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天気雨 〜つながっていく〜

介護学生の頃の話。

私はあまり傘が好きではない。
好きではないと言うより、差すのも持つのもめんどくさい。
だから土砂降りでもない限り、極力差さなくても割と気にならない。

その日は天気がよかった。

授業が終わり、エレベーターを降り、
出入口の自動ドアが開くと、
それはそれは見事な天気雨だった。

とっても晴れてるのにザーザー降り。
もちろん私は傘を持っていない。
でも私は平気なのだ。

「天気雨ね〜」

歩き出そうとした私に、背後から事務長が話しかけてきた。
そうですね、と足を止め相槌をうっていると、

「あなた傘ないの?
  じゃあ、駅まで入れてもらいなさい。
  H君いいわよね〜?」

と事務長は自分の傘に入れてくれるのではなく、あろう事か、たまたまその場に出くわしたH先輩に、私を頼んだのだった。

「いいです!いいです!
   大丈夫です!!!」

驚いた私は焦って答えるも、事務長のお節介は止まらなかった。
むしろその場を楽しんでいるようにさえ見えた。

先輩は傘に入れてくださった。

人見知りの私は、なにも話さなかった。
先輩も同様に、なにも話さなかった。

天気雨の中を歩くも、駅に着く頃にはほぼやんでいた。

「あ、ありがとうございました。」

たった一言、私が振り絞った言葉だった。


次の日学校で、東京という大都会で生活しているとはとても思えない超純情な同級生たちにそのことを話すと、
同級生はみんな前のめりに話を聞いて来た。

「誰?誰?誰?何先輩???」

えっとなんだったかなー。。。
1文字だったかなー。
2文字かなー。

「え?
  もしかしてH先輩?
  キャー!!!!!」

キャーというより、
ギャー!に近い声に、H先輩はカッコイイ人なのだと伝わってきた。

20年前の思い出。


正直1つ上の先輩方のことは、名前も顔も誰1人覚えていない。
唯一覚えていたH先輩。

なんと昨日、
そのH先輩とSNSで偶然つながることができた!
九州で介護や福祉の向上を目指している仲間の内に、先輩を発見した!

H先輩は今も介護を頑張っていた。
九州の福祉向上に貢献しているそうだ。
介護で再びつながることができて、大変嬉しく思う。

恐らく卒業した介護専門学校は、全国数ある介護福祉専門学校でも厳しい専門学校だと思われる。
しかし、あの2年間は私の人生の中で最高に楽しい時間であり、今でもあの楽しかった思い出が私を生かしてくれている。

だからこそ同じ専門学校を卒業した仲間が、第一線で活躍していることが嬉しかった。
同じように頑張っている私は間違ってなかったんだよな、と勇気をもらえた。

介護を頑張ってきてよかったな。
つながりや偶然は、巡り巡って戻ってくるんだな。

先輩、傘に入れてくれてありがとう。
ネットワークでご縁をつくってくださる皆さん、つなげてくれてありがとう。
人生って本当におもしろい!!!

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