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妖怪てんこもりの旅@NIPPONIA播磨福崎 蔵書の館

はやり病が一旦落ち着いてきて、各地で「県民割」という制度が登場したころの去年のお話です。

せっかくお得に泊まれるチャンスなので、県内であんまり行ったことない場所へ行ってみたいな…と思って某宿泊予約サイトを見ていると、気になるお宿を発見しました。

「日本初・県指定重要有形文化財の宿泊施設」という、キャッチーで独特なコンセプトの宿でした。宿泊者のレビューを見たり、公式Webサイトで写真を見たりしているうちに、ここに泊まってみたいと思ったので行ってみることにしました。

福崎駅へ

宿のある兵庫県福崎町は、柳田國男の出身地として知られています。また近年では、やたらとリアルな河童をはじめとした妖怪の像が、町内の至る所に設置されていることでも話題になっています。

ということで、リアルな河童を見に福崎駅までやってきました。河童の名前は「ガジロウ」といい、決まった時刻になると「ガジロウチューブ」という名前の水槽から姿を現すそうです。

ガジロウチューブの前までやってきました。思ったより結構大きくて立派な水槽でした。

出現時刻になるまで、何が起きるのかなとドキドキしながら水槽の前まで待っていると、水槽の底からボコボコと泡が浮かんできました。いよいよガジロウの登場です。

地味に3か国語に対応している

泡と一緒に、水槽の底から現れたガジロウは、噂に聞いていた通りの姿をしていました。人間から尻子玉を抜く妖怪であることを隠しもしない不気味な姿で、カードを手に持って私たちを歓迎しているのがシュールです。

正面からだとこんな感じ

ガジロウの出現時間が近づくと、ガジロウチューブの周りに人がだいたい7人くらい集まってきていました。子どもから大人まで幅広い世代の人がガジロウを見ていて、普通に受け入れている様子で「えっ気持ち悪い」みたいなことを言っている人はいませんでした。なんか意外と人気者なんだなと思いました。

妖怪ベンチへ

福崎町には、河童だけではなく他の妖怪の像も設置されているとのことで、実際に行ってみました。

天狗の像

行ってみたのは「妖怪ベンチ」と呼ばれている、ベンチに座っている妖怪の像です。私が最初に行ったのは写真の天狗の像で、なぜかサラリーマン風の格好でノートパソコンを開いています。

Windows Vistaのノートパソコンで将棋局面をみる天狗

現代の人間と同じく、パソコンで何か仕事をしているのか…と思いきや、なぜか将棋の羽生善治竜王・名人 VS 谷川浩司九段の局面を見ています。

こんな感じで、リアルな造形だけどどこかユーモラスな妖怪のいるベンチが、福崎町には20件近くあります。妖怪の種類も全部違うので、妖怪マニアの方はレンタサイクルで駆け巡ってみると絶対楽しいと思います。

宿泊先へ

天狗以外の妖怪ベンチも2,3件ほど回ったところで、チェックインの時間が近づいてきたので宿へ向かいました。チェックインを済ませた後、そのままお部屋まで案内してもらいました。

お部屋はこんな感じ
このソファに座って読書を愉しみます

古民家ならではの雰囲気があってとてもいい感じ。オシャレにディスプレイされた本も、テーマに沿っていて楽しそうです。

お部屋で少し休憩した後、夕食まで時間があるので、宿の裏にある公園へ行ってみることにしました。

妖怪公園へ

宿の裏にある公園は、妖怪(の像)がたくさんいる公園でした。妖怪ベンチだけでなく、全国妖怪造形コンテストで最優秀作品に選ばれた大型像が5体ほど置いてありました。

招きぬえの像

特にぬえの像は、作者によって姿形がまったく異なるので、作者の創意工夫が伝わってきたのが良かったです。


また、公園の中には池があり、なんとこの池でも決まった時間になると水面にゴボゴボと泡が立って、ガジロウが登場します。

池から登場したガジロウ

公園内にあった説明書きによると、ガジロウはこの池と、福崎駅前のガジロウチューブを往復しているそうです。人間から尻子玉を抜く妖怪であることを隠しもしない不気味な姿ですが、いっしょに池を見ていた子どもたちは大はしゃぎだったので、やっぱり人気者だなと思いました。

