マガジンのカバー画像

空地

6
参加している同人誌「空地」に寄せている原稿です。
運営しているクリエイター

#旅行

家の向こう側には果てしなく海が広がっている。

家の向こう側には果てしなく海が広がっている。

整備されていない浜辺のような気分だった。
誰もいない冬の海岸で、打ち上げられた砂礫と海藻に強い潮風が吹いていて、国道沿いのアパートのベランダの鉄棒が錆び付いている、そんな凡庸な景色が浮かんだ。
人気のない浜辺では端の方で雑草が茂っていて、防波堤や港には小汚い小舟が揺れている。
僕は生活の海についての取り留めもないイメージを思い返す。

部屋のカーテンを開き、窓を開ける。
向かいの家は広いが空き家で

もっとみる
帰省するということ。2023.3.25-27

帰省するということ。2023.3.25-27

桜は、人は有り難がって酒を飲みながらそれを見たりするそうであるが、白く咲いたそれは、どうにも、咲き乱れ満開であるというよりも、ぼそぼそと、ぼやけているように見える。
物悲しい、侘しい、といった日常に纏わりつく感情が、並木道の上から散りゆく花弁となって降り注ぐような、そんな気さえする。
一昨日まで、旅行と呼ぶには個人的な、いわゆる帰省というものをしていたのであった。
飛行機で上空から見たり、国道沿い

もっとみる