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筋肥大のために限界まで追い込む?そのセットの組み方、間違えてます。

「ドロップセット!レストポーズ!フォーストレップ!
よっしゃー、今日は追い込んだぞー!」

皆さんはこうやってYouTuberの真似ごとをして”追い込んだ気”になっていないだろうか?
実はこういうトレーニングテクニックを駆使しても筋肥大に効率的でないどころか、逆効果になっている場合が多い。

今日は「限界まで追い込むトレーニング法」のデメリットを解説していく。



■様々なトレーニングテクニック

世の中には「追い込む」ためのトレーニングテクニックで溢れている。

顔が歪むくらい、歩けなくなるくらい、翌日に強烈な筋肉痛が残るくらいトレーニングすることが筋肥大に最適だと思われており、そのためにあの手この手で追い込むためのテクニックが存在するのだ。

筆者は以前トレーニングテクニックの記事を書いたが、予想以上に伸びなかったので、もしかしたらトレーニーにとっては常識なのかもしれない。

念のため簡単におさらいしておこう。

・ドロップセット

ドロップセットとは、「もうこれ以上できない!」というところから、すぐに重量を下げて休憩なしで再び同じ種目を行うトレーニング方法のこと。
強烈なパンプ感と短時間でボリュームを稼ぐことができる。

例えば、サイドレイズ10kg10回で限界がきたとする。
10kgでは無理かもしれないが、8kgに重量を下げたらまだ何回かはできるだろう。
8kgで限界がきたらまた6kgに下げて…

と、重量を落とす(≒Drop)のがドロップセットだ。
このとき、インターバルは極力ゼロに近づけたい。

・レストポーズ

レストポーズ法とは、限界までレップを行った後、数秒休憩し、さらにレップを追加で行うトレーニング方法。
レップ数は稼げないが、そのぶん高重量を扱うことができる。

例えば、ベンチプレス100kg5回で限界がきたとする。
そのままでは無理かもしれないが、少し休んだらまだ何回かはできるだろう。
1-2回行って限界がきたらまた少し休んで…

と、休憩(≒Rest)を取りつつ行うのがレストポーズだ。

ドロップセットとの違いは、重量を下げないことと、インターバルを少し取ること。
インターバルは完全にゼロではなく、10-20秒程度取ることになる。
でないと1セット目と同じ重量を扱うことはできないだろう。

・フォーストレップ

フォーストレップとは、限界に達したときに補助者の力を借りてあと何回かレップを行う方法。

ベンチプレスで挙がらなくなったところで補助者が力を貸す(≒Forced)光景は、ジムにいる人なら誰でも見たことがあるだろう。
特に初心者は肉体的限界より精神的限界が低いため、半強制的にボリュームを稼ぐために行われる。

本来であればスティッキングポイント(重りが止まってしまう位置)を超えるためのみに補助者がヘルプし、他の局面では触らないことが重要だ。


■トレーニングテクニックの問題点

これらはいずれも「追い込む」ためのテクニックだが、筋トレは追い込むことが肝要のはずだ。
楽チンなトレーニングをしていても成長はできないはず。
一体何が問題なのだろうか?


1.筋力が伸びない

上記のトレーニングテクニックでは、筋力が伸びづらい。

筋トレの原則に、
筋断面積≒筋力
という概念がある。

筋断面積≒筋力
筋力≒最大挙上重量
∴筋断面積≒最大挙上重量

つまり、筋肥大をしたいなら高重量を目指すべき!

もちろん例外はあるが、基本的には筋力を伸ばしたければ筋肥大を目指すべきだし、筋肥大がしたければ筋力を伸ばすべきなのだ。

「追い込む」テクニックを使ったトレーニングでは筋力が伸びづらい。
ドロップセットもレストポーズもフォーストレップも、トレーニング後半にいくにつれて負荷をだんだん減らしていくトレーニング法だからだ。

筋トレには特異性の原則があり、高重量を挙げるためには高重量を扱う必要がある。

特異性の原則…トレーニング効果はトレーニングしたようにしか高まらない

筋トレしてもマラソンのタイムは縮まないし、ゴルフをしてもスクワットの重量は上がらない。

筋肥大をしたいのであれば筋力向上を目指すべきで、
筋力向上を目指すなら高重量を扱うべきで、
高重量を扱うのならトレーニングテクニックで追い込むのではなく高重量でトレーニングするべきなのだ。


2.回復に時間がかかる

上記のトレーニングテクニックでは、回復までに時間がかかってしまう。

そもそもドロップセットやレストポーズは「時短でトレーニングボリュームを稼ぐ」ためのテクニックだ。
そのトレーニングをいつもと同じ時間をかけて行うと、オーバートレーニングになってしまう。

特にフォーストレップは自分の限界を超えたトレーニングを行うことができるが、それは同時に「自分の回復力の限界も超えてしまう」ことを意味する。

皆さんは超回復理論を聞いたことがあるだろうか?
(実は超回復理論だけで説明できるほど人間の身体は単純ではないことが研究によってわかっているが、ここでは単純化のために割愛する。)

