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文芸誌 空地
2023年2月20日 18:37
整備されていない浜辺のような気分だった。誰もいない冬の海岸で、打ち上げられた砂礫と海藻に強い潮風が吹いていて、国道沿いのアパートのベランダの鉄棒が錆び付いている、そんな凡庸な景色が浮かんだ。人気のない浜辺では端の方で雑草が茂っていて、防波堤や港には小汚い小舟が揺れている。僕は生活の海についての取り留めもないイメージを思い返す。部屋のカーテンを開き、窓を開ける。向かいの家は広いが空き家で
2023年6月12日 21:23
線状降水帯の豪雨が街灯で煙る、降り続ける雨の激しさが、水溜りのコンビニエンスの蛍光灯の反射を掻き消す、それらが強風で流されていく、僕の頼りない折り畳み傘がひっくり返る、僕は少し唖然として、濡れながらそれを直す。台風と梅雨が重なった夜に、僕は、いつものように、くだらない放課後を過ごして、終電の丸の内線に乗って帰った。家に着き、水没してくぐもった音のイヤホンを取って気づく、ゴーッ、鳴っている、屋根