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南日本新聞書評委員2020-21年

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2020年4月1日〜2021年3月31日。
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記事一覧

上平崇仁『コ・デザイン デザインすることをみんなの手に』(NTT出版)

一緒に創造する社会へ 例えば、オフィスのゴミ箱。狭義のデザインとは、このゴミ箱を設計した…

井原慶一郎
2か月前

高山宏『アリスに驚け -アリス狩りⅥ-』(青土社)

文化史的「読み」を実演 本書は二部構成になっている。表題にもなっている「アリスに驚け」と…

井原慶一郎
2か月前

田中靖浩『名画で学ぶ経済の世界史』(マガジンハウス)

対局つかみ明解に説明 本書のテーマは「名画」なのか「経済」なのか、それとも「世界史」なの…

井原慶一郎
2か月前

山本史郎『翻訳の授業 東京大学最終講義』(朝日新書)

複雑なプロセス明快に ディケンズの『クリスマス・キャロル』の一場面。孤独な老人スクルージ…

井原慶一郎
2か月前

三原芳秋・渡邊英理・鵜戸聡編『クリティカル・ワード 文学理論』(フィルムアート社…

読書の幅広げる入門書 文学理論の入門書である本書は2部構成になっていて、「基礎講義編」で…

井原慶一郎
2か月前
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ディケンズ『大いなる遺産〈上・下〉』(加賀山卓朗訳、新潮文庫)

没後150年 代表作を新訳 今年はディケンズ没後150年にあたる記念すべき年だ。命日は6月9日。…

井原慶一郎
2か月前

高橋明也・冨田章・山下裕二『初老耽美派 よろめき美術鑑賞術』(毎日新聞出版)

作品楽しむ極意ゆるく 初老耽美派は、還暦を過ぎた美術史家3人が酔った勢いのまま冗談半分で結成したユニットである。鼎談形式で語られる本書は序盤から初老トークが炸裂する。やれ腰が痛いだの、老眼で見づらいだの、トイレが近いだの初老談議は尽きない。 私たちが考える理想の美術鑑賞は、万全の体調で好きなだけ作品と向き合うというものだろうが、実際は自身の体調や美術館の物理的な環境に左右されることが多い。むしろ美術鑑賞はそういった身体的・物理的制約に条件づけられていることを本書は再認識さ