見出し画像

在宅お母さん採用のすゝめ (下)

(上)(中)と読んで頂きまして、ありがとうございます。
(下)を書き始めてから2ヶ月が立ちました。(上)(中)理想論ばかり書いてしまったような気がします。この2ヶ月間、理想と現実の間で悩むことも多くなかなか記事がまとまりませんでした。全てが理想通りに進んでいるわけではありません。それでも今の気持ちを正直にまとめました。

子どもの騒ぎ声、泣き声に不快感を抱く

オンラインミーティング中に子どもの大きな騒ぎ声や泣きが飛び込んできます。そんなとき、メンバーの発言が聞こえなかったり、自分の思考が一瞬止まり口ごもることも多々あります。
内心はイライラすることもあるのですが、「うるさい」とか、「どうにかしてくれ」と言ったことはありません。理由は後で述べます。

以前、子ども連れOKのイベントに参加したときのこと、周りで子どもが騒ぎ立てる中で、お母さん同士が会話に夢中になっていました。
その様子を見て、なぜ彼女たちはこの騒音の中で会話に集中できるのだろうかと不思議に感じたことがあります。

皆さんの記憶にも新しいかと思いますが、赤ちゃんを議会に連れて行って問題になった議員の方がいました。
電車の中で泣く赤ちゃんの親に対して「うるさい、静かにさせろ!」と怒鳴る人の話もよく聞きます。

子どもはうるさい存在だし、周りにも迷惑になります。ですから今までは当然職場に子どもを連れて行くことはできないし、子どもを保育施設などに預けてから行くのが普通です。
誰しも子どもの騒ぎ声、泣き声に不快感を抱くのは当たり前のことだと思います。

子育てに社会で取り組む姿勢を持つ

今後、人手不足はますます深刻化していきます。私の会社では、「働くお母さんの自立支援」というミッションを掲げていますが、もう一つ「人手不足をITの力で解決する」というミッションも掲げています
今後、人口が急激に減少する日本は、未曾有の危機に直面しています。パラダイムシフトが進み、今まで当たり前だったことが、当たり前ではなくなります。高齢化が進み、人口が減り、地方の町がどんどん消滅していきます。多くの企業の売上も減り続ける一方になります。日本がこの危機をどう乗り越えるか、世界も注目しています。
今後のこのような状況下でも日本を元気にすることができれば、それが世界平和にもつながると考えており、私の会社ではこの社会課題に真剣に取り組んでいます。

「子ども」も「子育てする人」も減っているこの社会では、「子ども」や「子育てしている人」をもっと大切にしなければいけないと思います。
そのために必要なことが、子育てに社会全体で取り組むという姿勢です。

子どもを持たなくても、子育てに参加できる

従業員の8割がお母さんという私の会社でも、多くの方が子どもを保育所などに預けてから仕事をします
子どもがいると仕事に集中できないからという理由が一番のようです。
中には子どもを預けずに、子どもの側で仕事をされている方もいます。そういう方はとても貴重で、私はとても感謝しています。
理由は2つあります。

1つ目は、他のお母さんもいつも子どもを保育所などに預けられるとは限らないからです。子どもが熱を出して休んだりすることもあります。そんなときでもミーティングに参加しなければいけないこともあるでしょう。全てのお母さんは子どもが原因で周りに迷惑をかけたくないという意識をとても強く持っています。子どもがいる中で会議をすることが当たり前になれば、他のお母さんも安心して働くことができます。そのためにも、子どものいない私のような人がもっと子どもに慣れていく必要があります。子どもが騒いでいる中でも会話に夢中になれるあのお母さんたちのようになれたら、どんなに素晴らしいことでしょう。ですから、普段から子どもの側で会議に参加してくれるお母さんにはとても感謝しているのです。

2つ目は、「子育て」に一緒に参加できるということです。子育てはとても重要な仕事です。たとえリモートであっても子どもが一緒にいる環境で仕事をすること、子どもの騒ぎ声や泣き声を一緒に共有することは、子育てに一緒に参加していることと同じだと思います。そんな重要な仕事を少しでも手伝うことができて、私はとても幸せだと感じています。

