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自分のこと

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温泉街にて

温泉街にて

秋の空が高くなるのは、夏の暑さがまだ恋しくて、太陽に近づこうとしてるからだと、そう思っている。

十四番線の特急が、密集した建築物の合間を縫い、やがて田畑の中にまばらな家屋を置く郊外を抜け、切り崩した山間の黄緑を走る。
八月の最盛に訪れた温泉街に、二ヶ月後にもう一度来たのは何の因果か。
たぶん理由を探せば陳腐になる。
理由や理屈を求めない方が美しい物事はきっと存在する。

連れ立った友人は、温泉へ

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31歳、幸福をコピペ

31歳、幸福をコピペ

ついこの前、31歳の誕生日を迎えた。
昔からあまり誕生日というイベントを大きく捉えずにいた環境で育ったせいか、Twitterやらで多くの方から祝いの言葉を頂き、更にプレゼントまで送ってくれた方がいて少し驚いた。
その驚きや戸惑い以上にやっぱり祝われることは単純に凄く嬉しいことだと改めて気がついた。
ありがとうございます。

偶然とは重なるもので、誕生日にとある方の私設賞にて佳作に選ばれた。
僕が記

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迷いながらもきっと #レーダーチャート式アウトプット診断

心の何処かで
「今のままじゃ駄目な気がする」
とずっと思っている。
けれど今のままじゃ何がどう駄目なのか分からず、どうすれば良いのかも分からないまま日々なんとなく書き続けている。

タイムラインに流れてきたこの記事。
読んでみて、多分ちょっと気色が違うなとは思った。
けれどお願いしてみようと思った。

今僕がこれを書いている前に、既に3名の方がこの診断についてのレポートを書いている。
正直僕のはあ

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独り言

独り言

屋上の交差点。
声と声。
広い空と、白い雲。
寝転がる僕ら。
遠い春の日。

「今日は随分飲み過ぎたなあ、なんて呟く程度に僕はつまらない人間になってしまった。路地裏でうずくまっている彼女と、看板に寄りかかった中年の男性とのその間を我がもの顔でカラスの群れが歩くんだ」

「過去が未来の炎の先でぼんやり滲んだ。だって積み上げてきたものがよくわからないままに、今の僕なんだったいうのなら一体過去の僕は何を

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エンタメにもコンテンツにもなれないけど

「あなたの夢はなんですか?」

誰しもが人生で何度かは尋ねられるその問いに、はっきりと答えられたことはない。
こういう人間になりたい。
何かを成し遂げたい。
富や名声を得たい。
模範的な回答は腐るほど出回っている。
そのどれか一つに自身を重ね合わせて答えることだってきっと出来る。
僕は考えることもせず「考え中です」とへらへら笑って誤魔化してきた。

エンタメは至高だ。
人はパンと水のみで生きている

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春につく嘘

春につく嘘

春の空に溶け出した暗鬱とした気持ち。
打ち捨てられた自転車の錆びついた車輪。
少しばかりの寂しさと微かな期待。
道路脇の排水口に溜まる花弁と吸い殻。

浮ついた街に、浮ついた人々。
昨日のちょっとした辛い気分など癒え
昨週の取るに足らない苦悩など忘れ
昨月の忘れないと誓った悲劇すら消える。

そうして誰かの気持ちを踏みにじる。
かつて自分も抱いたものなのに。
いつか自分が抱くであろうものなのに。

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午後六時の時計

午後六時の時計

実家の近所にある団地が取り壊されてもう一ヶ月くらいが経つ。
かつて子供と奥様の社交場だった、柵に囲まれた砂場と幾つかの遊具のある、今は閑散とした小さな児童公園では、春特有のつややかな雑草がせっせと勢力を伸ばしている。
ベンチに併設された少し背の高い時計台は所々塗装がはげていて、針は午後六時くらいを指したまま動かないでいる。

