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〈intoxicate 150 特別版〉TOWA TEI『LP(エルピー)』ロングレヴュー

最新号のintoxicate150より、本誌およびMikikiには収まりきらないTOWA TEI 『LP(エルピー)』レヴュー記事を、noteにて特別公開いたします!textは青野賢一さん。

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〈CD & LP〉
LP(エルピー)

TOWA TEI
[コロムビア COCB-54323(CD)COJA-9408(LP)] 3/3発売

傑作マインド・ダンスミュージック
text:青野賢一

 2019年、TOWA TEIのソロ活動25周年にデビューアルバム『Future Listening!』がアナログ重量盤2枚組としてリイシューされた際、「intoxicate/Mikiki」に寄せた私のテキストのタイトルは「次の一歩に期待が膨らむ、TOWA TEIの25周年」だったのだが、このたびリリースされるアルバム『LP』は、まさにそうした期待に応えてくれる一枚だ。


 一聴して思い浮かんだのは、原点回帰という言葉だった。『LP』は、クラブミュージック、ヒップホップをリスニングにも適した温度に落とし込み、そこにほのかなエキゾティシズムとテクノポップへのオマージュも忍ばせた、ある意味『Future Listening!』と地続きのような作品だ。とはいえ、懐かしさが先に立つわけではなく、コロナ禍におけるクラブミュージックの新しいあり方——実際にクラブに足を運んで踊るのではなく、マインドで踊るような、これまでとは別次元のそれ——を感じられるユニークな作品である。


 アルバムの幕開け《BIRTHDAY》は、ボーカルに細野晴臣とHANAをフィーチャーした曲。HANAは2019年のコンサート「Yellow Magic Children ~40年後のYMOの遺伝子~」で《CUE》を歌ってオーディエンスの度肝を抜いたボーカリストであるが、この曲でもニュートラルな歌声を聴かせている。3曲目の《FABULOUS》には、’80年代の諸作の再評価も著しいサックス奏者の清水靖晃が参加。曲をぐいぐい牽引する伊賀航のスラップ・ベースが腰にくる。続く《MAGIC》はカシーフのギターが爽やかなファンクネスを醸し出しているが、こうした“ファンクネス”は本作の特色の一つといえよう。このほか、《MIND POWER》と《RENDEZVOUS》も見事なファンク・チューンである。


 METAFIVEの同志、高橋幸宏と砂原良徳が参加した《CONSUMER ELECTRONICS》はクラフトワークへのオマージュが感じられるナンバー。同じくMETAFIVEのゴンドウトモヒコがフリューゲルホルンを奏でる《NOMADOLOGIE》は、森俊二のトリッピーなギターが素晴らしいチルアウト・チューンで、アルバムの締めくくりにふさわしい心地よい余韻をもたらしてくれる。


 アルバムのミックスは’80年代から数々のハウスの12インチを手がけ、YMO『テクノドン』や宇多田ヒカル『FIRST LOVE』のミックスも担当したGOH HOTODA、マスタリングは砂原良徳と、クラブミュージックの何たるかを熟知した二人が顔を揃えており、アルバムに説得力を与えている。五木田智央によるアートワークは、どこか懐かしさがあるけれど、決して過去のその地点に戻ることはなく、現在進行形で新たな世界線を作り出す本作を視覚化したかのような印象だ。こうした音響、アートワークと楽曲とが高次で融合した「マインド・ダンスミュージック」とでも呼びたい本作。早くも未来のクラシックになりそうな予感たっぷりである。


【掲載号】

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intoixcate 150 (2/20発刊)



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