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チョコレートリリー寮の少年たち

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自己満足で書いているお話です。チョコレートリリー寮に住んでいる少年たちの、とうといまいにち。 ご飯を美味しそうにたべます。 (少年たちがいちゃいちゃします、要注意)
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記事一覧

合唱コンクールその後、適性検査【チョコレートリリー寮の少年たち】

合唱コンクールその後、適性検査【チョコレートリリー寮の少年たち】

とりあえず、デイルームへ向かうことになって、僕達は大名行列のように歩いた。するとぐるぐると時空が歪むのを感じた。ミルヒシュトラーセ家の家紋が浮かび上がる。
「坊ちゃんー!!」
「坊ちゃん、お疲れ様です!!」
「やあやあやあやあ我が愛息子エーリク!!そして愛おしきチョコレートリリー寮の少年たち!!ばっちり合唱コンクール、眺めさせていただいたよ!すばらしいじゃないか!なぜ事前に呼んでくれなかったんだい

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合唱コンクール本番【チョコレートリリー寮の少年たち】

合唱コンクール本番【チョコレートリリー寮の少年たち】

遂に合唱コンクール当日だ。僕らは銀曜日のおとぎ話というタイトルの童謡を課題曲として練習を積んだ。とてもきらきらした美しい曲だ。自由曲もある。出番が二回もあるということで僕はなんだかどきどきしてしまって、親友たちに非常に心配された。
「エーリク、大丈夫?」
「う、うん、なんとか」
「大丈夫だよ、親友、沢山いるじゃないか、もし無理ってなったら、しかたがない。歌ってるふりしてもいいよ」
リヒトが笑いなが

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合唱コンクール【チョコレートリリー寮の少年たち】

合唱コンクール【チョコレートリリー寮の少年たち】

明日、いよいよ合唱コンクールが執り行われる。自他ともに音痴と認める僕は憂鬱でたまらなくて、スピカに泣きついた。
「もう嫌だよ、歌ってるふりだけでもいいかなあ」
「だめ、ちゃんと歌わないと。おれがしっかりタクトを振るから大丈夫」
「大丈夫じゃないんだってば!」
「ぼくが教えるよ、エーリク」
立夏が僕がぎゅっと抱きしめた。
「ぼく、歌くらいしか教えられることがないから。びしばしやるよ、いい?」
ピアノ

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スピカの写真集⑤【チョコレートリリー寮の少年たち】

スピカの写真集⑤【チョコレートリリー寮の少年たち】

「すごいなこれは、完全にモデル撮影の機材じゃないか」
「触るなよノエル次触ったら追い出すからな」
「いいじゃん、ちょっとくらい」
「部費で落としたとはいえど、素人が触っていいものじゃない」
小鳥遊先輩が必死にカメラを庇っている。
「はいはい、じゃあ俺たちはちびっこたちと壁に張り付いてるよ、スピカ、頑張れ!」
背中をどんどん力強く叩いて激励して、ノエル先輩が壁の方へやってきた。
「スピカ!かっこいい

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スピカの写真集④【チョコレートリリー寮の少年たち】

スピカの写真集④【チョコレートリリー寮の少年たち】

よく分からない理論を述べながら、セルジュ先輩が小鳥遊先輩に近づいて、杖でとんとん、おたまを叩いた。するとあっという間に自動的にうごくおたまになった。
「あとは勝手に駆動する。ぜひみんなで一緒にご飯を食べよう」
「セルジュ先輩、すごい!」
「天才ー!!」
天使たちが唱和する。立夏が憧れの眼差しをセルジュ先輩にむけて、にこにこと微笑んで拍手をした。ちょっとだけやきもちを焼いたのはここだけの秘密だ。

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スピカの写真集③【チョコレートリリー寮の少年たち】

スピカの写真集③【チョコレートリリー寮の少年たち】

「ぼくらの情報網によると、えっと……パンチェッタのミモザガーデンサラダがメインで、三日月麺麭、きのこと玉ねぎのミネストローネ、だったと、思います」
「今日も美味しそうだね。給食のことは、天使たちに聞くのが一番だ。なぜ献立表に載ってないメニューまで知っているんだろう」
サミュエル先輩がさらりとブロンドの髪をゆらして首を傾げた。
「くわしいことはひみつです」
「うん、秘密」
「学食情報については、任せ

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スピカの写真集②【チョコレートリリー寮の少年たち】

スピカの写真集②【チョコレートリリー寮の少年たち】

立夏が、机上にあった小さなベルを鳴らしてママ・スノウを呼んだ。メモを渡している。
「立夏くん、ありがとうございます……あと、ご学友一同のお写真の件は……」
「せっかくの写真集だし、みんな、協力しよう」
「はーい!」
「やった!たのしそう!」
「ぼくはすみっこにいていいですか」
「ロロは僕が責任をもってセンターに」
「わあ、どうしよう。リボンの編み込み、気合い入れなきゃ!可愛く撮ってくださいね」

