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幼い魚たち『約束はできない』その3

ろうそくの信頼が、おやすみのキスと夜明けのさよならの間で揺れる
生命の割れたガラスは椅子の上で動けないでいる
どこへも行けない幼い魚たちがそこではわずかな言葉をもち、窓枠で悶えている

石鹸のないバスルームの陰で、幼い魚たちの声が聞こえるだろうか
それぞれの鼓動は泡の中で涙を流している
真夜中の悲しさがこだまするのは、ヘアドライヤーの音が沁みこんだ冷蔵庫
コードの繋がっていないそれは、新しいドレスとシーツの間で呼吸する
呼吸が冷蔵庫の振動と重なるにつれて、夜風に揺れるカーテンは薄らいでいく

僕らは星の陰にいる
身悶えするコンクリートの待合室で、幼い魚たちは緑色のスクリーンを微笑ませている
だが、こだまする波音はいつか砂の中に消えていってしまう
ビンに入れたそれを握りしめて静かに泣いている
限りない青の空間で、波の音はもう聴こえることはない






自動的な文章を意味を為している文章に寄せていく。そんな思惑が今の私にもあります🍀

この詩を書いた時に初めてそれに近いことを考えたのではないでしょうか。

象徴的な表現を用いて、自分自身まだ自覚できていない対象に向かってフォーカスしていく……みたいなことを考えたのを薄っすら記憶しています🧠


当時頂いたコメントで「悲しい母体を感じた」というものがありました。

ひとつにはそういった方面の事柄でもあると思います。

魂魄的な、生命そのもののような――ある種の人々がミズコノレイと呼ぶところの――名伏し難い何か。


書いている時に漠然とイメージした部屋の風景を今でも呼び起こすことができます。

これもまた何らかの意味で一つの原風景、あるいは誰かが書かせてくれた物語なのだと思っています🌳

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