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発達障害の症状だけ知っても理解したことにはならない

今や多くのメディアで発信されるようになってきて、「発達障害」という名称は様々な場所で目にすることが増えてきました。

支援機関や診断を受けることの出来る病院が増え、その他法整備等が進み、前よりも発達障害の人が生きやすい環境が整えられてきている様に思います。

ですが私はそれと同時に、ある種の固定観念の様な考え方も出てきているのではと感じているのです。

今回は特に健常者や当事者のご家族、その他支援者の方。
興味を少し持って調べてみようと思った方に向けて書きますね。


「発達障害」の症状だけを見て理解したと思っていませんか?


まず発達障害そのものを知らない人は何を見聞きし調べるかというと、当てはまる症状を確かめます。
SNSやネット記事なんかで情報を見るわけですね。

自分はこれかも。職場のあの人はこれなんじゃないか。みたいに。


ASD(自閉症スペクトラム)、ADHD(注意欠陥多動性障害)、LD(学習障害)等色々検索すると、それぞれメインとなる症状が出てきます。

ASDなら、

空気が読めない、視線が合わない、表情が乏しい
こだわりが強い、予想してない事が起こるとパニックになる
手先が不器用、感覚過敏、など。

ADHDなら、

忘れ物が多い、物をすぐ無くす、片づけられない、約束・期日を守れない
順序立てて物事を進めるのが難しい、集中することが難しい
静かにすることが苦手、人の会話を遮って話す、など。

LDなら、

読み書き、計算、話す、推察する能力のいずれかが難しい


これを見て当事者なら、安心したり、不安になってもっと調べたり、病院に行ってみようかなと考えたり、日々苦しんでるからその先も知ろうとすると思うんです。

ですが、当事者以外はこの情報だけでも立派な判断材料になってしまって、それにより「ASDだからこの特性も持ってるだろうな」「これで理解したし対処できるだろう」など、当事者の求めていない形の支援をすることが出来てしまう環境になっている様に思います。

よく情報を見てみれば、特性も記事によって書かれていたり、いなかったり。
ASDとADHDの特性ごちゃ混ぜになってません?みたいな情報とか。(特にテレビに多い印象)

当事者から見たら疑問に思う点も、それ以外の人は疑問に思う必要が無いのです。


実は個人個人で特性の度合いは全く違うし、ある人ない人様々。
ASD・ADHD両方の特性を持ってる人もいるし、二次障害(うつ病、心身症、依存症、パーソナリティ障害など)を併発していたり。

このような多様な面を知って初めて発達障害は理解できる障害であると、私はそう捉えています。


それでも尚心優しく、前向きに、本気で助けたい、支援したいと思って下さる方がいらっしゃるなら、次の事を知って頂けたらと思います。


特性は個々人で出てくる経緯が全く違う


検索上位に出てくるような記事では「このような特徴が見受けられます」「このような傾向にあります」の様に、目に見える症状しか書かれていないので、発達障害者が何故どのような考えでその特性を出すに至ったかの経緯が書かれていない事が多いように見受けられます。

その為当事者からすると、分からない方がもしこの記事を見たら各特性が等しく全員にあると思われかねないと不安に感じてしまうのです。


例えば、私はASDなのですが「視線を合わせにくい」特徴がありまして。
何故そうなるかというと、心の中まで見透かされる感覚・恐怖を覚え、視線を合わせることによる予期しない苦手なコミュニケーションが発生することを予め避ける為なんですが。

小さい頃は普通に目を合わせることが出来ていたので、その後のトラウマによる、つまり後天的な自己防衛本能に近い理由であり、ASDの特性なのかどうかは定かではないという事になります。


他の事例を調べてみると、特性として幼少期から興味のない対象には目を合わせない人もいれば、私と同じで診断を受けていても合わせられる人もいたり。
人によってその根本的理由は様々です。

特性がどのような経緯で出ているのか。発達障害特性なのか二次障害からなのか。はたまたその他の原因があるのか。
しっかり確認していく必要があります。


発達障害の支援には「濃い対話」が必要不可欠


この特性が強いんだね、じゃあこうしてみたら?という一般化が出来ない障害であることはご理解頂けたかと思います。

発達障害者である前に「一個人」として知ろうとしなければ適切な支援は出来ません。

その人の一生、診断に至った背景、得意なこと、苦手なこと、好きなこと、嫌いなこと。特性はいつからなのか。それによって何回困ったのか。
どういう場面で出やすいのか。今現在はどうなのか。


実際私は支援機関の方と深く対話をすることが出来ず、助けを求める事を躊躇い、その結果仕事を退職した過去があります。
(勿論自分のコミュニケーションスキルが低いせいで色々伝わらなかったのが大半の原因だと思っています。)


もしも面倒と思わず、対話しようと考えて下さる方がいらっしゃるなら、時間を掛けて聞いてあげて下さい。
障害者側も頑張って伝えようとしますが、特性の部分で伝わりきらない箇所が出てくると思います。

伝えることの出来ない悔しさ・不甲斐なさから、周りに迷惑をかけまいと自分の内に押し込めよう、隠そうとするはずです。

言葉にならないサインが表れていたら、是非深くじっくり見てあげてください。
障害者にも心があることを、どうか理解していただけると有り難いです。

記事をご覧頂きありがとうございます!