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デザイナーにおける思考力の格差

考えるとは何か?私たちは物事について深く考えられているのか?
みたいなことを最近いろいろな人と話す中で考えている。なぜなら、人によって思考力に圧倒的な差があるから。もしくは、ある分野において差があると感じるから。

思考力とは何か?一般的には
感覚や表象の内容を、自分の頭で分析・統一して概念を作り、判断する能力
と言われている。

ここでは簡単に
思考力 = 抽象と具体を行き来できる力
と定義する。

抽象とは何か

具体はなんとなく理解できると思うが、抽象という言葉は案外難しく理解しにくい。ただ抽象化は人が得意とする行為であり、あなたも意識せずにやっている。それが最も表れているのが「言葉」だ。

例えば人は、世界中にある様々な色・形・匂いの植物の中である程度的確に「花」を分類することができる。花びらがある植物という事実から、「花」という概念を無意識に抽出している。

私は高校生の時に読んだ金城一紀氏の「GO」という小説に多大な影響を受けているのだが、この一文を今でも時々思い出す。

おまえら、俺が恐いんだろ?何かに分類して、名前をつけなきゃ安心できないんだろ?でも、俺は認めねえぞ。俺はな、《ライオン》みたいなもんなんだよ。《ライオン》は自分のことを《ライオン》だなんて思ってねえんだ。おまえらが勝手に名前をつけて、《ライオン》のことを知った気になってるだけなんだ。それで調子に乗って、名前を呼びながら近づいてきてみろよ、おまえらの頸動脈に飛びついて、嚙み殺してやるからな。

金城 一紀. GO

デザインの抽象と具体

抽象化はデザインで必須の思考回路だ。デザインをする前も、実際にデザインする時も抽象と具体を繰り返していく
これが出来ないデザイナーをオペレーターと呼ぶ。言われたことを言われた通りにアウトプットするだけならAIで十分になるだろう。

抽象と具体って実際どうやってデザインに落とし込むの?繰り返してもループするだけでは?という疑問に対する答えを図にしてみた。

01→02:事実から「共通する概念」「普遍的な法則」に抽象化
02→03:抽象化した概念に、新しい視点を加える
03→04:03で生まれた新しい概念を具体化してみる
04→01:具体化したモノから事実を捉える

抽象化が難しい?

どうやったら抽象化できるのか?と聞かれることがあるが、方法は一つだけだと思う。

大量にアウトプットしながら大量にインプットする
以上!
これ以外の方法を私は知らない。
抽象化は人間の本能だ。あなたが言葉を話すように、ある分野について日常的にアウトプットをしながらインプットできれば抽象化はできるようになる。

量に関しては面白い話がある。
おそらく最高の音楽家であるJ.S.バッハ他の音楽家よりも圧倒的な作品数を発表している。その数、1,100。2位のモーツァルトが620だとするとほぼ倍だ。

また、20世紀最大の芸術家であるP.R.ピカソは生涯におよそ1万3500点の油絵と素描、10万点の版画、3万4000点の挿絵、300点の彫刻と陶器を制作し、最も多作な美術家であると『ギネスブック』に記されている

あなたは1年にデザインを何作品ロンチしているだろうか?去年の作品数を数えてみてほしい。20個?30個?残りの人生であと何個デザインができるのだろう?

私は前職でWebデザイナーだったころ、1年で出せる作品数って何て少ないんだ!と絶望したことがある。こんなにも忙しいのに!
ちなみに、ピカソは平均で1年間に1760点程の作品を作り出している。

デザイナーとしてもっとも重要なのは

抽象化はデザイナーというかコンサルや経営など幅広い職種で当たり前の思考力だ。

デザイナーとしてもっとも重要なのは「新しい視点」。これを顧客視点からだと「インサイト」とか「暗黙の前提」と呼ばれたりする。
抽象化した概念を多角的な視点で新しい概念に変換して、具体化することがデザイナーの仕事で、センスを発揮したいフェーズだろう。

この一連の流れの訓練として、現代アートに行くといい。基本的に現代アートは「現代の事実・問題」を「抽象化」して「アーティストの視点」で変換し、「具体化」したものが作品になっている。

例えば2023年9月24日まで森美術館で開催中の「ワールド・クラスルーム」の作品で試してみるといい。作品自体もより楽しめるのでオススメ。


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