夫婦喧嘩を見た子供の思考を考察する①【“心”の芽生えと発達について】

夫婦喧嘩を見た子供がどの様に考えるのかを発達心理学の観点から考察していきたいと思います。

考察するにあたって、まず前提として、子どもの『心』の捉え方について書いていきます。

子どもが『自分の心』を理解する過程

新生児や乳児が親と見つめ合い、笑ったり怒ったりする光景は珍しいものではありません。
赤ちゃんの表情豊かな反応は、実は感情表現ではなく、目に見える光景を模倣して笑ったり泣いたりしているのです。
赤ちゃんが、私たち大人の様に感情豊かになるまでにはいくつもの段階を経る必要があります。

自分が興味を持ったものに触れたり、遊びを通じて徐々に感情が芽生えていきます。
様々なものを認識し、自分の認識する世界を広げていきます(象徴機能)


また、保護者などの周囲の人間の反応を見て、自分の安全を確かめたり、モノへの理解を深めていきます(社会的参照)

2〜3歳頃なると、第一次反抗期が訪れます。
保護者の指示に反抗することは、自分の意思がないとできません。
自分がやりたい事、やりたくない事。
自分が好きなもの、嫌いなもの。
それらを意識的に認識し、主張するのが反抗期です。
反抗期は「自我の芽生え」とも言われています。
この頃になって、“自分の“心が生まれると考えられています。

子どもが『他者の心』を理解する過程

自分以外の存在にも心があり、人の言動には心が関連していることを理解することを、『心の理論』と呼びます。
心の理論についても、自分の心を理解するのと同様に幾つもの過程を経て徐々に獲得してきます。

ピアジェが提唱する発達段階の一つに、『前操作期』があります。
この時期は2歳〜7歳までが該当すると言われています。

この段階では、相手の立場になって物事を想像することが難しく、これを『自己中心性』と呼びます。

私が体験したエピソードを例に説明します。

私が飲食店で働いていた頃、よくお店に来ていた男の子が、「宝物見せてあげる!」と言って、私に手のひらサイズの箱を渡してくれました。

箱を開けると、そこには大量のセミがひしめき合っていました。
箱を開けた衝撃でセミ達が一斉に暴れ出し、大音量の鳴き声と羽音が響きました。

私は必死に叫び声を上げるのを堪えながら、笑顔で「わあ、すごいたくさん獲ったね!ありがとう!」と喉から搾り出しました。

この行為に私を恐怖の底に突き落とす意図など全くありません。
自分が楽しいと感じるのだから、相手も楽しいと感じるに違いないという、自己中心性の思考から起きたことなのです。

相手の心を理解するには、まず、自分の心と相手の心は別のものであるという認識が必要となります。
この感覚は、友達や家族など、周囲の人と関わりの中で養われていきます。

その上で、幾つもの経験や脳の発達によって論理的思考を獲得することでようやく、相手の気持ちを推察することが可能になります(脱自己中心性)。

ピアジェはこの時期はおおよそ7歳〜11歳としており、この時期の発達段階を『具体的操作期』と呼んでいます。

通常の過程を理解して、私達が分かる事とは

以上が通常の心の理解についての発達過程のまとめになります。

これらを理解することで、大人と子供とでは、心の概念が異なることが分かると思います。

大人になって両親の夫婦喧嘩を見た反応と、子供の頃に夫婦喧嘩を見るのとでは、感じ方や捉え方が異なることもお分かりいただけると思います。

次回の記事では、子供の頃に私がどう捉えていたのかを心理学を用いて考察していきたいと思います。

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