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lab1092
バラの花束
知らない人からいきなりバラの花束を貰った。「え?何ですか?」と聞くと「君、可愛いから」と言われた。返す間もなく男は去っていった。絶対違う。可愛いは本当かもしれないけど、ここは飲み屋街、歩けばおじさんの団体や出勤前のお姉さん、ボーイさんがいる。
きっとバースデーの女の子に渡す予定だったけど欠勤したとかサプライズで渡す予定がたまたま出勤していなかったとかきっとそんな感じだ。
軽薄そうな男のしそうなことだ。きっとそうに違いない。
「え〜もしかしたらプロポーズかもしれないよ?」
「いや、それは無いでしょ」
ドレスに着替えて髪をもう一度整える。
よし、今日もいい感じ
「だって赤いバラの花束っていえばプロポーズだよね。跪いて結婚して下さい!なんちゃって」
「それはそうなんだけど、だとしてもさ断られた後に他の女に渡すかな?」
「ヤケクソだったんじゃない?」
その発想は無かった。確かに酔っ払っていたうな雰囲気だった。スーツも着ていた。ただのサラリーマンだとばかり思っていた。
持て余したバラはお店に飾られることになった。店内がいつもより華やいでキレイに見えた。
お客さんにこの事を話すと
「バラの花は色によっても意味が変わるし本数によっても変わるんだ」へえ、そうなんですね。知らなかった、とお決まりのセリフで応えると客は得意げに
「108本が結婚してください、だったかな?99本が永遠の愛、僕も妻に渡したのを思い出したな」
貰った花束は何本だっただろうか、気になって閉店後に数えてみたら20本、特に意味は無かった。
なんの罪もないバラはその内にしおれてゴミ箱に捨てられた。
私の時間を返して欲しい
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