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バンド 【完結】

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2022年1月の記事一覧

【小説】 プロとアマ。2

「マキコちゃん、あのね・・・」  コンマ数秒遅れていたら、タイミングを逃していただろう。…

井川文文
2年前
4

【小説】 プロとアマ。

 ミウが恋人と別れたらしい。  大学に行かない自分からしてみたら、受験が原因で別れるとい…

井川文文
2年前
9

【小説】 満員電車で彼を想う。

 学校が都心から離れているということもあってか、三年間、通学の電車が満員になることがなか…

井川文文
2年前
2

【小説】 食事の前に。

「最近、抜け殻みたいになってるわね」  その日は、珍しく母の帰りが早かった。  夕食の支度…

井川文文
2年前
1

【小説】 ポーッとする。

 時間が伸びている。  ゆるゆるになった輪ゴムみたいに、締まりがない。  そのせいか、ここ…

井川文文
2年前
4

【小説】 卒業するって、考えるってこと。

“そっか、悩むようになったのか・・・”  ヒロナはボンヤリと窓の外を見上げ、ミウとの会話…

井川文文
2年前
3

【小説】 ね。

「なんかさ、もはや意地って感じがするよね」 「なにが?」 「ベースを毎日練習するとか、勉強することって」 「そうなんだ?」 「うん。まあ、意地って言葉が合ってるのかは分からないけど、今のところはしっくりくるかな」 「意地ねえ・・・」 「やめられないとかじゃないんだけど、続けていくための意地」 「ああ、そういうことか」 「『ここまでやってきたんだから、なんとか頑張りたい』ってのは、マイナスエネルギーが原動力になっちゃってると思うんだけど、そうじゃなくて」 「えー、私は、それもカ

【小説】 しゅうじゅく。

 努力は裏切らない。  そう信じてヒロナは18年間生きてきた。  キッカケは父親の言葉だろう…

井川文文
2年前
5

【小説】 暇だから、考えちゃう。

 毎日が消費されていく。  受験をしないと決めたその日から、ヒロナはそう思うようになった…

井川文文
2年前
3

【小説】 環境と運命と自分と。

 ゆるやかに、学校生活が終わっていく。  受験が終わる人、また今年も挑戦が始まる人。  少…

井川文文
2年前
3

【小説】 友を味わう。

「あーあ。やっぱりミウ見てると、私も大学受験すればよかったなあって思っちゃうなあ」  久…

井川文文
2年前
2

【小説】 今日もよろしくね。

 1月19日。  日付を書く手に小さな緊張が宿る。  ヒロナは、いつもより綺麗な文字を目指し…

井川文文
2年前
4

【小説】 半径何メールかの人生。

 ミウの彼氏、中草コウシは受験に失敗し、浪人することになった。  滑り止めの大学には行き…

井川文文
2年前
2

【小説】 一瞬のVサイン

  その日のクラスは賑わっていた。自由登校ということもあり、相変わらず欠席者が多かったが、センター試験が終わり、ひとまず安堵の表情がみんなの顔に浮かんでいる。 「ミウ! どうだった、どうだった、どうだった?」 「ヒ、ヒロナちゃん、ちょっと落ち着いて!」  ミウが教室に入ってくるなり、ヒロナはジャーナリストのようにミウに飛びついた。アキは必死に気を遣うが、ヒロナは気にしない。メッセージでは結果を聞けなかったらしく、どうしても直接聞きたかったらしい。   眼鏡の奥に見えるミウの目