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#短編小説
異星人とペティナイフ #月刊撚り糸
まさか押し倒す側になるとは思わなかったが、見下ろした佐竹の白いおでこが意外にも優越感を刺激して。
「ちょっと、可愛く嫌がってみて」
「突然の無理難題だね。そんな高等テク持ってないよ」
いつも笑顔を崩さない佐竹の呆れたような、困ったような表情に征服欲まで掻き立てられる。これは癖になるな、と思いながら何気なく髪に触れると、佐竹が私の肩を押して上半身を起こした。
「なんだ、嫌なの」
「好きな子に
夕焼けに煙る【短編小説】#月刊撚り糸
涙が出そうになった。ヤマさんが吐き出す煙草の煙が目に染みる。煙の中にいるのは嫌いじゃないけれど、閉め切られた車内は暖房が効きすぎて、すこし息が詰まる。横目で覗き見てみると、吸っている銘柄がセブンスターで、昔から変わっていないことに驚いた。一途さはこういうところにも表れるものなのかもしれない。
「窓、開けてもいい?」わたしが尋ねると、
「ごめん、煙たかった?」そう言って、ヤマさんは視線を前に向けた
凍えるほどにあなたをください
【カクヨムの『同題異話SR』という自主企画のために、指定されたタイトルに沿って書かれた作品です】
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どこでもいいから、ふたりで寒いところへ行こうと思った。
たまたま入った駅前の古い食堂のテレビは、未だにブラウン管で画面の色がところどころおかしかった。そこから流れるニュースは、今年一番の寒波がやってくると告げていた。
幸先がいいと思った。順くんは暑いのが苦手で寒いのが