・筋力トレーニングをすると、筋線維が破壊され一時的に筋力が落ちる。
・トレーニング後48〜72時間ほどで筋肉は修復されていく。
・回復が終わると筋肉は以前より少し強くなり、この状態を「超回復」と呼ぶ。
・この段階でトレーニングをすると、次の超回復でさらに筋力は上がる。
・48時間〜72時間の間隔でこのサイクルを繰り返すと筋肉を効率的に鍛えられる。

https://athletebody.jp/fitness-fatigue-model/#:~:text=%E8%B6%85%E5%9B%9E%E5%BE%A9%E7%90%86%E8%AB%96%E3%81%AE%E3%81%8A%E3%81%95%E3%82%89%E3%81%84&text=%E3%83%88%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%8B%E3%83%B3%E3%82%B0%E5%BE%8C48%E3%80%9C72%E6%99%82%E9%96%93,%E5%8A%B9%E7%8E%87%E7%9A%84%E3%81%AB%E9%8D%9B%E3%81%88%E3%82%89%E3%82%8C%E3%82%8B%E3%80%82

筋トレのダメージは通常、2-3日で回復する。
しかしそれはあくまで「筋肉」のダメージの話。
筋肉を動かす「神経」や、化学的な「疲労物質」など、総合的なダメージの回復はそれぞれ異なる。

特にフォーストレップなどによって限界を超えたトレーニングは神経系を激しく疲労させる。
通常のトレーニングであれば神経系の回復には24-48時間程度だが、レップの途中で「潰れて」しまった場合、神経系の回復には最大で2-3週間かかるとした研究もある。

2-3週間、神経系の疲労によるデバフがかかったままトレーニングをするの、めちゃくちゃ不利じゃないだろうか?
補助をつけて追い込んだりギリギリのMAX挑戦をしたりすることは、そのデメリットを背負ってまでやるべきことなのだろうか?


3.トレーニングを管理しづらい

筆者のnoteでは何度も口を酸っぱくして言っていることだが、筋肥大は、トレーニングボリュームに比例する

トレーニングボリューム=重量×回数×セット数

前の週に比べて、前の月に比べて、トレーニングボリュームを漸進的に増やしていくことこそが筋肥大の鍵になる。

そのためにおすすめしていることが、自分のトレーニングを記録すること。
あるいは、トレーニングボリュームが増えていくように事前にトレーニングプログラムを組んで管理するのもいいだろう。

しかし計画されたレストポーズならともかく、ドロップセットは非常に管理しづらい。
「ええと…前回はサイドレイズ10kg10回、6kg8回、4kg6回、3kg7回だったから、今回はそれを超えるために…」
なんてやるのは記録するのも面倒だし、計画するのも面倒だ。

フォーストレップなんかは最悪だ。
「前回はベンチプレス80kg8回で潰れてから3回補助してもらった」
は何の参考にもならない。
補助は補助者の力の入れ具合にかかっているので、「80kg8回で潰れてから3回補助」と「80kg9回」ではどちらの負荷が高いのかわかるはずもない。

であれば、80kg8回を自分の限界としてきちんと一区切りとし、来週はそれを超えられるようにすればいいではないか。


■じゃあどうすればいいか?

そんなこと言われても、じゃあどうやって追い込んだらいいんだよ!
と思う人もいるかもしれない。

それに対する筆者の答えはこうだ。

・追い込まない

そもそも「追い込む」ことが間違いである。
追い込んで疲労を溜めるくらいなら、ナチュラルトレーニーはトレーニングの頻度を上げるべきだ。

・基本はストレートセット法

ストレートセット法、つまり同じ重量を複数セット扱うことを基本としよう。
あるいはアセンディングセット法(セットを重ねるにつれて重量を上げていくやり方)でもいいかもしれない。

記録しやすく、かつ無理な重量を扱ったり無理に追い込むのをやめることで、怪我をするリスクも少ない。

・プログラムを組もう

最もいいのは、上記の考え方を踏まえたトレーニングプログラムを組むことだ。
探せばインターネット上に転がっていることもあるだろうし、今後こちらのnoteでトレーニングプログラムの展開も予定しているので是非フォローして待っていてほしい。


■おわりに

このnoteは、筋トレを始めたばかりで、しっかり身体のことについて勉強したい人をターゲットに、健康的な生き方に関する情報を論理的に発信しています。

過去にもいろいろな記事を投稿しているので、もし気になったら読んでみてください。
また、記事にしてほしいトピックのリクエストもコメント欄から募集中です。

筋トレについてそこそこ詳しい方や、実際にトレーナーとして活動されている方にとっても、「こんな考え方、こんな表現があったんだ!」という発見になってくれれば幸いです。

また、当noteはAmazonアソシエイト、楽天アフィリエイトプログラム等に参加しています。



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