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映画レビュー『MINAMATA―ミナマタ―』(2021)水俣病は過去の出来事ではない

水俣病の脅威を世界に知らしめた写真

本作で主演のジョニー・デップは、
写真家のウィリアム・ユージン・スミスを
演じています。

彼の最後の代表作となったのが、
’71年に撮影された
『入浴する智子と母』です。

この写真には、生まれながらにして、
水俣病を患った娘を
母親が抱きかかえて入浴させている姿が
収められています。

この写真が’72年にアメリカの
雑誌『ライフ』に掲載され、
日本で起きていた公害病である
「水俣病」は世界的に注目されました。

ユージン・スミスが来日した経緯

ユージンは、日本で起きている
水俣病について、
知人に教えてもらい、
興味を示しました。

それまでの彼は戦争写真家として、
おもに戦場での撮影を中心に
活動していました。

第二次世界大戦でも、
サイパン、沖縄、硫黄島などで活動し、
自身も砲弾の爆風によって、
全身を負傷し、後遺症を抱える身でした。

そんな彼が最期の題材として選んだのが、
水俣病だったのです。

ユージンは’71年に来日し、
その後、3年間、熊本県水俣市で
取材・撮影を続けました。

水俣病は過去の出来事ではない

水俣病は、メチル水銀化合物による
公害病です。

肥料を作っていた工場から、
無処理の工業排水を海に流していたため、
そこに含まれる水銀が
海洋生物に影響をおよぼしました。

海で取れた魚介類を摂取した人々が
中毒症状を起こしたのです。

さらにその影響は、胎児にまでおよび、
生まれながらにして疾患を
抱える子どもたちも出てきたのです。

この公害病は’50年代から
あったにもかかわらず、
正式に公害病として認められるには、
20年もの年数を要しました。

恥かしながら、私自身、
水俣病に関して、学校の授業で
教わった程度のことしか知りませんでした。

完全に過去の出来事だと思っていました。

今もこの病に苦しんでいる方が
いることを本作を通じて、
はじめて知ったのです。

正直なところ、この手の作品は、
軽々しく語るのがためらわれます。

もちろん、本作は、
事実をモチーフにしてはいますが、
脚色も含めた創作された物語です。

その点では、どこまでが真実で、
どこまでが脚色なのかは、
観た方自身が調べて、
判断する必要があります。

しかしながら、多くの人が
目を覆いたくなるような話を
敢えて今の時代に、
作品として残した意義は大きいです。

すべての日本人が
忘れてはならない話だと思います。

これは決して過去の出来事ではありません。


【作品情報】
2021年9月23日公開
監督:アンドリュー・レヴィタス
脚本:デヴィッド・ケスラー
原案:W・ユージン・スミス
   アイリーン・M・スミス
   写真集『MINAMATA』
出演:ジョニー・デップ
   真田広之
   美波
配給:ロングライド=アルバトロス・フィルム
上映時間:115分

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