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テレワーク開始は死刑宣告だった

明日から弊社社員は全員テレワークになります。


この言葉は僕にとっての死刑宣告だった。


メンヘラ彼女と同棲していた僕は半年ほど前から

日々、罵声を浴びせる彼女に悩んでいた。

死ね、消えろ、失せろは日常茶飯事。

とにかく相手の機嫌を取り続け、衝突が起きないことだけを第一に考えていた。

そして会社は家庭で落ち着けない僕にとって

唯一のシェルターだった。

幸いなことに上司や先輩に恵まれていた僕は、会社の中で愚痴を聞いてもらうなどして精神の安定を保っていた。

朝に大声で罵倒された日も会社にさえ行けば救われるんだという思いで出社し、難を逃れていた。会社では仕事が待っているため、仕事に集中している時は彼女のことを忘れられた。

だからこそ、テレワークが死ぬほど嫌だった。

衝突の頻度が上がることは目に見えていた。


迎えたテレワーク第1週

自分の所属するグループは10時半から会議アプリを使った朝礼があり、僕はそれを招集し、司会をする役割だった。

この朝礼が早速トラブルの火種になった。


黙れ!!何でてめえのせいで起こされるんだよ。


ぐっすり眠っていた彼女は自分の眠りを妨げられた怒りから、激しく僕を詰った。

確かに10時半とはいえ、配慮が足りなかった部分もある。

翌日から朝礼をトイレで実施することにした。

無事30分間の朝礼が終わり、トイレの扉を開けると、


その女誰??


彼女が立っていた。


何で私以外の女と喋ってるの?この家の中できたねえ女の声晒すんじゃねえ。


次の瞬間僕はお腹を蹴られてうずくまった。

不意打ちだった。

そのあとうずくまる体を容赦無く、踏みつけられた。

今思えば、彼女は体格がいい方ではなかったし、男の僕が本気を出せば抵抗の1つや2つできただろう。でも僕はしなかった。

いや、できなかった。

逆らってはいけない。歯向かってはいけない。

もうこの頃にはすでに

主従関係が出来上がっていた。


翌日から、僕は女性と会話する場合は部屋の外に出なくてはならなくなった。

マンションの部屋の前のエントランスにPCを置き、朝礼をした。

流石に会社のメンバーにも心配された。

普段なら、ここで別れるという選択肢が思い浮かぶのは普通である。でも僕にはそれが思いつかなかった。

彼女のいい部分、優しい部分を理解していたというのもあるし、何より、彼女が機嫌を損ねるのは自分が悪いんだという意識を持っていたのだ。


彼女の罵倒は朝礼だけではない。

エンターキーを叩く音がうるさいと死ね。

営業と電話して打ち合わせをしている笑い声がムカつくから死ね。

青じそサラダのドレッシングが臭いから死ね。

私が家にいる時、一人になりたいのにお前がいるから死ね。

買ってきたお菓子に書いてある鬼滅の刃の女性キャラクターがムカつくから死ね。

仕事が夜までかかっていてかまってくれないから死ね。

もう、24時間罵倒のオンパレードだった。

そして、彼女が気にいる回答ができないと暴力を振るわれた。


リモート3週目になって僕の思考は完全に停止した。


夜寝るときも、死ね、消えろ、何で生きてるの?という幻聴が聞こえてきて寝れなかった。

次の日も会社があるのに5時に寝て13時や14時に起きるという生活

朝礼もサボるようになった。

そしてついに


僕は仕事ができなくなった。


何で生きているんだろう。何で仕事なんてしているのだろう。

そんな感覚を持つと、仕事に全く集中できなくなる。

キーボードを叩いていると涙が溢れてくる。

お客さんからの電話を取ろうとすると手が震える。

幸いGW直前だったため、お客さんやパートナーへの影響はほとんどなかったが

タスクが目の前にあるのに体が動かないという感覚は苦痛だった。


すると彼女は泣き出したのだ。


仕事ができないのは私のせいじゃないんでしょ?私死ぬね?


ベランダに足をかける彼女を必死で止めた。

精神が崩壊しそうだった。さっきまで僕を罵倒していた人間が今度は僕のせいで死のうとしている。脳みそがジリジリと焼けて外側から潰されていくような感覚を生まれて初めて味わった。

生き地獄だった。

彼女からの罵倒と暴力は続く→仕事に集中できない→負い目を感じた彼女が死のうとする→それを慰める→また暴力が始まる。

このループが僕の精神をジワジワと蝕んで行ったのだ。


ただ、テレワークがこの状況を作り出したとは思っていない。

テレワークは暴いただけだ。


彼女の暴力性を。

そして僕たちカップルはとっくに終わっていたということを。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。今、心の傷を少しづつ癒しながら元の自分に戻れるよう頑張っています。よろしければサポートお願いします。少しでもご支援いただければそれが明日からの励みになります。