2019年4月の記事一覧
規範的理論と帰結主義・非帰結主義
規範的理論規範的理論とは、「どうすべきか」という問いに対する回答をもたらす根拠を示してくれる理論である。簡単に言えば「べき論」が規範的理論ということができ、こうしたべき論に基づく命題を当為命題という。一方、当為命題とは異なり、現実を描写する命題を事実命題と呼ぶ。例えば、「日本人の平均寿命は83歳である」というのは事実命題である。
梅津 (2002) は、当為命題の特徴を事実命題との比較によって導
ステイクホルダーの顕著さ
企業はその企業のステイクホルダーを特定し、ステイクホルダーに対する価値創造を行うことが求められている。しかし、既存研究ではあらゆるものが企業にとってのステイクホルダーになりうることが指摘されている。最も一般的なステイクホルダーは、株主、顧客、サプライヤー、従業員、そして地域コミュニティである。しかし、ステイクホルダーの定義である、「組織の決定、政策、および運営に影響を及ぼし、あるいは、組織からの影
もっとみるステイクホルダー・アプローチ
ステイクホルダーとは、組織の決定、政策、および運営に影響を及ぼし、あるいは、組織からの影響を受けることになる人々や集団として定義されている (Freeman 1984)。例えば、従業員、サプライヤー、顧客、株主、コミュニティなどが代表的なステイクホルダーとしてあげられる。そして、企業はこうしたステイクホルダーとの関係を構築しながら事業を行っている。
ステイクホルダーの定義において注目すべきことは
なぜビジネス・エシックスが求められるようになったのか
ビジネス・エシックスの重要性は以前から指摘されてきたが、近年その傾向はますます強まっている。ここではビジネス・エシックスに関する教育が求められている理由を三つに絞って言及する。
第一に、ビジネスの社会への影響力がますます大きくなってきていることがあげられる。
例えば、GAFA (Google, Apple, Facebook, and Amazon) の四つの企業が世界的にも大きな影響力を持っ
法律とエシックスの関係性
ビジネス・エシックスの定義として、正しいことと間違っていること判断する、という要素を考えたとき、問題となるのは法律とエシックスとの違いである。法律は社会における規範を作るものであり、どのようにすべきかの指針を与えてくれる規則でもある。例えば、日本の健全な金融・資本市場を守るものとして金融商品取引法が公布され、企業の運営に当たっては会社法が公布されている。こうした法律に反して行動することは違法行為と
もっとみるビジネス・エシックスにおける二つのアプローチ
ビジネス・エシックスは一つの学問領域としてとらえることができる。この学問領域は倫理という人文科学領域の研究者と経営学という社会科学領域の研究者が研究を進めている。この意味で、ビジネス・エシックスは学際的な側面を持ち、学習する上ではこの二つの科学的観点から物事を考えることが重要となる。人文科学領域としてのビジネス・エシックスは、哲学や倫理学といった学問的背景を持つ人々によって研究がなされている。こう
もっとみるビジネス・エシックスとはどのような学問か
ビジネス・エシックスとは、直訳すれば企業倫理となる。倫理と聞いて、あなたはどのような印象を受けるだろうか。ある人はアリストテレスやカントといった哲学者を思い浮かべるかもしれない。あるいは、道徳という言葉を思い浮かべる人もいるだろう。そこには少し堅苦しさを感じる人もいるかもしれない。あるいは、抽象的でわかりにくいという印象を抱くかもしれない。
では、あなたはビジネスという言葉あるいは企業という言葉