写真は撮っていませんが、決まった時間になると公園内の小屋から逆さ天狗が高笑いしながら登場します。定期的に妖怪がアクションをしている賑やかな公園で、老若男女問わず楽しめるようになっていました。なお、ガジロウも逆さ天狗も、さすがに夜は休んでいるようでした。

公園を歩いていると、柳田國男の生家がありました。柳田國男本人が「私の家は日本一小さい家だ」と言っていた通りの日本民家でした。土間には入ることができたので、生家の中で彼の原点とも言える場所で思いを馳せることができました。

柳田國男「私の家は日本一小さい家だ。この家の小ささという運命から、私の民俗学への志を発したといってよい」

生家の近くには、柳田國男・松岡屋記念館もありましたが、あいにく閉館時刻になっていましたので宿泊先へと引き返しました。

ディナーへ

夕食の時間になったので、夕食会場へと向かいました。メニューは地元の素材を使った創作コース料理で、結論から言うと何食べてもめちゃくちゃ美味しかったです。とにかく美味しい以外の言葉がおもいつかないので写真だけ載せておきます。

ビールを注文して最初の1品
めっちゃおいしいパン+めっちゃおいしいバター
何食べてもおいしいプレート
白子が来たので日本酒を頼みました
お洒落お寿司です
コース料理の割に量多めなメインディッシュ(肉料理と天ぷら)
〆の鯛茶漬けと香の物
ジェラートの上にキャンディが載ったデザート
キャンディを割るとりんごが出てきます
食後のコーヒー(紅茶も選べます)

美味しくて見た目も華やかなお料理を、お腹いっぱい食べることができました。このディナーを食べられただけで、この宿に来て大正解だったと思いながらお部屋に戻りました。

部屋から食事会場までの通路がなかなかエモい

部屋に戻って、部屋にディスプレイされていた本を読みました。せっかく福崎の古民家まで来たからということで、普段読まないような民俗学の本とか、建築の本なんかを手に取って読んでみると、ほんのちょっとだけ自分の世界が広がったような気がしました。使ったことないけど、選書サービスを使ったらこんな感じになるのかなと思いました。

モーニングへ

翌朝、朝食会場に行くと、見るからに美味しそうな料理が出てきました。品数が多すぎてどれが何の料理か何回もわからなくなりましたが、ほんとうに何を食べてもおいしかったです。こんなにヘルシーで健康的で、しかもおいしい朝食を頂いたのは初めてでした。

品数豊富な朝ごはん
せいろの蒸し野菜もついてました
ご飯は土鍋で提供される贅沢スタイル
朝の食後のコーヒー(紅茶も選べます)

おいしい朝食を食べた後、「おいしかった~」と振り返りながら、宿を出た後の予定を確認しながらお部屋でちょっとゆっくりする時間が私はとても好きです。ゆっくりしている間にチェックアウトの時間が迫ってきたので、名残惜しいですがお部屋を後にしました。

三木家住宅へ

チェックアウト後、宿のほんとうにすぐ近くに「大庄屋三木家住宅」という古いお屋敷があったので行ってみました。

三木家住宅

写真では伝わらないくらい広いです。「お屋敷」という言葉が相応しい感じで、一揆のときの刀傷がそのまま残っていたりする貴重な建物でした。入館無料なので、気軽に立ち寄ることができます。ジャパニーズお屋敷が好きな方は立ち寄ってみると深い感動が得られるかも知れません。

総括

お部屋は古民家ならではのいい雰囲気で、たくさん本が読めて、食事は何食べてもおいしくて、宿から出れば近くの公園でガジロウや逆さ天狗が元気にアクションをしている、そんな素敵な宿でした。普通のホテルでもなく、旅館ともまた違った感じで、楽しく過ごすことができました。

ただ、部屋の中には殺虫剤とか網が置いてありました。私が行った時は冬だったので何も問題はありませんでしたが、暖かい時期だと虫が入ってくることもあるかも知れません…

アメニティ何置いてあったか完全に忘れてしまいました。雪肌精が置いてあったことだけ覚えています。