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『家族八景』笹井康隆

はじめに:マインドリーディング

本著は、マインドリーディングのできる少女が主人公である。

少女は、家政婦として、色々な家庭を転々として生計を立てている。その少女は、人の心を読むことができる、特別な能力を持っている。それゆえ、雇い主である家族の裏の顔や欲望を知ってしまう。人のことを知りすぎてしまう代償として、一つの場所に長く留まることができない。

異郷から来た女史が何者か知りたい人はこれを読んでくれ。

そして、女史のnoteをどう読むか、こちらを参考にしてくれ。

家族の在り方:人の裏に隠された欲望

主人公は、それぞれの家庭で、様々な人の裏の顔に出会う。薄汚い欲望でまみれている中年男性から、捻じれた愛を持った夫婦、強い芯を持った女性etc...、人間味溢れる登場人物の心が、主人公によって読み解かれていく。

一見非常にうまくいった家庭として羨ましがられている家族は、実は崩壊寸前で、主人公の何気ない一言が崩壊に繋がったりする。

ある家庭は、家族全員が表面上は笑顔で接しているが、お互いを心の中で罵っている。

ある人物は、非常に善良で芸術的な思考を持っており、主人公さえも惹きつける。しかし、結局は他の汚い人間と何も変わらない人間だることが分かり、主人公は失望する。

結局、主人公は、どの家庭でも、人の心を読んでしまったことで決まりが悪くなってしまい、辞めざるをえなくなる。結果、職場を転々とすることになり、様々な家族の在り方を目の当たりにするのである。

おわりに:人間観察力を鍛える

本書は、究極の人間観察力を持った主人公と共に、様々な人間臭い人々を観察することができる小説である。

主人公が能力を開放するたびに、こいつはこんなことを考えていたのか!や、やはりそうだったか!など、主人公と共に登場人物の感情を味わうことができる。

読みやすくはあるが、著者の、人間を鋭く洞察する記述に大変魅力がある。是非女史の読者様にも読んでいただけると嬉しい。

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