パラダイムシフトの先の世界

職場に子どもがいることが当たり前になり、もしかしたら議会にも子どもの泣き声が響くようになるかもしれません。それを「うるさい」と非難する人は、未だに当たり前のように体罰をするような人と同じ様に社会から厳しく非難される時代が来るでしょう。そのくらい社会の常識は大きく変わっていくと思いますし、変わらなければならないと考えています。

急拡大で反省

私の会社では1年間で従業員数が5倍に増えました。お母さん方の切実な声に心を動かされてのことですが、正直、急激に増やしすぎたことに反省しています。
即席の組織では、脆弱な部分があるからです。特に私の会社ではほとんどが仕事にブランクのあるお母さんたちです。
お母さん向けの多くのリモートワークの仕事は、誰でも簡単にできる入力作業だったりしますが、私の会社では高度な技術が必要で責任感の強い仕事をして頂きます。
そうでなければ、(特に変化の激しいIT業界では)子育て後でもキャリアをつないで最前線で働き続けることが難しいと考えているからです。
普通の組織だったらこのような即席の組織で、数百万円から数千万円規模の仕事をすれば、確実に脱落者が多数出てしまいます
しかし、脱落者は一人もいません。これがお母さんだからこその忍耐強さ、ポテンシャルの高さなのです。案件をやるたびに確実に力強い組織へと進化しています。

泣きながら辞めたいとの申出

それでも順風満帆ではありません。ある日お母さん従業員から会社を辞めたいと申し出がありました
私はやはり子育てしながらにしては、仕事が厳しすぎたかと反省しながら、彼女の話を聴きました。
しかし、私の予想は外れ、彼女は自分が役に立っていないことに対してとても責任を感じて辞めたいと申し出たのでした。彼女の声は泣き声でした。自分は他のメンバーに比べて仕事ができないと言っていましたが、他のメンバーからは信頼されている人でした。
私は彼女に「これは社会実験だから、仕事ができるとか、できないとかは関係ない」と伝えました。
「あなたのような普通のお母さんがどうしたらキャリアアップしていけるか今実験しているんだ。あなたはここでの経験を社会に発信することで、他の多くの普通のお母さんのキャリアアップに貢献することができ、それが社会に大きく貢献することにつながる」と伝えました。
彼女はやる気を取り戻してくれました。

成功しても、失敗しても、それを発信することで社会貢献できる

私は会社の取り組み自体が社会実験だと考えるようにしています。8割がお母さん従業員で仕事を回しているなんて、普通ではありえないことです。
この考えは、会計ソフトfreeeの代表の佐々木大輔さんの著書の中で、freeeの事業を立ち上げるときに、古い会計ソフトの業界に新規参入することに対して、周りから絶対に失敗すると言われても、たとえ失敗したとしても自分の取り組みは社会貢献になると考えたと書かれていました。
詳しくは『「3か月」の使い方で人生は変わる Googleで学び、シェアNo.1クラウド会計ソフトfreeeを生み出した「3か月ルール」』を読んで頂きたいと思いますが、この考えにとても感銘を覚えました。私の活動に勇気を与えてくれています。

気づかずに社会貢献しているクライアント

そんな私たちに仕事をくださる企業がいます。
彼らのおかげでお母さんたちはやりがいを持って仕事に取り組むことができています。
彼らも子育てやお母さんのキャリア支援に貢献しているのです。
実は仕事をくださる企業の方は、おそらくこの事に気づいていらっしゃらないのです。感謝状を送ってもいいのではと従業員と話をしているところです。
本当に感謝です。

国もテレワークを推進しています。テレワーク・デイズ(7月22日〜9月6日)というキャンペーンも始まりました。テレワークを導入するだけでなく、導入している企業を応援することもこの活動の貢献につながります。

東北の被災地から学んだこと

格差が広がり、勝ち組 、負け組がはっきりと分けれ始め、先行きが不透明でみんなに余裕がない時代です。
私も正直生活に余裕があるわけではありません。
だから自分のことだけで必死だという気持ちはよくわかります

去年東北の被災地でもある女川町(おながわちょう)という小さな町に数日滞在しました。
被災したときの話を現地の方から聞かせて頂きました。
詳しくは書きませんが、当時はみんな自分のことで必死です。でもそんな中に周りのために動ける人がいました
人のために動くことが回り回って、自分にとっても生きやすい世界を作っていくことにつながります。逆もまた然りです。
それを教えてくれた女川町に感謝しています。

みんなで住みやすい世界を作っていきたいですね。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?