないこの世界で、どの国がどんな突破口を見つけ出し、新たなステージへ進んで行くんでしょうか。

バーフバリからRRRへ、そして次は近未来インドSFとか超見たいです。


xxx


追記:
タイトル絵をTwitterに上げたら即効プチバズしました。反応したのはほぼインド人w 早速インドパワー実証や。「俺たちのRRRがついに日本上陸だ!アニメ爆撃来るぞー」みたいな反応でした。バズりたい絵師さん狙い目かも。主演のNTR()と監督のSSRってガチの国民的大スターみたいで、エンディングにも監督本人出ちゃってるし。プロモ世界行脚とかやってるみたいしだし、現地ではオスカー推し活で盛り上がってるみたい。一時の韓国っぽいムーブでデジャブ再び。ほんとみんな同じ展開すんのな。RRRはオスカー向き作品ではないような気はするが、インドで受賞祭りとかそれはそれで見てみたい。





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