いまじん

21歳。女。 書きたい時に、書きたいことを。imznwoodeye.works@gma…

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21歳。女。 書きたい時に、書きたいことを。imznwoodeye.works@gmail.com

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選ばれなかった。そして、選んだ。〜高校時代に起きたパンデミックと、それからのこと〜

2023年4月。20歳。 私は、イタリアで暮らし始めた。 海外に行くことは中学生の頃からの夢だった。 外国の人と話すのが好きだったし、日本にはないようなフランクな関係性が憧れだった。 そんな私は、都内にある私立の中高一貫校に通っていた。 大学受験を考え始めたのは、中学2年生の時だった。 尊敬していた部活の先輩が通っているという塾に興味を持って、中学生ながら、受験間近の高校2年生に紛れて、推薦受験対策の塾に通っていた。 そこにはトイレの研究とか、ブロックチェーンの研究

    • 趣味ってなんだっけ

      聞かれて困る質問、第一位。 「趣味ってなんですか」。 テンプレ的には読書、お酒。なんだけど。なんかやけに格好つけすぎている感じがして、どうも言いづらい。 大人っぽーい。とか、そういう反応。ふつうに好きだから、なんだけど。 そんな私に、友人が見事な質問をしてくれた。「じゃあ、無いと困るものって何?」 無いと、困るもの。 本。やさしい音楽。GoogleMap。美味しいもの。食堂つきの銭湯。 それからそれから。あ、お香。 そうだった、私、お香好きだった。香りに対するこ

      • 【創作大賞2024】ふたりでふたつ 〜名前のない関係性について〜

        「関係性に名前をつけたくないんだ」とその人は言った。 その人と私は、二年ほど前に同じ団体に所属していて、頭の良さそうな雰囲気のその人に私は近づいてはいけないような気がして、自分から声をかけることがずっとできないでいた。 でも実際のところ、私たちはとても近い部分をもっていたということにだんだんと気づいていった。深夜に山手線沿線歩いてみたいよね、メイドカフェとか行ってみたいよね。そういうところへの好奇心とフットワークの軽さが一致していた。グループの中でノリで話していたことを本

        • 犬がきらいな人のこと

          公園を歩いていた時、2匹の子犬を散歩中の人とすれ違った。 「犬、嫌いなんだよね」と、横を歩くその人はちょっと苦しそうな顔でぼそっと言った。 好きな人がいれば嫌いな人がいる、そういうもんだろう、とは思っていたけど。 その人は犬嫌いを告白したことで、周りから凶悪犯罪者のような顔をされたことが何度かあるらしい。 好きが当たり前の世界で生きてきた人たちにとったら、そうじゃなかったその人の存在は確かにじぶんのルールには当てはまらない人で、つい、そういう反応をしてしまったのかもし

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        • イタリア生活記録
          16本

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          親のことがわからない

          振り返ってみると、私は子供の頃から、親のことを親としてあんまり見ていなかったような気もする。三人でいる時はだいたい誰かが機嫌が悪くて。お互いに悪口言ったり、泣かせたり泣いたりで、この人たちってなんなんだろうな、と子供ながら不思議に思ったりしていたことがあった。 父親は私が目を覚ます少し前に帰ってきて、家にいないことが多かったから、一緒に手を繋ぎながら公園に行った記憶もなければ勉強を教えてもらった記憶もない。唯一あるのは、お下がりのガラケーをくれたこと。小学生の時の歴史の年号

          親のことがわからない

          夏とサザンと生きること

          私が幼い頃、父の紺色のジャガーは夏になると屋根がなくなった。 ぱたりぱたりと折り畳まれ、夏の太陽をじりじりと浴びながら、エンジンの音を聞く。熱風が吹き、シートの革の匂いがふわりと香る。 後部座席から手を伸ばし、iPodでスイカ頭のジャケット写真を探すのは私の役目だった。 夏は決まって、サザンオールスターズを聞いた。流行りの女性アイドルグループをループしたり、洋楽ブームに溺れた時期もあった。それでもやっぱり夏にサザンを聴くのは欠かせないことだった。 もうだいぶ前に、その

          夏とサザンと生きること

          言えないこと

          さいきん、やたらと頭の中に浮かべてしまう人がいる。数ヶ月前に働きはじめたアルバイト先の、バーの上司だ。30半ばくらいの独身の人。女の人。 彼女は店の客からも人気が高く、彼女がいるかどうかを確かめて店に入っている人もけっこういたりする。ただ、失礼ながら、ものすごく美人とか可愛いというわけでもないから、ちょっとそれは不思議に思っていた。しかし、そんな私も、いつからか彼女のことが気がかりになっていた。 彼女が常連客から愛されている理由は、たぶん、話しすぎないこと、それから、適切

          言えないこと

          (ここで読めます)完売御礼! エッセイ集「イタリアで食べる日々」フルカラーver

          文フリに初出店しました この度、イタリアでの留学中の食にまつわるエッセイ、「イタリアで食べる日々」を発行し、5/19に東京流通センターで行われた、文学フリマ東京(作り手自ら作品を販売できる文学作品展示即売会のこと・今回の出店数は3000店だったそう!)に出店しました。 知人だけで終わるんじゃないかと思っていた予想に反し、「昔イタリアに留学していたんです!」「とにかくエッセイが大好きで!」「表紙かわいいから買います!」と、さまざまな理由から、見ず知らずの方たちが私の作品を次

          ¥100

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          【ドキュメント】世界はそのへんに 03「ブリティッシュ兄さんとハシゴ酒」東京・浅草

