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【おこるでしかしぃ#12】大晦日の舞踏会(5)

そ・れ・で・や、なかなか帰れへんその女を連れたまんまな、朝方の渋谷の街をどうしようもなく歩いとってんな。もう、とにかく早いこと帰って欲しかったんやけどな、しゃあないから駅のほうに向かって歩いてったんや。

でな、そういう年齢の女独特のことかもしらんけどな、なんかしきりに顔の肌荒れのこと気にしとんねん。「う~ん、なんか肌がべたべたするぅ」とか言うてな。まあ、ありがちなこっちゃろ。

渋谷の駅に近づいてきたときな、公衆便所が見えてきたんや。

そんとき、わしはあるひとつの作戦を思いついてしもたんや。

「わし、ちょっとションベンしてくるわ」言うたったんや。ほんまにションベンしたかったわけとはちゃうで。

その女、顔のこと気にしとったわけやろ。せやから、便所入って鏡見たがるやろって思たんや。そしたら案の定、その女はな、「あっ、私もトイレ行くぅ♪」って言いよったんや。

「そしたら、終わったら便所の前で待っとくわ」
「うんっ♪」
そない言うて、2人同時にそれぞれ便所に入ったわけや。

で、便所に入った瞬間や。

わしはくるりと180°ターンしてな、改札まで全力疾走して電車に飛び乗ったったんや。

これがほんまの、「やり逃げ」っちゅうんじゃああああああああああああああ。
しつこくつきまといよるから、そういうことせなならんのじゃあああああああ。
名前も電話番号も、教えたらんかったわあああああああああああああああああ。


最低なやっちゃな、わし。

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