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食費を浮かすための狩猟①

こんにちは。ライター/わな猟師のふじわらゆうきです。田舎でライターをしながら、冬は山に入り狩猟をしています。今日は何について書きたいかなと考えたところ、狩猟をはじめるまでと初めて鹿を捕獲したところまでを書きたいと思いました。

ぼくの狩猟経歴は、この3月で2年目を終えたところです。ちなみにぼくの住む兵庫県多可郡多可町の猟期は、毎年11月15日〜3月15日。次の猟期で狩猟3年目になります。

狩猟をしていてよく聞かれるのが「そもそもなんで狩猟をはじめたん?」という質問です。これを聞かれたら、なんかいい感じのことを言いたいな、と思ってしまい、実際にいろいろ言ってしまってきましたが、なんかぜんぶ白々しくて自分で自分にしっくりきたことが一度もありませんでした。そこで、本当に本当な本当のところはなんでしょうかと自分自身に問うてやっと、だんだんわかってきました。いちばん正直に率直な言葉で表現すると、ぼくの場合の狩猟をはじめた理由は、食費を浮かしたいから、だと思うのです。これをいい感じに言い換えると、肉の自給、と言えるかもしれません。でもぼくは、自給したいから自給するのではなく、食費を浮かしたいから肉の自給をめざしているんじゃないかと、そんな気がしています。そんな気がするって、ってそんな曖昧な感じになるってことは、結局のところ、なんで狩猟をはじめたかなんて、あまり考えたことないのです。地元の多可町は山が近いんだし、鹿や猪もいるんだから、狩猟して肉を確保して、スーパーで肉買わんでええようにしよう、ってことです。あ、いい感じに言えました。

ただ、狩猟をはじめようと思い出した頃は大阪市内に住んでいて、家賃10万6千円の自宅兼仕事室の賃貸マンションとコンビニ、スーパー、TSUTAYA、居酒屋なんかを来る日も来る日も行ったり来たりしていました。大阪に20年近く住んでいて、うすうす「なんでこんなに銭ばっかりいるんじゃろ?」と思い始めてはいました。銭稼ぎをやめてしまえば、死ぬ。だから、働く。「DEAD or WRITE〜死ぬか書くか〜」です。なんで「書くか」かというと、ライターの仕事をしているからです。銭に目がくらんでいるので肌がすごくカッサカサで、粉瘤ができ、右目と左目が上下にちょっとだけずれて、顔面が黄土色の混じった深い緑色になり、簡単に言うとひどいことになっていました。何をしても銭がいります。家から一歩出たら銭がかかります。じっとしてても国民年金、住民税、保険料なんかの請求書が飛んできてポストに突き刺さってます。銭を請求されるのがこわい。こわいとどうなるかというと、コンビニへ逃げます。コンビニへ行こうと外へ出ると、なが〜い赤信号につかまります。電車に乗るにも、飲食店に入るにも、まずは人の列に並びます。電車に乗れば、目的地に着くまでじっと待ちます。もはや僕には、都会は「待つか、払うか」の世界になっていました。待つか払うかを繰り返しているうちにコロナウイルスも近所までやってきました。いちばん躍動的に前のほうで動いていると思っていた都市というものが、いとも簡単にスンと停止しました。都市生活のメインイベントである銭稼ぎも、急に他人のフリをしだしました。やることがなくなりました。ちょっと話がずれてきましたが、とにかく、必要以上に銭を使うから、必要以上に働くことが必要になる。必要以上の銭稼ぎはしんどいし、コロナとかで急に停止する。支払いものに追いついていくような銭の稼ぎ方はもうよそう。できる範囲でいいから、自分で食べるものは自分でつくり、本当に必要なぶんだけの銭を稼ごう。そう思い、Uターンすればまずは家賃を払わずに済むと気付いて、いいよ、それ、すごくいいよっつってUターンしました。で!地元の多可町は山が近いんだし、鹿や猪もいるんだから、狩猟して肉を確保して、スーパーで肉買わんでええようにしよう、ってなったというわけです。すみません長々と。

狩猟をするには狩猟免許がいります。試験の何ヶ月か前に猟友会による講習会が開催され、これに参加すれば、もともと高いであろう合格率がさらに上がります。ぼくは「わな猟」の狩猟免許をとりました。狩猟免許は簡単にとれますが、実際に山に罠を仕掛けて狩猟をするための準備がいろいろとあります。でも、ここは多可町、心配いりません。なぜなら、わな猟をしている大先輩がたくさんいるからです。ぼくも近くの師匠に手厚く教えていただきました。罠を自作し、罠をかけてもOKな山を村の方に案内してもらい、猟友会に入会し、狩猟者登録をし、止め刺しや解体の仕方をyoutubeなどを観ながらシミュレーションし、獲れたお肉でどんな料理をしようかなと妄想し、なんぼくらい食費浮くんやろかと計算し、なんかここってけっこう大事なところですが、とりあえず今は端折りながら書いていますが、とにかくようさん準備して、2021年11月15日に、ぼくの狩猟人生の初日を迎えました。

そして2021年11月17日、朝。
初の獲物がかかりました。

目の前に鹿がいる。山の朝が一気に非日常に豹変しました。
緊張が身体を拘束し、吐きそうになりました。
自分で罠をかけといて「どうしよう」って思いました。
このあとのことは【後編】で書きます。読んでもらえたら嬉しいです。

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