【小説】涙・鉛筆・左手(#毎週ショートショートnote)
左利きって不便だ。
ノートに鉛筆で横書きで文字を書いていたら、気がついたら手の横が真っ黒になっている。改札を通るとき、左手でSuicaをかざそうとしたら、手がクロスしてどうしても滑稽な格好になってしまう。ハサミも使いにくい。
──と、右手首を骨折して初めて分かった。
大学の昼休み。教室の端で、『左手だと不便なこと』をノートの隅に汚い字で書き出していた。
そもそも、鉛筆を使わないといけないのが嫌。
慣れていない左手でシャーペンを使うと、力の加減が全く分からず、すぐに芯が折れてしまう。
諦めて、机の引き出しの奥に眠っていた鉛筆を出してきたのだ。
次の授業の教授がやってきた。
ギプスをつけた僕を見つけ、やや物珍しそうな目を向けてきたが、すぐに目を離した。
あー、早く右手を使いたい。
バッティングセンターでデッドボールをくらって骨折なんて、かなりダサい。
あー、情けない。
涙が一滴、ノートの隅に落ちた。
《終》(407字)
たらはかに様の企画に参加させていただいてます。お題に合わせて書くショートショートです。
今週のお題は『涙鉛筆』。
素敵な企画いつもありがとうございます!
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