コンビニからの帰り道
久しぶりにふらっと立ち寄ったその公園に
僕は何とな

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ネットを通して何がしたかったんだっけ

ネットを通して何がしたかったんだっけ

僕らの初対面は言葉だ。
写真や絵、音を使うこともあるけれど
結局は言葉でのやり取りになる。

僕らは普通に生活しているだけでは関わることがないだろう。
もしかしたらどこかですれ違っているかもしれない。

それほど多くのSNSを使ってきたわけではないけれど、最近少し違和感を覚え始めた自分がいる。
今までこれほど多くの人に認知されることはなかったし、交流もなかった。
実際にお会いしましょうなんて尚更だ

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21グラム分の祈り

21グラム分の祈り

死んだ命は星になる。
そう祖父から聞いた。
祖父の家で飼っていた鶏が死んだ時だ。
農家だった祖父の家に遊びにいくのは夏休みとお正月の楽しみだった。
鶏冠のすこしくたびれたその鶏に僕は「かっこー」という名前を付けていた。
当時、僕はまだ小学生で
目に見える範囲だけで世界は構成されていると思っていた。

宇宙は膨らみ続けている。
そう理科の授業で習った。
よく授業を脱線する先生だった。
星座の話は気が

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忘れてしまうのが怖いだけなんだ

忘れてしまうのが怖いだけなんだ

今まで特にタグをつけたり、節目節目で報告していなかったけれど
実は毎日投稿している。
「継続は力なり」
小学校の担任が口癖のように何度も言っていたのを思い出す。
力になんてならないな。力ってそもそも何だろう。
文章力のことか。
自分に文章力がついたとかそんなこと思ってしまったら終わりだ。

毎日書いていると「すごいですね」と言われることがある。
継続が途絶えてしまって落ち込んだり、そのまま消えてし

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朗読と詩

朗読と詩

まずはこいつを聴いてくれ。
こいつをどう思う?

すごく良いです。
良いですよね?

正直全く突然だったので、びっくりした。
これがサプライズというやつか。

ちなみに朗読して頂いた元記事はこちら。

僕はこれを詩を意識して書いた。
詩というのは数多ある文章表現の中でも、かなり曖昧なものだと思う。
曖昧ということは読み手は自由に捉えてくれて良いということであり、書き手も同じだ。

ただ甘えに逃げる

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僕と俺

僕と俺

開け放った窓に滑りこむ風と
冬の面影が残る冷えた空気。
起き抜けに作るコーヒーの湯気と
煙草の煙が揺れる。
目覚ましの音を止めても消えない不安と
昨日からの夢。

言えない言葉を言おうとして
タイミングを外す。
伝えたい言葉は伝えずじまい
なかったことにしよう。
そんなことばかり繰り返して
今日も僕は明るい人間でいられる。

まだ暗い朝のバス停の列
最後尾に立つ。
見慣れた後ろ姿ばかり
狐のキーホ

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「ごめん、今度の土曜は収録あるから」

「ごめん、今度の土曜は収録あるから」

皆さんにも人生で一度は言いたい台詞があるだろう。
タイトルにあるのは、実際に仕事の予定を組まれそうになった時に僕が言った台詞だ。二月が始まったばかりの頃。

「ごめん、今度の土曜は収録あるから」

もしかしたら、僕の声は少し震えていたかもしれない。
だってこんな台詞、一般人の僕がそう何度も言えるものではない。
人生で一度あるかないかの好機だ。
この台詞は出来れば
何の気なしに
さも当然であるよ

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死ぬならこんな日が良かった

死ぬならこんな日が良かった

僕が言う「死にたい」に、もう現実感は残っていない。

ただ「死にたい」という言葉だけを口に含ませて
ぽとりと地面に落としていく。

一回目という文章を公開した。
つまりそれは次があるということ。
そして二回目以降も、叶わなかったということ。

自死を否定も肯定もしない。
個人の自由だ。勝手にしてくれ。勝手にさせてくれ。
けれど誰の死であっても、そこには他人が必ず関わってくる。
誰もいない土地で死ん

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