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【読書感想文】勇者たちの中学受験

はい、イチ芸ラジオ、ryo:です。

まだ全然先の話だし、公立高校へ行った俺が自分の子供に「中学受験」をさせるなんて想像がつかないんだけど、うちの学区的に中学受験はさほど珍しくはなく、候補として考えておかないとならない。
そして、中学受験という事は、受験するのは11〜12歳のコドモ。ギリギリになってから慌てても間に合わない。
という事で、とりあえず予習の準備、くらいの気持ちで、情報集めを始めた。その中で、知り合いの中学受験経験者さんが薦めていた本を妻が見つけてくれて、とりあえず読んでみた。

大当たり。
これね、小さな子を持つ親は読んで損はない。

以下、ネタバレを含みます。
ネタバレした状態でもぜひ読んでほしい本なので、「すでに手元に本がある」くらいの人は読んでからこの下へ進んだ方が良いかもですが、そうでないなら、特に気にせずで大丈夫かと思います。


本の内容としては、実話をベースに3つの家族の話が書かれてます。


■第一章 自分の子は天才…ではなかった

受験者(小六)アユタ君の父目線で進む話。
小三から塾に通わせた結果、小四でのスタートダッシュ(ほとんどの子が小四から受験勉強を始める)に成功。天才だと思っていた息子に一流中学に行かせようと頑張るも、受験が近付くにつれて成績が落ち(というより周りの上昇速度についていけなく)て、考えていた一流中学の最低限レベルの学校を第一希望にせざるをえなくなる。が、その学校すら落ちて、結局合格したのは第三希望と第五希望。しかも、あれだけ勉強が好きだった息子は、周りに追いつき追い越される事と並行して勉強が嫌いになり、受験が終わった即日から遊びまくる状態。頑張ってはいたものの、やっぱり小六の子供なんだな、と悟り、主人公も「第三希望で仕方ないか」と思いながら入学金を支払い、受験終了日には飲んだくれて眠りにつく。その晩、アユタ君と母(主人公の妻)が初めて進学する中学について会話をして、「第三希望の学校は男子校だからヤだ。第五希望の学校に行く」という結論になる。翌朝、酒の抜けない父がその話を聞いて一言「何の為の受験だったんだ…疲れた」と言ってこの章が終わる。
余談として、この家にはまだ妹がいたが、兄のバタバタを見て嫌気がさし、受験はしないという結論になったそうだ。

最初からドンヨリです。
成功でも失敗でもない。父は散々振り回されたが、本人は「まぁここでいいんじゃない?」くらいにしか思って無さそうな結果になる話で、とにかくモヤモヤ。最初からモヤモヤ。
「中学受験はこんなに大変なのに報われない!」みたいな教訓があるわけでもなく、「これをやっておけ!」みたいな指南があるわけでもない。
ただただ、現実。
こういう感じで受験が終わっていく子が一杯いるんだろうな…シンドイな…という気持ちになる。

■第二章 中学受験は親のエゴでしかない

受験者(小六)ハヤト君の母目線で進む話。
今度は、マジの天才。「中学受験の三冠」と呼ばれる、男子中学校最難関のTOP3「灘」「開成」「筑駒(筑波大学付属駒場)」の3校全てに合格する事を目標に学業に励むハヤト君。
と、その前に話はハヤト君のお兄さんの話になる。
お兄さんも中学受験。ハヤト君ほどの秀才ではない(というかハヤト君が特別過ぎる)が、憧れの第一志望校に受かるために頑張る。が、直前模試などでも全然届かず、仕方なく第二志望校へ行くことになるであろうと親子共に諦めていたが、なんと本番で大逆転し、第一志望校に合格。大成功の中学受験となった。
そんな中で、ハヤト君も順調そのもの。
塾は特待生で無料。さらに「三冠を取らせたい」塾は、灘校受験の旅費(関東→関西の交通費、2泊3日分の宿泊費など)も塾で負担する。
それだけの期待をかけられたが、灘校に落ちる。その影響で父親が壊れ、引きこもりになる。さらに、開成にも落ちる。筑駒にも落ちる。望んでもいない第四志望の学校に行くも馴染めず。家庭はバラバラ。
母がハヤト君を救おうとするも実はハヤト君はずっと悩んでいて、母に相談していたのに、母も結局父と同じで「息子の栄光が欲しい」事に執着してしまっていて、「お母さんの事が許せない」という会話になってしまう。母が信頼していた塾の先生も、結局は「ハヤト君の為」ではなく「三冠取れそうなハヤト君を担当したい」だけだった事が分かり、その先生が担当していた教科は力が付かず、最後まで足を引っ張る存在だった。