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スピカの写真集①【チョコレートリリー寮の少年たち】

スピカの写真集①【チョコレートリリー寮の少年たち】

四限を終えた放課後。
僕たちはいつもと変わらずデイルームではしゃいでいた。おひさまが傾いていく優しい夕暮れ時、スピカが物憂げにアナスタシアが注がれたグラスに視線を落としたままでいることに気づいた。
僕のとなりでじゃれあう天使とリヒトをノエル先輩とサミュエル先輩にちょっとごめんね、とおしつけて、スピカの隣の席に着いた。
「スピカ、大丈夫?なんだか元気ない。隣、失礼するね」
「ん、あ、ああ、エーリク。

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きのこのカレー【チョコレートリリー寮の少年たち】

きのこのカレー【チョコレートリリー寮の少年たち】

今日の四限は、ママ・スノウが面倒を見てすくすく育てたきのこと玉ねぎとトマトとにんじんとじゃがいもを使った調理実習だ。カレーを作ることになっている。魔法を学びにマグノリアに入学した僕らだけど、最低限の生活能力を身につけるカリキュラムとして、今年度から料理の時間が設けられた。
「ねえねえ!エーリク!上手に三角巾が結べないの、ちょっと手を貸してほしいな」
立夏が僕の手をひいて、姿見の前まで連れていく。

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ハッピーバレンタイン!【チョコレートリリー寮の少年たち】改稿

ハッピーバレンタイン!【チョコレートリリー寮の少年たち】改稿

今日は、待ちに待ったバレンタインデー。
いつものメンバーみんなで寄り集まり、デイルームでささやかなパーティーをひらくことになっている。
僕は天使たちが起きる前に、なるべく物音を立てないようにガトーショコラとお星様の形のクッキーを焼いた。もちろん、立夏あてのものだ。緑色の箱にしまい、不器用なりに赤いリボンをかけ、さくらんぼと葉っぱを模した飾りをくっつけた。なかなかおしゃれにしあがってしまい、これはも

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比翼連理【チョコレートリリー寮の少年たち】

比翼連理【チョコレートリリー寮の少年たち】

日曜日の朝、昨晩まで降り注いでいたパウダースノーを纏わせたつるばらのアーチを、立夏と手を繋いでくぐり抜けた。109号室に集結した仲間たちが窓から手を伸ばして、大声で、いってらっしゃい!とか、転ぶなよ!とか、楽しんできてね!などなど、ちょっと照れてしまう言葉のシャワーをあびせてきた。顔を見合せて微笑み合い、僕らもひらひらと手を振って、チョコレートリリー寮を後にした。
「立夏、きょうはふたりきり、だね

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ギフト(番外編)

ギフト(番外編)

薬草学の講義中、誰よりも早く小テストを終え、みんなと行きたい場所がある、と、手紙を書いて後ろの席で爆睡しているリヒトに回した。みんなと是非、再び出かけたかった場所への招待状だ。
「リヒト、おきて、後でみんなにチョコチップクッキーをあげるから、どうか僕の用事に付き合ってくれないか」
イシュ先生に叱られはしないだろうかと思いつつ、彼の覚醒を促した。
「……ねちゃってた。だってすごく難しいんだもん」

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雪合戦!【チョコレートリリー寮の少年たち】

雪合戦!【チョコレートリリー寮の少年たち】

とある日の放課後、最悪で、でもとてもたのしいことがあった。でもこれは僕の鍵付き日記帳にかきとめたものなので、あまり面白くないかもしれない。初めに謝っておくね、ごめんなさい。
エーリク・ミルヒシュトラーセ

元旦の喧噪もすっかりおさまり、僕らはいつもの日常を取り戻しつつある。しかし、ちらちらと降ってきた雪がいっそう降り積もり、やがて猛吹雪に変わった。寒さに弱い僕はますます憂鬱な気持ちになってきた。ス

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ॱ॰*❅HAPPY NEW YEAR❅*॰ॱ①【チョコレートリリー寮の少年たち】改稿

ॱ॰*❅HAPPY NEW YEAR❅*॰ॱ①【チョコレートリリー寮の少年たち】改稿

「……わあ、それにしてもすごい雪。まっしろで、きみの髪みたいだ」
「リュリュ、きみもやわくやさしくふりつもる雪の精霊のようですよ……」
さわさわとささやく声がきこえてきて、僕は緩やかに覚醒した。
「ん……ロロ、リュリュ、おはよう」
「あっ、エーリクが、起きましたよ」
「おはよう、エーリク」
「……眠い」
二度寝を決め込もうと毛布にくるまる。するとふたりが僕のベッドに乗ってきた。背中を、ぺたぺたと小

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