デイヴィッド・シルヴェスター『ジャコメッティ 彫刻と絵画』(武田昭彦訳、みすず書房)
ジャコメッティの芸術を現在進行形で見続ける――「晩年のスタイル」への再考を促す論考
二つの事情が本書をユニークなものにしている。一つは、本書が四〇年という長い歳月をかけて書かれていることである。本書に収録された最初のエッセイが書かれたのは一九五五年であり、以後、断続的に書き続けられたエッセイがまとめられて、原著は一九九四年に出版されている。著者は「まえがき」で、「主要な諸テーマをさまざまな点でさまざまに展開させるがままにして、時間の経過を尊重」したと述べている(九頁)。各章