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【毒親連載小説 #25】父とわたし 6

私が合格した大学は日本では
割と名の通った大学だった。

父は私の合格を知った途端、
普段はほとんど疎遠な親戚中に
電話をかけていた。

そして、さも自分が
合格したかのように親戚に
自慢するために触れ回っていた。

私は唖然とした。

父が電話口で私の大学合格の
話題を出していることを聞いた時、
怒りと悔しさで震え、
あまりの怒りで一晩中悔し涙を流した。

当時はなぜ、
こんなに腹が立ったのか
全く分からなかった。

しかし、今思い起こせば、
私がどんな苦労や過程を経て
この合格を勝ち取ったのか…。

父はそのことには
何ひとつ関心を持たず、
父の関心ごとは
お金のことか自分の面子だけ…。

そう感じたからだろう。

小学校の頃の優しかった父…。

束の間とはいえ、過去にそんな
優しい父がいたことは確かだった。

しかし、
手のひらを返したかのような
この冷淡な態度は、
初めから私に対して冷たかった
母とは違い、より私の心を苦しめた。

私はずっと、
あの頃の父に戻ってくれればと
期待していたのかもしれない。

いつかはきっと、
またあの頃の父に戻ってくれるだろう。

いつかまた、優しく受け入れてくれる
そんな日が来るのではないだろうか…?

そう父からの愛を
ずっと諦めきれずにいた
私はか弱い子供のままだった。

(つづく)

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