          今回東京・浅草で出会ったのは、イギリス・ロンドンから一週間ほど滞在中のお兄さん、ブレッド。 誕生日の一週間前に突然思い立って、日本に旅行することを自分へのプレゼントとすることにしたのだそう。 海外旅行は25歳くらいの時だから10年ぶり、と言っていた。とにかく、飛行機が長かったと、何よりも先にこぼした。 Too muchでCrazyな東京 東京はどう?と聞くと、彼からは興味深い答えが次々と出てきた。 彼「面白い街だ。でも、本当は東京に住もうかと考えて来たけど。それは僕

          【ドキュメント】世界はそのへんに 03「ブリティッシュ兄さんとハシゴ酒」東京・浅草

          【ドキュメント】世界はそのへんに 02 「日本人すぎるイタリア人おじさん」東京・蒲田

          朝、留学前から利用していた「ハロートーク」という言語交換アプリで、ひとりのイタリア人のおじさんと会話をしていた。 言われるまで日本在住なのだろうと、信じて疑わなかったほど、彼のタイムラインは日本各地の写真で毎日埋められていた。 彼は年に3回ほど日本にきているイタリア在住の人だった。ただ、その時ちょうど日本に遊びにきていて、「今、天王洲アイルにいる」と連絡をくれた。 それから、「一杯お茶しませんか?」「ご都合がよかったら教えてください」と日本人みたいな誘い方でメッセージを

          【ドキュメント】世界はそのへんに 02 「日本人すぎるイタリア人おじさん」東京・蒲田

          【ドキュメント】世界はそのへんに 01「ザンビアから来たお兄さん」東京・新宿

          とある金曜日の夜。西新宿の地下にあるとある劇場でお笑いのライブを観た帰り、無性にビールが飲みたくなった。 華金の新宿に、一人で飲めるバーはないかと思った。が、そういえば!と、とっておきの場所を思い出して、ビールめがけて早足で歩き出した。向かった先は「HUB」。赤いロゴマークが特徴の、英国風パブチェーン店。ついこの間、ポイントカードを新しく作ったことを思い出した。 地下につづく階段を下りはじめながら、ちょっと不穏な予感がした。ここに届くまでの声量、となると、かなりの人混みに

          【ドキュメント】世界はそのへんに 01「ザンビアから来たお兄さん」東京・新宿

          【新企画】世界はそのへんに 00「ドキュメント、はじめます」

          2024年、3月。 一年ぶりの山手線。地面の線の言う通りに、スマホをいじりながら待つ人たち。車掌のアナウンス。大きな水槽に放たれたメダカのように車両から溢れ出て、そして押し込まれていく人々。ドアが閉まる寸前で乗り込む集団の外国人たち。そこに静寂はない。いくつかの異なる言語が飛び交う。いろんな匂いがする。私はまだ、ヨーロッパのどこかの街にいるのかもしれないと錯覚した。 一年前の東京は、もういなくなっていた。 でも、私は高揚した。 ここには世界が増えているんだと思った。

          【新企画】世界はそのへんに 00「ドキュメント、はじめます」

          ふふふ生活記録 ①

          今回は、筆者が「ふふふ」と思ってしまったさまざまな瞬間の記録をお届けします。 4月12日(金) 山手線で座って居眠りをしていた。ふと目が覚めたら新宿だった。車内は仕事を終えた人たちでごった返し、ぎゅうぎゅうの缶詰状態だった。すぐ前の「疲れきってます」という張り紙をつけて立っているOLのお姉さんのことを思って、目を閉じてまた眠ろうとしていたら、電話をかける男の話の中身が気になって、そうもいかなくなった。「すみません、予約の○○ですけど。電車が止まってしまってですねえ」と男。「

          ふふふ生活記録 ①

          桜が見れないとき

          桜の花は、ときに眩しすぎる。 それを見た人々は、おめでたいとか、きれいだとか呑気にそういうことを言う。 光をよけるために、そういうことにしたりすることもあったけど、やっぱりそれも苦しかった。 今はただ、遠くにいるあの人が元気でいてくれたらいいなとか、花びらの飛んでいった場所のこととか、何年も先のこの幹から見える世界のこととか。そういう、私が捉えれないような、遠いところのことを考えたりすることにしている。 呑気になる、というのはこういうことから始まるのかもしれない。

          桜が見れないとき

          もしも、の方

          なんかね、最近、選べないんだ。 もしかして、わたし、全部まちがえてきたのかな?とか、そんなことを思って、こわくなる。 いろいろ、選べないの。 選んだときの、選ばなかったほうの未来ってどこにいくの?とか、そういうことばっかり考えてる。 あっちを選んだ私はどうだったんだろう、とか。そういう、もしも、の欲が邪魔する。貪欲なんだ。 選ばなかったほうの未来は、もうどうにもならない。 そんなの、わかっているんだけど、わかっていない。 ないものばかり探してさ、ほんとにいやにな

          もしも、の方

          死にたい夜が明けていく

          記憶のかぎりでは、4歳くらいの時から、「ここではないどこかに逃げたい」という感情があった。それは、小学生高学年になるといつしか「しにたい」になっていて。そんな夜を何度も繰り返しながら、時間を数えて、夜を過ごして、どうにか日々を生きてきた。 昨年の春、外国にひとりで渡った。それも一年という中々の期間。いわゆる海外留学というやつだ。留学に行くと、人生観が変わる!とか聞くけれど、ピチピチの10代というわけでもないので、人生観が変わるほどの変化はなかった。 それでも、この経験のお

          死にたい夜が明けていく