マガジンのカバー画像

ビジネスエシックス

36
運営しているクリエイター

2019年4月の記事一覧

倫理的利己主義

倫理的利己主義

倫理的利己主義、あるいはエゴイズム (Egoism) は帰結主義の一つである。エゴイズムという言葉から、自分勝手な印象を受ける人もいるかもしれない。実際、倫理的利己主義は「帰結における自己の利益の最大化を図るように行為せよ」、という命題によって特徴づけることができる。つまり、倫理的利己主義の立場からは、自分の利益を最大化するような行動が是とされるのである。

このような考え方は、経済学で想定される

もっとみる
規範的理論と帰結主義・非帰結主義

規範的理論と帰結主義・非帰結主義

規範的理論規範的理論とは、「どうすべきか」という問いに対する回答をもたらす根拠を示してくれる理論である。簡単に言えば「べき論」が規範的理論ということができ、こうしたべき論に基づく命題を当為命題という。一方、当為命題とは異なり、現実を描写する命題を事実命題と呼ぶ。例えば、「日本人の平均寿命は83歳である」というのは事実命題である。

梅津 (2002) は、当為命題の特徴を事実命題との比較によって導

もっとみる

ステイクホルダーの顕著さ

企業はその企業のステイクホルダーを特定し、ステイクホルダーに対する価値創造を行うことが求められている。しかし、既存研究ではあらゆるものが企業にとってのステイクホルダーになりうることが指摘されている。最も一般的なステイクホルダーは、株主、顧客、サプライヤー、従業員、そして地域コミュニティである。しかし、ステイクホルダーの定義である、「組織の決定、政策、および運営に影響を及ぼし、あるいは、組織からの影

もっとみる

ステイクホルダー・アプローチ

ステイクホルダーとは、組織の決定、政策、および運営に影響を及ぼし、あるいは、組織からの影響を受けることになる人々や集団として定義されている (Freeman 1984)。例えば、従業員、サプライヤー、顧客、株主、コミュニティなどが代表的なステイクホルダーとしてあげられる。そして、企業はこうしたステイクホルダーとの関係を構築しながら事業を行っている。

ステイクホルダーの定義において注目すべきことは

もっとみる

企業とは何か

企業というものを厳密に定義することは非常に困難ではあるが、それでも人々あるいは研究者が「企業」という言葉を用いて議論を展開する場合、ある種の仮定を設けている場合が多い。そこで、ここでも一定の仮定を置くことで、企業がどのような存在で、どのような目的を持っており、どのような責任を負うべきなのかについて理解を深める。

まず、議論を単純化するために、ここでは企業を「営利企業」、とりわけ「株式会社」として

もっとみる

なぜビジネス・エシックスが求められるようになったのか

ビジネス・エシックスの重要性は以前から指摘されてきたが、近年その傾向はますます強まっている。ここではビジネス・エシックスに関する教育が求められている理由を三つに絞って言及する。

第一に、ビジネスの社会への影響力がますます大きくなってきていることがあげられる。

例えば、GAFA (Google, Apple, Facebook, and Amazon) の四つの企業が世界的にも大きな影響力を持っ

もっとみる

法律とエシックスの関係性

ビジネス・エシックスの定義として、正しいことと間違っていること判断する、という要素を考えたとき、問題となるのは法律とエシックスとの違いである。法律は社会における規範を作るものであり、どのようにすべきかの指針を与えてくれる規則でもある。例えば、日本の健全な金融・資本市場を守るものとして金融商品取引法が公布され、企業の運営に当たっては会社法が公布されている。こうした法律に反して行動することは違法行為と

もっとみる

ビジネス・エシックスにおける二つのアプローチ

ビジネス・エシックスは一つの学問領域としてとらえることができる。この学問領域は倫理という人文科学領域の研究者と経営学という社会科学領域の研究者が研究を進めている。この意味で、ビジネス・エシックスは学際的な側面を持ち、学習する上ではこの二つの科学的観点から物事を考えることが重要となる。人文科学領域としてのビジネス・エシックスは、哲学や倫理学といった学問的背景を持つ人々によって研究がなされている。こう

もっとみる

ビジネス・エシックスとはどのような学問か

ビジネス・エシックスとは、直訳すれば企業倫理となる。倫理と聞いて、あなたはどのような印象を受けるだろうか。ある人はアリストテレスやカントといった哲学者を思い浮かべるかもしれない。あるいは、道徳という言葉を思い浮かべる人もいるだろう。そこには少し堅苦しさを感じる人もいるかもしれない。あるいは、抽象的でわかりにくいという印象を抱くかもしれない。

では、あなたはビジネスという言葉あるいは企業という言葉

もっとみる