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シニアになって働く意味を考える㉚~IT業界から介護業界へ転身、そして退職を決意した訳~

定年前後のシニアに「働くことの意味」についてインタビューした記事です。一人一人のインタビューを積み重ねて、「働くことの意味」のスペクトラムを描こうと思っています。目指すは100人インタビュー!今回は30人目です。


IT業界に35年、介護業界に5年、そしてあるきっかけで定年退職を選択

 今回もいきなり、いつもの人生満足度曲線を出しました(下図↓)
 Nさん(62歳、2024年6月現在)は新卒後、IT業界に35年間勤務され、その後5年間は介護業界で働き、61歳の誕生日前に定年退職されました。

新卒入社早々、この仕事は自分に合わないと思った

 新卒でSE(システムエンジニア)として大手IT企業へ就職。入社早々、仕事内容が自分に合わないと感じるも、経験を積んでいけば何とかなるかという思いでがんばり続けた7年間。

運動部の先輩に救われ、仕事人生満足度も満点

 もう限界かと思った30歳前、Nさんが所属していた社内のある運動部の部長(兼、事業部長)から、営業職への出向を勧められ異動。Nさんの苦悶を見かねた先輩の救いの手だったそうだ。
 営業経験で自信を得たNさんは、その後、技術職へも復帰し新規事業を立ち上げるなど実績をあげられ、仕事人生満足度の最高点10点と躍進の30代前半。

ITバブル、度重なる転勤が続き、ITバブル崩壊、そして2度の吸収合併

 ちょうどITバブル期の会社の成長にともない、管理職として名古屋・大阪・東京へ何度も転勤を繰り返す。そして、ご本人希望の職場であった東京勤務時代(36歳)にITバブル崩壊。経営陣からも理不尽な無理難題を突き付けられ「メンタル壊れた」状態になったそうだ。
 その後、サブ管理職への降格がかえって幸いし、「メンタル」は一時持ち直すも、所属会社が大手IT会社へ吸収合併され、吸収された側の出身者へのマイクロマネジメントで、行動を細かく管理され冷遇が始まる。
 その後さらに、もう一回り大きなIT企業に吸収されることになる。日本の2000年代からの失われた20年は、ちょうどNさんの仕事人生満足度の低迷期と一致し、働く人たちへのインパクトは凄まじい。

メンタルが壊れそうになるも、ITから逃げられなかった理由

 Nさんは「苦しかった36歳から55歳、IT業界から抜けられず、何とか我慢して持ちこたえた。理由は妻への、ある種の申し訳なさだった」と言います。
 名古屋勤務時代に、取引先に勤務していた女性と結婚。「妻は、仕事をやめ、地元とその交友関係をなくし、その後何度も転勤先へついてきてくれました。彼女に仕事や友人ができる前に転勤を繰り返していました。その手前、何とか仕事をがんばりたかった」そうです。
 しかし、2度目の吸収合併されたことで、「もうこれ以上は無理かも」とあきらめがつく。 

介護業界へ転職するも(いわゆる)ブラックだった

 35年間のIT業界をやめた末に選んだ仕事は、老人介護施設の管理職でした。
 ここが超ブラック施設で、本業の施設管理(12時間/日+残業)の上に、現場の介護職の人手不足分を管理職自ら代行し、夜勤後の午後まで働くことが当たり前の職場だった。
 仕事の内容にはやりがいもあったが、身体がついていけず、常に体調が悪かったと言います。

2社目の訪問介護職にやりがいと自由を得る

 このブラック施設に1年余り務めた後、訪問介護へ転職する。ここでようやく天職にめぐり合ったかもしれないと言います。
 収入は下がったが、自宅から自転車で近所の訪問先を回り、一軒一軒丁寧に仕事ができるし、利用者さんに喜んでもらえ、移動の合間は自由時間もあった。行動を厳しく管理されず、仕事に集中でき余裕もできましたと。

妹さんの若すぎた突然の死で人生観が一変

 Nさんが60歳を目の前にした時、妹さんが突然亡くなられます。
 (この辺りの経緯は伺っていませんが)いつ自分や妻が、突然健康を失うこともあるかもしれない。これまで自分の意地でがんばってきたからこそ、もう仕事はキッパリやめて、人生をリスタートしようと定年退職を決心する。 
 それに、自分勝手かもしれないが、妻に恩返しがしたかったと。

定年退職後は?

 「ストレスがなくなった」と大変シンプルな回答でした。理由をうかがう。
 Nさんの人生を楽しむ三つの条件、1)社会的繋がり、2)健康、3)おカネ、共にある程度得られているからだと言います。
 陸上競技、登山、ヒップホップをやり、月一回の地元の同年代コミュニティーに参加。そして投資、と言っても優良株の長期投資。三つの条件をほぼほぼクリアー。

Nさんの働く意味は?

 Nさんの「働く意味」を見てみましょう。著者の勝手な指標で作った「オレ、何で働いてるの?の図」と「働くモチベーション」はこんな感じです。

 「自立」と「社会貢献」を重視されていますね。
 「自立」について伺うと、経済的な自立を意味し、妻への申し訳なさ(奥様を幸せにしたい思いでしょうか?)が、背景にあるそうです。
 「社会貢献」については、IT職の時は人から感謝されることはめったになく、介護職で利用者さんに感謝してもらえることに気づいたことが反映しています。

 「働くモチベ地図」。もう付け加えるコメントはありません。

後記:


 苦労をかけた奥様とは、これから共に人生を歩んでいけるように、話し合いながら計画を立てられているそうです。今は、奥様もお仕事をされ、夕食はNさんが主担当だとか。
 「辛抱できないやつは負け」みたいな昭和の考えに固執せず、もっと早くにIT業界を離れればよかったと後悔もされていますが、「恥と思ったことはない」と気持ちいい言葉を、インタビューの最後に聞きました。そして、「ちなみに今の生活満足度は10点満点です!!」がうれしいダメ押しでした。

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