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「野生動物への餌やりをやめよう」を伝えるキャッチコピー

札幌国際情報高校の松村先生のもと連続授業をしました。キャッチコピーづくりのワークショップでは「野生動物の餌やりをやめよう」をテーマに設定。札幌では円山公園のリスへの餌付けが問題になっています。また知床では観光客によるヒグマへの近づき・餌投げが問題に。餌やりによって「人馴れ」「感染症」など生態系に影響が出てきます。しかしながら正攻法で「やめよう」と言ってもなかなか伝わらないのが啓発の難しいところ。そこでキャッチコピーでちがったアプローチができればと思い、生徒さんに考えてもらう課題テーマとしました。

優秀賞に選んだ10本を紹介します。


国際情報高校コピー講評0512

↑まず1本目。動物にとっておびき寄せの「罠」になる、という視点がよいと思います。

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↑2本目。無責任な行動にこそ責任があるんだという真理を突いています。潔くて、いろいろな社会問題にも通ずる普遍的なキャッチコピー。

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↑3本目。「行為」と「好意」が掛かっていてうまいですね。ラッパー認定!

国際情報高校コピー講評05123

↑4本目。ヒグマ限定にはなりますが、銃で殺処分される結末が想像されるコピーです。

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↑5本目。クマが住宅街に出てきて襲いかかってくることや、動物と人と間に起こる感染症をも思わせるコピー。

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↑6本目。その場の感情で軽率な行動をしたらどうなるか考えさせてくれます。


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↑7本目。人間の身勝手さを揶揄。「(笑)」は通常コピー表現ではあまり使わないのですがこれは嘲笑的で効いているような気もします。


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↑8本目。「招待状」という表現が、逆に恐怖のシナリオ感を醸し出している印象を受けました。


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↑9本目。動物目線の一人称コピーではこれがチャーミングでした。餌はたしかにおいしい。でもいいことはひとつもない。優しい表現でありながら深刻さを表現できていて、このコピー、好きです。


国際情報高校コピー講評0512最優秀

↑最後10本目。今回のワークショップで僕が一等賞に選んだコピーです。餌は優しさでも愛でもなく、人間の身勝手なゴミ捨てと捉える。そのWHAT TO SAYを強めるために「不法投棄」という言葉を持ってきたことにあっぱれ! 本人は締切間近で「降りてきた」と言っていましたが、おそらく「降りてくる」に至るまでにしっかり筋道を立てて考えられていたのでは、と思います。


今回、特別に「山の水族館」館長

山内さんにも見てもらいました。

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〈画像出典:山内さんのTwitter公式アカウントより〉

地域の自然環境や野生動物の生態にも明るい方ということで、山内さんにも生徒さんのキャッチコピー全案を見ていただき、下のような熱のこもった講評をいただきました。山内さんには課題設定のタイミングからアドバイスをいただきました。ほんとうにありがとうございます!

〈以下、山内さんのコメント〉

「あなたの行為は好意にならない」を山内賞に選ばせてもらいます! 野生動物と人の付き合い方や距離感を考える上で、餌付け問題は非常に身近でかつ重要なトピックです。新型コロナウィルスもそうではないかと言われている「人獣共通感染症」のリスクを回避するなどの目的で、人と自然環境の健康を一つのものとして捉えるワンヘルスという概念が近年大きな注目を集めています。自然との適切な距離を持った付き合い方は自然や野生動物を守ることと共に人間を守ることにも繋がります。皆さんのキャッチコピーの中にもそういった気持ちのこもったものが多くあり感心しました。選ばせてもらったコピーは言葉遊びも入っていて、良かれと思って餌やりをしている人がつい立ち止まって考えるようなものになっているなと思いました。これを機に野生動物と人間の関係について改めて考えてくれる人が増えることを期待しています。

北海道北見市「北の大地の水族館」(山の水族館) https://onneyu-aq.com/

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国際情報高校優秀賞

札幌国際情報高校3年

「グローバルマーケティング」の授業内で開催

優秀賞の10名で記念撮影。賞品は僕の携わっている地元「池田食品」のお菓子をプレゼントしました。今回のワークショップは初回に「キャッチコピーのコツ」をレクチャー。1週間後に課題を提出してもらい、審査して次の回の授業で発表という流れでした。添削やブラッシュアップの過程のない一発チャンスという形式でしたが、とてもレベルが高かったように感じています。今回の授業をアレンジいただいた松村先生、ありがとうございました! そして2020年に松村先生とのご縁を結んでくれた江川 南さんにも感謝!

考えて終わりじゃない。 アウトプットまで広げたい。

キャッチコピーという「手段」はだれでも使えるクリエイションの手法です。「知ってもらう」「買ってもらう」「好きになってもらう」などのマーケティング活動はもちろん、急速にスタンダードになりつつある「SDGs」など社会課題への思考を深めるメソッドとしても役立つと思っています。しかも「言葉」「思考」「アイデア」はリソースがあまり必要ありません。

公園や関係団体、マスコミのみなさま

高校生のつくったコピー、使ってください。

キャッチコピーをつくったあとにきちんとアウトプットの場があることが理想です。たとえば「採用されてポスターになる」とか「公募に応募する」とか、社会活動と連結させて意義をもたせたいと思います。今回のキャッチコピーは札幌市の公園管理組織や道内各地の野生動物の餌やり問題を抱えている団体などの方に届いてほしいと思っています。そしてポスターやWEBのバナー画像にキャッチコピーとして採用していただければ幸いです。また新聞、テレビ、ラジオなどメディアでも話題にしてもらい啓発活動に役立てていただければとも思っています。

ワークショップはどこでもできます。

中学校・高校・大学でキャッチコピーのワークショップを行っています。先日「小学校でもできますか?」というオファーもいただきました。どうしたら楽しくキャッチコピーが書けるかいま作戦を練っています。年齢、学年それぞれの習学レベルにあわせてレクチャー内容も変えています。テーマは地域ネタ、商品ネタ、公募ネタなどアレンジします。うちでもやってみたいという生徒さん、先生や地域のオトナのみなさん、お気軽に連絡ください。

(*キャッチコピー・写真・名前の掲載はご本人の許可をいただいています)


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