【おこるでしかしぃ#1】ブロードウエイの詐欺師

あれはな、わしがNYCのブロードウエイ沿いをぶらぶらしとったときのこっちゃ。

「なんぞ服でも買うたろかあ」思てな、いろんな服売っとるデッカい洋服屋さんに入ったんや。店んなかてきとうに見とったらな、カルバンクラインの真っ青なGジャンがハンガーに何枚かぶらさがっとってん。その頃はまだ日本でカルバンクラインなんか売っとらんかったからな、「おおっ、ええんちゃうのん、これ」思てじっくり見とってん。

でもな、Gジャンのタグよう見たらな、残念なことにぜーんぶLサイズやってん。Lサイズやとだぶだぶやからな、「しゃーないなあ、もうええわ」思てあきらめようとしとったんや。

そこにな、イタリア系のヒゲ生やした店員のおっさんが近寄ってきてん。

「まいどっ、いらっしゃい。どないかしはりました?」
「いや、ええGジャンやから欲しいねんけどな、Lサイズやとわしにはデカすぎんねん」
「あれ? Lサイズしかおまへんか?」
「見てみぃや。Lサイズしかないやん」
「あちゃあ、ほんまでんなあ。ちょっと待っておくんなはれ。倉庫の方も見てきますよってに」

そのおっさんそない言うてな、なんでかGジャン1枚持ったまま店の奥の方に行きよってん。そんで2分ほどしたらな、にっこにこしながら手にGジャン持って戻ってきよったんやわ。

「お客さん、倉庫にMサイズのがありましたわ!」
「あっ、ほんまに? ちょう見せてくれや」

Gジャンのタグんとこ見たらな、汚い字ぃでボールペンで「M」って書いてあんねん。

わけのわからん演技っ、すんなやああああああああああああああああああああ。
そないな見え透いた手口にひっかかるかいっ、ぼけええええええええええええ。
日本人や思てナメとったらあかんぞっ、こらあああああああああああああああ。