第一章に続き、ドンヨリです。
自分の子供が天才だと分かった時、世間が羨む頂点を取れる可能性があると分かった時!親はこうやって狂ってしまうのだと思います。
途中まで、物語的には「この父親はヤバい」雰囲気で進むのですが、ハヤト君にとっては結局母親も同じだったという事が判明して、なんかもう、救えない気持ちになります。
でも、きっと他人事ではないと思います。塾の特待生になって、全国模試でも上位になるような子供に対して、期待しない親はいないと思います。期待が期待を呼び、いつしか「ここから落ちたくない」という場所まで昇ってしまう。そうなると、逆に必死になり、子供に過度な対応を求めてしまう。
ハヤト君のお母さんは、ハヤト君の塾友達と付き合っていく中で「私はこんな親になりたくない」といった思いを持ちます。親も中学受験をしていたり、一流校に行っていた親だったりすると、「中学に入った後に通う塾」まで一流の塾を用意しています。僕のような一般人は「良い中学に入れたら、あとはそこそこの努力でそこそこの大学に行けたら幸せ」なのではないかな、という思いがあります。でも、上流階級の世界では、「一流大学から一流企業(あるいは医者や弁護士)に進むのが当然」なので、その為には「一流中学校に進むのは普通」のようです。
そんな子達と、一般人である自分の子供が一緒に通えるでしょうか?一般人である自分が、ママ友やパパ友として対等に会話が出来るでしょうか?
ただ、「地元の公立中学は微妙だから私立中学に行かせた方が良いかもなぁ」くらいの気持ちで、変にハイレベルな学校を目指してしまうと、親子共に幸せではない道が待っているのかもしれない…
と、思ってしまう章でした。

■第三章 塾選び、先生選びで人生が変わる

受験者(小六)コズエさんの母目線で進む話。
まずは姉の話。(中学受験する過程は、兄弟みんな受験するもんなんですね)
姉は、受験を意識し始めたのが遅かった為、突貫工事で追いつけるよう、小さな個人塾に入りました。それが大失敗で、プライド高く「全てのカリキュラムは俺の頭の中にある」的な先生のせいで勉強の進み具合も分からず、姉がどの程度理解しているかも分からないまま進み、模試などで良い点が取れても「カンニングでもしたか?」などと言ってしまうような先生。姉から「もう辞めたい」と言われても、親はどうしても「もうちょっと頑張ろう」と言ってしまう。それが余計に姉を苦しめる。直前になって塾を辞めさせ、家庭内での勉強に切り替えるも、いきなりそんな事ができるハズもなく、バタバタしたまま、本番に突入。落胆しながらの受験だったが、見事第一志望に合格する姉。
そして、コズエさん。
姉の教訓を活かし、とにかく良い塾に通わせたい、という親の思いから探した塾が大当たり。とても良い先生に巡り会い、順調に受験勉強を進めていく。だがそれでも、簡単に学力は上がらない。でも、塾の先生は最後の最後、試験直前までコズエさんをフォローしてくれて、コズエさんは受験をやりきる。そして、見事に志望校の桜を咲かせる事に成功する。

第三章で、やっと救われた…
コズエさんのお姉さんの話を読んでいる時は「またドンヨリしちゃうのか…」と思ってましたが、姉妹共に逆転劇があって良かった。
そして、会社でも学校でも塾でも同じですね。その環境において、上司や指導者、リーダーや経営者の影響は大きい。しかも小学生を預けるわけですから、人間的にちゃんとした人じゃないと、自分の子供の性格や精神を壊されかねない。そんな怖さがあるな、と痛感する章でした。

■感想

この本のオチとして、
「第二章のハヤト君が行った学校は、世間的には天才の学校です。その次に第一章のアユタ君の行った学校があり、いわゆる偏差値や社会的な評価では、コズエさんの行った学校が一番下でしょう。でも、どの子が一番幸せな受験が出来たかは、一目瞭然。」
という事が書かれています。

あなたは、小学六年生の時に何をしてましたか?
中学受験をしていた人は、この話を読んで「自分もシンドかったけど、親も色々苦労してたんだなぁ」と思いましたでしょうか。
僕は、クラスメイトが何人か受験していたけど、ふんわりと「天才は進む道が違うんだなぁ」と思っている程度でした。
正直、大人になってから学歴はさほど重要ではなく、高学歴でも活かせない人は沢山いるし、中卒高卒でも幸せな人は沢山います。僕も低学歴ですが、今は十分幸せです。ただ、偏差値の高い学校に行くと、賢い子達と一緒に過ごす事になり、自身の成長はもちろん、その後のコネにも活かせる環境になる事は事実です。そして、それに気がつくのは大人になってからです。子供は気付けません。なので、「子供の自由にさせたい」「子供がやりたい事をやらせてあげたい」と考える親御さんであっても、大人がある程度のレールを敷いてあげる必要はあるのかな、と思います。
「子供が自由に進路を選ぶ事が出来る為の進路」を考えてあげようと思うと、多少レベルの高い学校に行かせる方向で考える事も、間違いではないかな、と、僕は思ってます。
とはいえ、ガチガチの学歴主義は嫌いです(笑)
自分の事であれば決断出来るのに、子供の事となると、なかなか決めるのが難しいものですね。

今回、この本を読んで「一流に見えても失敗はある。そして失敗するとダメージがでかい」という事も学びましたが、小学生の子供が努力して手に入れるモノも大きいと感じました。
結論は、出ません。家庭それぞれ事情も違うし、子供の性格にもよるだろうし。同じ子供でも、タイミングや環境の変化で色々変わる事もあるでしょうし。
ただ、親として、大人として、沢山の事例を知って、沢山の情報を持って、そこからなるべく最良の選択を見つけられるよう、準備しておきたいな、と思いました。(あとは、とにかく心のゆとり!これが1番大事かも!)

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