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小説|恋の音 1話 「君の音」
夢をみた。君と出会ったあの日のこと。一緒に笑って、怒った日のこと。君に、恋をしたあの日のこと。
キーンコーンカーンコーン
「起立、例。」
「ありがと〜ございました。」
だらだらの挨拶、いつもの日常。隣を見るとお喋りしながら友達と笑いあってる君がいる。いつかは私と話していても、そんな表情見せてほしいな。
「みどり〜、帰ろ!」
教室の後ろのドアから声がした。この声は、ゆかちゃんだ!隣のクラスからわざわざ来てくれたんだ!
佐々木紫、通称「ゆかちゃん」。小学校からの親友。中学校に上がっっても一緒のクラスだと思っていたのに入学式に配られたクラス分け表を見て絶望したのを昨日のことのように覚えてる。
「うん、帰ろっか!あ、ところでさ〜、中学校にあがって半年経った訳だし、ゆかちゃん、好きな人いる?」
「え!と、と、唐突に、な、な、なに?」
ゆかちゃんは何故か少し動揺している。あれ、もしかして好きな人いるのかな?
「そ、そう言う、みどりはどうなのよ?いるんじゃないの?」
ゆかちゃんがっちょっと意地悪そうな顔をして聞く。
「いや、いない。」
「は〜?人に聞いといていないのかい!」
私にだって初恋が来ればいいのに!ゆかちゃんはいいよね〜、めっちゃ美人でただから中学校進学してから今までにもう三人ぐらいに告白されたって。一度でいいから私も、恋してみたいな〜。
二人で雑談しながら昇降口へ行くと何か違和感を感じた。
あれ?私、宿題入れたファイル、カバンに入れたっけ?
焦って鞄の中を確認してみたが、入っているのは教科書数冊だけ。いつもならゆかちゃんに待っててもらって忘れ物を取りに行くが、今日は習い事があるから早く帰らなきゃいけないみたいだからしょうがなく先に帰ってもらうことにした。
一人で放課後の学校の中を歩くのはなんだか不気味で寂しい。トボトボと教室まで行き机の中を覗いた。
「あれ?」
誰もいない教室てぼそっとつぶやいた。ファイルが、ない。
どこにやったけ?
少しパニック気味になったが六時間目の音楽で、音楽室にファイルを持って行ったのを思い出し取りに行くことにした。
普段、この時間は吹奏楽部が練習をしている時間。でも今日はコンクール練習のために体育館にいるみたい。
とりあえず、音楽室まで行ってみて鍵がかかってたら職員室に行って開けてもらうか。
脳内で計画を立てていると、ピアノの音が聞こえた。とっても心地よい音でいつまででも聞いていたい。そう思った。
音楽室のドアを押すと、扉が開いた。開くのと同時にピアノの音が止まった。考えてみれば吹奏楽部の活動場所は体育館なはず。ここでピアノの音が聞こえるのはおかしい。
も、もしかして、お化け!?
心臓の音が聞こえそう。勇気を出して一歩、音楽室に足歩ふみ入れた。周りを見ても誰もいな……
「わ〜!?」
目の前に人が絵が見えた私は驚いて声を出した。も、もしかして音楽家の肖像画から音楽画の一人が出てきたの?それても、誰も居ない音楽室で音楽家たちの幽霊がバーティーを開いてたとか!?
怖くてしゃがみ込んでいる私の方を誰かが触った。
「きゃ〜!私を呪わないで〜!助けて神様〜!」
怖くて体に力が入らない。どうしよう!
「ハハハ、なんだ彩葉か。こっちこそ幽霊が入ってきたのかと思ったよ。」
あれ、この声どこかで聞き覚えが……
そっと顔を上げるとそこには私こ片想いしている石黒竜二君がいた。
「あ、竜二くんか〜。びっくりした!お化けが出たかと思ったよ。」
「ごめんって。でもお前、面白かったぞ。『のろわないで〜』って。」
竜二くんが悪戯げな笑顔で微笑む。
「それよりどうしたの?放課後に音楽室来るなんて。吹部じゃないだろ。」
不思議そうに聞いてきた。
「ちょっと忘れ物しちゃって。てゆうか、竜二くんだって吹部じゃないでしょ。なんでここに?」
私か聞くと、竜二くんは一旦私から目を逸らしまたこっちを見た。
「守ってよ、秘密。」
真剣そうな顔でこっちを見てきた。なんだかドキドキする。
「うん。絶対に守る。」
「実は俺、……」
ガシャん!
ドアが激しく開く音がした。
「ちょっとあんたたち!音楽室に入る許可、他の先生からもらったの?ここに入っていいのは音楽の先生の私だけなはずよ!」
急に入ってきた先生によって教えて貰うはずだった竜二くんの秘密を聞きそびれた。
「全く、石黒さんはともかく、彩葉さんはもっと真面目な生徒だと思ってましたわ!本当に何をかんが……」
「先生、ごめん!でも、彩葉は忘れ物取りに来ただけだって。だから、彩葉には怒らないで。」
竜二くんが庇ってくれたおかげで私は怒られずに済んだ。音楽の先生にちょこっとだけ注意された後、音楽室を追い出された。走って昇降口まで降りてそのまま帰った。
あっ、忘れた。怒られそうになった時庇ってくれた竜二くんに、「ありがとう。」って言うの、忘れてた!
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